1 譲渡所得の基本
2 『譲渡所得』の対象
3 譲渡所得の対象となる『資産』の意味
4 『資産』に該当する財産の具体例
5 所得税法上の『譲渡所得』からの除外(参考)
6 金銭債権の譲渡の分類(概要)
7 譲渡所得の課税方式

1 譲渡所得の基本

所得税の中の分類の1つに譲渡所得があります。いわゆるキャピタルゲイン課税です。
仮想通貨など,多くの場面で譲渡所得に該当するかどうかという問題が生じます。このような問題を考える時には,譲渡所得の基本的な規定や解釈の理解が必要です。
本記事では,譲渡所得の条文の規定(定義)や,対象となる資産(の譲渡)の意味について説明します。

2 『譲渡所得』の対象

『譲渡所得』の対象は,資産の譲渡による所得と規定されています。
ただし,これに該当しても規定上,除外されるものもあります。

<『譲渡所得』の対象>

あ 譲渡所得を定義する規定

譲渡所得とは
資産譲渡による所得をいう
※所得税法33条1項

い 譲渡所得からの除外

『譲渡所得』から除外されるものがある(後記※1)
※所得税法33条2項

3 譲渡所得の対象となる『資産』の意味

譲渡所得(課税)の対象となる『資産』という言葉について,法令上の定義はありません。
そこで財産的(経済的)価値のあるものすべてがこれに該当すると解釈されています。

<譲渡所得の対象となる『資産』の意味>

あ 『資産』の基本的解釈

譲渡所得の基因となる『資産』とは
税法に特段の定義が置かれていない
→あらゆる資産を含む広い概念である
※植松守雄編著『注解 所得税法 5訂版』大蔵財務協会2011年p663

い 『資産』の判定の必要性(否定)

およそ経済的価値をもつものが他に移転し,その対価の取得がある限りにおいて
それは『資産』と考えられる
いちいちその中身についてそれが『資産』であるかどうかを吟味する必要はない
※植松守雄編著『注解 所得税法 5訂版』大蔵財務協会2011年p663

う 譲渡に着目した『資産』の解釈

資産とは譲渡可能な有価物である
※清永敬次『税法 第7版』ミネルヴァ書房2007年p95

4 『資産』に該当する財産の具体例

実際に譲渡所得の対象となる『資産』として扱われる財産にはいろいろなものがあります。代表的な例を挙げます。

<『資産』に該当する財産の具体例>

あ 有体物

動産・不動産
借家権も含む

い 無体財産権

特許権・著作権など

う 営業権

行政官庁の許可・認可により発生した事実上の権利も含む

え その他(事実上の権利)

配当により発生した事実上の権利
※所得税法基本通達33−1参照
※植松守雄編著『注解 所得税法 5訂版』大蔵財務協会2011年p663

『資産』には,経済的価値のあるモノが広く含まれるということが分かります。

5 所得税法上の『譲渡所得』からの除外(参考)

あらゆる財産(『資産』)の譲渡による所得(利益)は原則的に譲渡所得に該当します。
ただし,所得税法上,政策的・積極的に除外されるものもあります。
棚卸資産と山林に関する利益(所得)だけが,譲渡所得に該当しないものとして規定されています。

<所得税法上の『譲渡所得』からの除外(参考・※1)>

あ 『譲渡所得』からの除外

(『資産』に該当することを前提として)
所得税法33条2項に該当するものは『譲渡所得』から除外される

い 『譲渡所得』から除外される所得の内容

ア 棚卸資産
営利を目的として継続的に行なわれる資産の譲渡による所得
例=たな卸資産の譲渡
イ 山林
山林の伐採or譲渡による所得
※所得税法33条2項

6 金銭債権の譲渡の分類(概要)

金銭債権を譲渡(売買)するということはとても多く行われています。
金銭債権は明らかに,経済的価値を持つ財産です。
そうすると資産の譲渡として譲渡所得の対象となるはずです。
しかし,一般的に譲渡所得にはあたらず,雑所得であるとして扱われています。
これについては別の記事で説明します。
詳しくはこちら|金銭債権の譲渡の税法上の所得分類(雑所得とする通達とその批判)

7 譲渡所得の課税方式

譲渡所得に該当する場合,その所得の課税方式はさらに(大きく)3種類に分かれます。
この分類によって,税率や繰越控除の適用の有無が違っています。

<譲渡所得の課税方式>

分類 対象資産 課税方式 税率(※2,※3) 繰越控除
不動産譲渡所得 土地・建物など 申告分離課税 長期39%・短期20% なし
株式等譲渡所得 株式など 申告分離課税 20% あり
総合譲渡所得 その他 総合課税 (総所得金額に集約する・※4) なし

※2 住民税を含む
※3 所得税の2.1%の復興特別所得税が加算される
※4 長期は所得のうち2分の1をカウントする