【弁護士法の『法律事務所』の意味と判断基準】
1 法律事務所の意味と設置に関するルール
弁護士が設置する事務所のことを法律事務所と呼びます。
法律事務所の設置については、弁護士法にいくつかのルールがあります。
資格や許認可で規制されている業種については同様のルールがあります。
しかし、業種(業法)によって規定や解釈に違いがあります。
逆に、共通する部分もあるので、相互に解釈の参考として役立ちます。
複数事務所の禁止(弁護士法20条3項)の規定と趣旨、
1グループの施設が全体として1個の法律事務所といえるかどうかの判断基準は、別の記事で説明しています。
弁護士法20条3項|複数事務所の禁止と法律事務所の単一性の判断基準
税理士にも同じ事務所の解釈の問題があります。
こちらは条文を変えずに、国税庁の基本通達で判定の基準が示されています。別の記事で説明しています。
2 『法律事務所』の意味
『法律事務所』の意味は、法律事務所設置に関するルールの解釈や適用の全体に関わります。
法律事務所とは、弁護士の活動の本拠という実質的な意味です。
『法律事務所』の意味と設置義務
あ 法律事務所の形式的な意味
『法律事務所』とは『弁護士の事務所』のことである
い 法律事務所の実質的な意味
弁護士がその業務を反復・継続して行う場所として設定した活動の本拠である
弁護士の職務上の住所というべき意味も有している
弁護士法20条1項=弁護士の事務所は法律事務所と称する
弁護士の事務所は、法律事務所と称する。
※弁護士法20条1項
法律事務所=業務を反復・継続して行う活動の本拠であり職務上の住所
あ 活動の本拠(p144)
法律事務所は、弁護士がその業務を反復・継続して行う場所として設定した活動の本拠である。
※日本弁護士連合会調査室編著『条解弁護士法 第4版』弘文堂2007年p144
い 弁護士の事務所=職務上の住所(p147)
しかし、法律事務所とは「弁護士の事務所」のことであり(本条1項)、そこにおいて弁護士が法律事務を取り扱う施設である。
また、法律事務所は弁護士の所属弁護士会の地域内に設置されなければならず(本条2項)、日弁連及び所属弁護士会に届け出なければならない(法21条)とされているように、法律事務所は、弁護士の職務関係における活動の本拠であり、弁護士の職務上の住所ともいうべき意味も有している。
※日本弁護士連合会調査室編著『条解弁護士法 第4版』弘文堂2007年p147
3 設置場所は所属弁護士会の地域内に限られる(参考)
法律事務所に関するもう一つのルールは、所属弁護士会の地域内に設置するというものです。地域外に法律事務所を設置したといえるかどうかの判断は、ここまで見てきた実質的な意味を前提にします。条文と趣旨、職務上の本拠という判断の軸、そして裁判例は、別の記事で説明しています。
弁護士法20条2項|法律事務所は所属弁護士会の地域内——自宅執務が主でも違反
4 『法律事務所』の該当性の判断の枠組み(実質・形式のいずれかで該当)
法律事務所が複数といえるかどうかが問題となるケースもあります。
この判断の根本的な枠組みは、実質と形式の両方で判断するということです。
一方でも該当すると法律事務所と判断されます。
5 法律事務所の判断の実質的側面
法律事務所といえるかどうかの判断基準の1つは実質によって判断するものです。
対象となる施設の機能や実態で判断します。
法律事務所の判断の実質的側面(※1)
あ 実質的側面の基本
法律事務を行うべき場所としての実体を有する場合
→法律事務所(複数事務所)に該当する
い 機能による判断
弁護士の職務活動の本拠とはいえなくても
依頼者が出入りし、その場所のみで法律事務処理を行う機能を有している施設
→複数事務所(の設置)に該当する
う 実態による判断
弁護士の職務活動が主として行われている場合
→法律事務所たり得る
施設自体の本来の用途や外観からは法律事務所とは判断できない場所でも同様である
例=弁護士の自宅
実質的側面=法律事務を行うべき場所の実体があれば表示を問わず違反
(イ) まず、実質的側面から検討すると、届出事務所と別個に、法律事務を行うべき場所としての実体を有する場合は、法律事務所という表示がなされていると否とにかかわらず、複数事務所の禁止に違反する。
