【特別受益に関する裁判手続(遺産分割手続と確認訴訟)と法的性質論】

1 特別受益の紛争解決手続

実務において特別受益に関する見解の対立はよくあります。典型例は生前贈与が特別受益に該当するかどうかなどです。
本記事では、特別受益についての紛争解決手段について説明します。
まずは基本的構造として、特別受益は遺産分割の一環という位置付けです。

特別受益の紛争解決手続

あ 位置付け

特別受益は遺産分割の中での算定方法である

い 遺産分割の手続の流れ

原則的に次の順に手続が進む
遺産分割協議→調停→審判
詳しくはこちら|遺産分割|手続の流れ|協議・調停・審判・保全処分・欠席対応・寄与分との関係
家裁の手続上『別表第2審判対象事件』に分類される
詳しくはこちら|家事事件(案件)の種類の分類(別表第1/2事件・一般/特殊調停)

2 特別受益と寄与分との手続の違い

特別受益と似ている不公平の解消の制度として寄与分もあります。

寄与分の基本(制度の趣旨や典型例)

特別受益と寄与分は似ているのですが、解決手続には大きな違いがあります。

特別受益と寄与分との手続の違い

手続上の扱い 特別受益 寄与分
単独の家事調停・審判が可能 ☓ ◯
遺産分割とのセットが必須 ◯ ☓

3 特別受益財産の確認訴訟の適法性

前記のように、特別受益は遺産分割の一環です。遺産分割の手続に含まれるのです。一方、特別受益だけを独立して審理・判断するという発想もあります。特別受益に関する単独での訴訟の適法性についてまとめます。

特別受益財産の確認訴訟の適法性(※1)

あ 確認請求の内容

Aが次の内容の確認を求める訴訟を提起した
確認内容=特定の財産が特別受益財産に該当すること

い 現在の権利関係の確認への該当性

持戻義務という実体法上の義務があるわけではない
特別受益財産が相続財産に含まれることになるものでもない
遺産分割の計算上、加算されるに過ぎない
→現在の権利or法律関係の確認を求めるものではない

う 過去の権利関係の確認としての適性

『あ』の確認の判決が確定した場合
相続分or遺留分をめぐる紛争について
直接かつ抜本的に解決することにはならない

え 現実的な必要性

遺産分割・遺留分減殺請求を離れて
『あ』の確認のみを別個独立に確認する必要はない

お 訴えの適法性(結論)

確認の利益を欠く
=訴えは不適法である

か 権利の性質論

具体的相続分が実体的権利関係であるか否か
→判断を示していない
※最高裁平成7年3月7日
※水上敏『平成7年度最高裁判所判例解説 民事篇』法曹会p318

4 具体的相続分の確認訴訟の適法性

『特別受益財産』の確認訴訟は認められていません(前記)。これと似ていますが、特別受益の計算結果としての『具体的相続分』を確認の対象とする発想もあります。
具体的相続分の確認訴訟についても、結局は認められていません。

具体的相続分の確認訴訟の適法性

あ 確認請求の内容

Aが次の内容の確認を求める訴訟を提起した
確認内容=具体的相続分の価値or価額の遺産の総額に対する割合
特別受益の算定を反映させたものである

い 訴えの適法性

前記※1の判例と同様の判断
→訴えは不適法である
※最高裁平成12年2月24日
※広島高裁岡山支部平成10年10月27日

5 特別受益の法的性質論

前記の『具体的相続分』の確認訴訟の適法性の判断は、特別受益の法的性質が大きく関わっています。法的性質について判例が指摘した内容をまとめます。

特別受益の法的性質論

具体的相続分の法的性質について
→分配の前提となるべき計算上の価額・割合を意味する
→『実体法上の権利関係』ではない
=学説の分類における『遺産分割分説』である
※最高裁平成12年2月24日

6 みなし相続財産の確認訴訟の適法性

以上の確認訴訟は適法性が否定されています。これらと似ていますが、多少アレンジして適法性をクリアしようとした実例もあります。
『みなし相続財産』を確認の対象とする、というアイデアです。結論としてはやはり適法性を否定されています。

みなし相続財産の確認訴訟の適法性

あ 確認請求の内容

特定の財産が相続財産であること
特定の財産の価額(価値)が相続財産とみなされること

い 現在の権利関係の確認としての適性

みなし相続財産という概念について
遺産分割における具体的相続分算定における
観念的操作基準の1要件に過ぎない
現に存在する具体的な財産を更正するものではない

う 過去の権利関係の確認としての適性

共同相続人の具体的相続分が算定されるためには
各相続人の特別受益と寄与分のすべての確定が不可欠である
特定のみなし相続財産の存否だけを既判力をもって確定しても
→直ちに具体的相続分の算定が可能になるものではない

え 結論

確認訴訟の対象たる適格を欠く
→訴えは不適法なものである
※東京地裁平成9年1月31日

お 補足説明

上記※1の判例と実質的には同様の理由・結論である
細かい理由の指摘に独自のものがある
※『判例タイムズ967号』p254

本記事は一般的な説明です。個別の事案にそのまま当てはまるとは限らず、一見似ている事案でも、事情が異なれば結論は異なります。個別的事情により、法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。本記事でご説明したものと同様の問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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