【金銭債権の譲渡の税法上の所得分類(雑所得とする通達とその批判)】
1 金銭債権の譲渡の税法上の所得分類
金銭債権の譲渡により所得(利益)が生じることがあります。
この所得については、所得税法上、雑所得として分類するという通達があります。
これについては法令上の根拠に欠けるという批判もあります。
本記事では、金銭債権の譲渡の利益の課税上の扱いについて説明します。
2 金銭債権の譲渡による所得の分類
まず、素直に所得税法の規定を読めば、金銭債権も『資産』の1つとして譲渡所得として分類されるように思えます。
しかし、このようにした場合に貸倒損失が他の所得と通算できてしまう結果となります。
このような現実的な理由から、基本通達では雑所得として分類する解釈が示されています。
金銭債権の譲渡による所得の分類
あ 条文の文言への当てはめ
所得税法33条の文言では金銭債権も『資産』に含まれる
詳しくはこちら|譲渡所得の基本(対象となる『資産』の解釈・課税方式)
い 不合理性
債権の譲渡により譲渡所得(損失)が生じると仮定した場合
→貸倒れ状態に近い貸金を安く譲渡することによって
本来、貸倒損失として事業損益や雑所得の損益や家計上の損益とされるべきものが
譲渡所得の損失として他の所得から控除される結果となる
このような結果は法の趣旨にそぐわない
う 通達の示す解釈
ア 所得税法基本通達33−1金銭債権は譲渡所得の『資産』には含まれないという解釈を示している
イ 所得税法基本通達51−17債権の譲渡による損失については、貸倒損失として所得税法51条2項or4項の資産損失の規定が適用される
という内容を示している
3 金銭債権の譲渡を雑所得とする通達を批判する学説
通達では、金銭債権の譲渡による所得を雑所得としています(前記)。
しかし、税法の明文に反する解釈として批判する主張があります。
金銭債権の譲渡を雑所得とする通達を批判する学説
所得税法基本通達33−1の示す解釈について
実質論としては妥当である
しかし、税法の明文の規定なしで所得税法33条の趣旨解釈としては疑問が指摘されている
※植松守雄編著『注解 所得税法 5訂版』大蔵財務協会2011年p672
4 金銭債権の譲渡を雑所得とする通達を批判する裁判例
裁判例にも、金銭債権の譲渡益を雑所得とすることについて明確に批判するものがあります。
しかし、最高裁判例として、通達の解釈を否定しているというわけではありません。
金銭債権の譲渡を雑所得とする通達を批判する裁判例
あ 批判する裁判例
(ゴルフクラブからの退会に際して返還された預託金について)
所得税法基本通達33−1について
明文の規定がないにもかかわらず、およそ金銭債権のすべてを譲渡所得の基因となる資産から除外する見解は、一面的に過ぎるとの批判を逃れ難く、上記通達の合理性には疑問を払拭できない
※名古屋地裁平成17年7月27日
い 批判を撤回する裁判例
『ア』の控訴審では『ア』の記載部分が撤回された
※名古屋高裁平成17年12月21日
なお、上告審では『ア』の部分の判断をしていない
※最高裁平成18年6月30日
本記事は一般的な説明です。個別の事案にそのまま当てはまるとは限らず、一見似ている事案でも、事情が異なれば結論は異なります。個別的事情により、法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。本記事でご説明したものと同様の問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。


