【「分割」という用語の本来の意味と現在の意味(共有物分割の分割類型のネーミング)】
1 「分割」という用語の本来の意味と現在の意味(共有物分割の分割類型のネーミング)
民法上、共有を解消する手続のことを「共有物分割」と呼んでいます。解消する共有が遺産共有である場合には「遺産分割」と呼びますが、「分割」というネーミングは共通しています。
ここで、民法の議論の中で出てくる「分割」という用語の意味は、昔は日本語としての「分割」という言葉の意味とほぼ一致していたのですが、現在では外れてきています。
本記事では、これらの「分割」というネーミングについての議論を紹介します。
2 令和3年の民法改正の議論→「賠償分割」(概要)
平成8年最判が全面的価格賠償を認め、その後の実務では定着しています。そして、令和3年の民法改正で、ついに全面的価格賠償が条文化されるに至りました。
詳しくはこちら|全面的価格賠償の基本(平成8年判例で創設・令和3年改正で条文化)
令和3年の民法改正の議論の中では、全面的価格賠償のことが、賠償分割と呼ばれています。
詳しくはこちら|共有物分割の分割類型の明確化・全面的価格賠償の条文化(令和3年改正民法258条2・3項)
日本語としての「分割」とはいえないので、(全面的)価格賠償と呼んでいたところ、共有物分割の1類型なので、むりやり「分割」の用語をあてがった印象があります。
3 新田敏氏見解→全面的・部分的価格賠償は「分割」以外
新田氏も、全面的価格賠償や部分的価格賠償(債務負担を形成する方式)について、「分割」以外の法律関係を形成するものである、と指摘しています。
新田敏氏見解→全面的・部分的価格賠償は「分割」以外
※新田敏稿『共有物の裁判上の分割の機能と効果』/『法学研究70巻12号』慶應義塾大学法学研究会1997年12月p41
4 平野裕之氏指摘→換価分割・全面的価格賠償は「分割」に違和感
平野氏は、全面的価格賠償だけでなく、換価分割も含めて、「分割」という用語がしっくりこない、と指摘しています。
平野裕之氏指摘→換価分割・全面的価格賠償は「分割」に違和感
※平野裕之著『物権法 第2版』日本評論社2022年p379
5 「分割」のネーミングと全面的価格賠償の法的位置づけとの関係(参考)
「分割」のネーミングの議論から、分割方法の多様化、柔軟化の歴史がみえてきます。つまり、当初は日本語の「分割」の意味を持つ「現物分割」が主に想定されていたところ、その後、時代の流れを経て当初は想定していなかった分割方法が作られてきた、ということを、ネーミングのおかしみが物語っているのです。
詳しくはこちら|全面的価格賠償の法的性質(現物分割・部分的価格賠償との比較・創設なのか)
実務の中では、全面的価格賠償の要件の解釈(訴訟の中で全面的価格賠償を採用してよいかどうか)の一環としてこのような知識を活用することもあります。
本記事では、「分割」という用語の意味に関する議論について説明しました。
実際には、個別的事情により法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。
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