弁護士の職務活動の本拠と認められる事務所を複数設置することはもちろん、必ずしも弁護士の職務活動の本拠とはいえなくても、依頼者が出入りし、その場所のみで法律事務処理を行う機能を有している施設を届出事務所とは別個に設置すれば、複数事務所の設置になると考えられる。
※日本弁護士連合会調査室編著『条解弁護士法 第4版』弘文堂2007年p147
自宅のような場所でも、職務活動が主として行われていれば法律事務所たり得る
問題となるのは、例えば、弁護士の自宅のように、その施設自体の本来の用途に照らしても、また、その外観からしても、法律事務所とは判断できないような場所でも、本条3項で禁止される法律事務所たり得るかということであるが、このような場所であっても、弁護士の職務活動が主として行われているというのであれば、本条3項で禁止される法律事務所たり得ると解される。
けだし、弁護士が本来の法律事務所とは別の場所で主として執務している状態は、本来の法律事務所に弁護士が不在がちとなることを意味しており、このことこそが複数事務所を禁止した理由だからである。
※日本弁護士連合会調査室編著『条解弁護士法 第4版』弘文堂2007年p147〜148
6 法律事務所の判断の形式的側面
実質面からは法律事務所とはいえない場合でも、形式面で法律事務所といえる場合は、結論として法律事務所に該当します。
形式とは外部への表示です。
法律事務所の判断の形式的側面(※2)
あ 外観の単一性の要請(前提)
法律事務所は職務関係の連絡先に特定されている
→外観からも単一でなければならない
い 外観・形式による判断
外観から判断して法律事務所とみられる場合
外観の例=看板、名刺、封筒などの表示
非弁護士活動の拠点として利用されるおそれがある
→複数事務所の禁止の趣旨が妥当する
→法律事務所に該当する
法律事務を行うべき場所としての実体が存しなくても同様である
※高中正彦著『弁護士法概説 第4版』三省堂2012年p105
う 懲戒事例
一般人の目に、弁護士が法律事務を取り扱うものと思料されるような表札を一定の場所にかかげておくような行為は
それ自体において弁護士法にいう『法律事務所を設ける』行為に該当する
形式的側面=外観から別個の事務所とみられれば実体を問わず抵触
(ロ) 次に、形式的側面について検討すると、その表示方法等の外観から判断して届出事務所とは別個に法律事務所が設置されたとみられる場合も、それが法律事務を行うべき場所としての実体が存すると否とにかかわらず、複数事務所の禁止に抵触する。
法律事務所は、弁護士の職務上の住所として職務関係の連絡先に特定されていることから、それが外観からも単一でなければならないとするのが本条2項、3項の趣旨と解されるからである。
※日本弁護士連合会調査室編著『条解弁護士法 第4版』弘文堂2007年p148
条解が引く日弁連懲戒委員会昭38・10・26議決=表札を掲げる行為自体が『法律事務所を設ける』
また、日弁連懲戒委員会昭和38年10月26日議決(議決例集122頁)は、「いやしくも、一般人の目に、弁護士が法律事務を取り扱うものと思料されるような表札を一定の場所にかかげておくような行為は、それ自体において弁護士法にいう『法律事務所を設ける」行為に該当するものと解するのが相当である。
何となれば、かような行為は、おのずからこの場所に法律上の依頼事件を誘致する結果を生じ、その弁護士は、この場所において法律事務を取り扱うに至ることが自然の帰結だからである」としている。
※日本弁護士連合会調査室編著『条解弁護士法 第4版』弘文堂2007年p148〜149
本記事は一般的な説明です。個別の事案にそのまま当てはまるとは限らず、一見似ている事案でも、事情が異なれば結論は異なります。個別的事情により、法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。本記事でご説明したものと同様の問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。
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