【弁護士の依頼者本人確認が必要かどうかのまとめ(日弁連資料)】

1 本人確認が必要な場合
2 追加的な本人確認(厳格な本人確認)が必要な場合
3 依頼者と依頼行為を行っている自然人が異なる場合
4 本人確認方法の内容

一定の状況では,弁護士が依頼者の本人確認をすることが義務づけられています。
詳しくはこちら|弁護士が依頼者の本人確認が必要となる受任業務の内容
規定の内容は少し複雑でスピーディーに把握しにくいです。
そこで,日弁連が分かりやすくまとめた資料を作成しています。
外部サイト|日本弁護士連合会|依頼者の本人確認規定の概要(会員弁護士専用)
本記事では,この資料のうち『本人確認が必要な状況かそうでない状況か』をチェックする部分を元にして,テキストの体裁で紹介します。

1 本人確認が必要な場合

(1)法律事務に関連して200万円以上の資産を預かる場合

<資産管理行為に該当する具体例>

次の内容で200万円以上の資産を預かる場合,本人確認が必要となる
・裁判外での交渉により依頼者が負担する弁済金の預託を受ける
・裁判外で過払金の支払いを請求し,金融業者から預り金口座へ支払いを受ける
・裁判外で交通事故による損害賠償請求をし,保険会社などから預り金口座へ支払いを受ける
・裁判外で遺産分割協議を行い,依頼者or相手方の支払う代償金を預かる

<例外(本人確認は必要ではない)>

・供託金,保釈保証金など裁判所,法務局等へ金銭を納付する場合
・判決による弁済金,和解金など裁判所等紛争解決機関が関与した手続に関連して金銭の預託を受けor受領する場合
・刑事事件の被害弁償金,示談金など
・報酬or費用の前受け
・任意後見契約に基づく事務
・私人や別の弁護士が,裁判所から成年後見人や破産管財人などに選任され,その者が依頼者となって,当該依頼者の職務について依頼を受ける場合
・遺言執行者など

(2)次の取引などの準備or実行をする場合

<指定取引に該当する具体例>

次の取引などの準備or実行をする場合に本人確認が必要となる
・不動産の売買
・会社の設立,組織変更,合併,会社分割,株式交換など
・法人(会社を除く),組合などの団体の設立, 合併に関する行為or手続
・会社,団体などの業務を執行しorこれらを代表する者の選任
・会社の買収,売却
・信託契約の締結,信託の併合,分割,受益者の変更など
・資産が犯罪収益の疑いがある場合,犯罪収益の隠匿の疑いがある場合
・同種の取引,行為の態様と著しく異なる態様である場合

<例外(本人確認は必要ではない)>

・任意後見契約に基づく事務
・私人や別の弁護士が,裁判所から成年後見人や破産管財人などに選任され,その者が依頼者となって,当該依頼者の職務について依頼を受ける場合
・遺言執行者など

(3)『(1)(2)』に共通する例外

<(1)(2)に共通する例外(本人確認は必要ではない)>

・5年以内に本人確認をしていた場合
・官公署などの委嘱による場合(破産管財人,成年後見人など)

(4)法律事務に関連することなく資産の預託を受ける場合

その目的が犯罪収益の移転に関わるものであるか慎重な検討を要する

2 追加的な本人確認(厳格な本人確認)が必要な場合

<厳格な本人確認が必要な具体例>

資産管理行為or指定取引の準備or実行(前記)であり
かつ依頼者が『ア〜エ』のいずれかに該当する場合には
追加的な本人確認(厳格な本人確認)が必要になる
ア なりすましの疑いがある場合イ 取引時確認に係る事項を偽っていた疑いがある場合ウ 外国PEPs等との間で行うもの (外国PEPsとは,外国の元首or外国の政府などの機関において重要な地位を占める者やその親族などをいう)
エ イラン,北朝鮮に居住しor所在する者が関与する場合

3 依頼者と依頼行為を行っている自然人が異なる場合

<依頼者と依頼行為者が異なるケースの本人確認>

あ ルール

資産管理行為or指定取引の準備or実行(前記)の依頼の依頼者と依頼行為を行っている自然人が異なる場合は
次の表に従って,依頼権限や当該自然人の本人確認が必要になる

い 本人確認の要否・対象
依頼者 依頼者の本人特定事項の確認 自然人の依頼権限の確認 自然人の本人特定事項の確認
国・地方公共団体 不要 必要 不要
人格なき社団・財団 不要 不要 必要
上場企業など実在することが確実なもの 不要 必要 不要
実体のない法人その他の団体 必要 必要 必要
上記以外の法人・団体 必要 必要 不要
う 例外

弁護士において当該自然人が依頼者のために資産管理行為or取引の任に当たっていることが明らかであるときは依頼権限の確認は不要である

4 本人確認方法の内容

本人確認方法には,通常の本人確認と厳格な本人確認の方法があります。
この2種類の確認方法の内容は,別の記事で説明しています。
なお,別の記事では『ノーマル確認方法』『イレギュラー確認方法』と呼んでいます。
 詳しくはこちら|弁護士|依頼者本人確認義務|確認方法|ノーマル/イレギュラー
 

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