【著作権者=創作者の判定は難しい|著作者の刻印|XEVIOUSに学ぶ】
1 最初に創作した者=著作権者の判定は難しい
『誰が著作権者か』ということが問題になることがあります。
『創作した』と主張する者が複数現れる、という状況です。
要するに『最初に創作した者』が『著作権者』となっているのです。
詳しくはこちら|『著作物』の定義(基本・創作性の判断基準)
この点、複数の者が『最初に創作した』と主張する場合『本当に最初の者』を判定するのは難しいです。
『オリジナル』と『模倣』=複製権侵害、が見た目は酷似・同一、ということになるからです。
『プログラム』についてはコピー・ペーストが容易なので、特に『オリジナルの判断が困難』と言えます。
そこで『創作年月日の登録』は『プログラム』限定で行えることになっています(著作権法76条の2)。
しかし、これを公的な登録以外で実現する方法も編み出されていますので、これを紹介します。
2 『著作者の刻印』が、オリジナリティ=著作権者の証拠となる
創作活動をする者は『オリジナルである=著作権者』ということを分かるようにしておく、と良いでしょう。
『著作者の刻印』というような工夫です。
これにより、後から模倣品について『オリジナルだ』と主張されることを防止できるようになります。
3 namcoのXEVIOUS開発現場における『著作者の刻印』
(1)法律専門家ではなくプログラム開発現場で誕生した
プログラムの著作物について、開発現場の工夫で『著作者の刻印』を実現した実例があります。
その後に登場した『模倣品』との紛争において『著作者の刻印』によって『オリジナリティ』が証明できました。
時代を先取りした、プログラマーの工夫によって『模倣対策』として『著作者の刻印』が生み出されたのです。
プログラム中の注釈(Rem文)として、悪ふざけ・ジョークとしての言葉を盛り込む、という例はそれ以前よりありました。
しかし『表示データや表示させる仕組み』をプログラムに盛り込む、という例はそれまでありませんでした。
(2)隠れキャラ(ソル・スペシャルフラッグ)・隠しコマンドの火付け役
なお、XEVIOUSにおいては、この『盛り込む』手法として『隠れキャラ』や『隠しコマンド』も取り入れました。
当時は画期的であり、その後の多くのゲームで採用されています。
『隠れキャラ』や『隠しコマンド』の火付け役となったのです。
(3)業務命令違反のリスクを超えた
隠れキャラについては、当時、開発の責任者から『採用しない』という方向性が示されていました。
しかし、プログラマーの希望から『機能を消去しない』ままとしていました。
これが開発責任者に発覚し、プログラマーは『バグだ(ミスで消去できていない)』と苦しい説明をしました。
労働法における『業務命令違反』として問題になるはずの状況です。
しかし、最終的には、社内のテストプレーヤーから多くの賛同を集めました。
その結果、開発責任者としても『認めざるをえない』状態となりました。
結局、法律問題にならずに済んだのです。
それどころか『プレイするたびに謎が深まる!』というキャッチコピーとして『隠れキャラ・隠しコマンド』を『売り出す』ことになりました。
namcoの会社名|注意
現在では『株式会社バンダイナムコゲームス』となっている
4 『著作者の刻印』手法=創作者を示す痕跡を残す|copyright表記
(1)『著作者の刻印』
『著作者の刻印』の具体的手法は次のようにまとめられます。
複製権侵害対策『著作者の刻印』|手法
容易に消去できない、著作者を示す『痕跡』を残す
あ 残すべき『痕跡』|刻印
ア 創作した個人・会社が特定できる情報イ 創作時期を示す情報例;『namco』『Copyright 1982』などの文字列
い 『残す』方法(痕跡・刻印)
容易に消去できない方法
《ポイント》
模倣者が気付きにくい
→削除することを怠る
(2)copyrightの表記|確定的な効果はない
『copyright』の表記をよく見かけます。
これについては法的に明確な規定があるわけではありません。
copyrightの表記の意義
あ 表記の例
ア (C)マーク(Cを◯で囲んだもの)イ 『Copyright (C) 2015 *** All rights reserved』
い 法的な意味|『無方式主義』
法的な確定的効果はない
特許権などと違い、著作権は登録・表記などの形式は必要ではない
『無方式主義』と呼ばれる
う 典型的な使用シーン
ア ゲーム(プログラム・プロダクト画面)イ ホームページウ 書籍
(C)マークについては、条約上に規定があります。
万国著作権条約|Cマーク
著作権について『方式主義』を採用する加盟国の『共通様式』を規定している
共通様式=(C)の記号・著作権者の名・最初の発行の年の記載
しかし、日本を含めてほとんどの加盟国は『無方式主義』を採用しています。
結果的に『共通様式の表記』は法的な意味はほとんどありません。
前述のとおり『著作者を認定する事情の1つ』という位置付け、ということになります。
5 XEVIOUSにおける『著作者の刻印』実装例
(1)XEVIOUSにおける『著作者の刻印』
この手法について、XEVIOUSにおける具体例を挙げて説明します。
XEVIOUSにおける『著作者刻印』実装例
あ 森の中に『namco』の文字列|データ
地上の模様(森)の中に『namco』という文字を表示させた
『エリア7』の最後の部分=『エリア8』が始まる少し手前
《工夫ポイント》
ア 周囲の『森』と文字列の色が同系色→迷彩効果→見付けにくいイ 当該シーンで、プレイヤーが『敵機からの攻撃回避』に専念する設計『テラジ』が大量に『遅いスパリオ』を放つ
→プレイヤーが長時間逃げまわることに専念する
ウ 当該シーンの多少手前で『ミス』すると当該シーンがスキップされる『エリア7』の3分の2以上通過後のミス→『エリア8』から始まる=『namco』見えない
『エリア8』の3分の2経過前のミス→『エリア8』の最初から始まる=『namco』見えない
い 特定の操作で『DEAD COPY』が表示される
プログラムを変更した場合に、特定の操作により『不正』であることを表示する機構
特定の操作=『トリガー』が巧妙に思い付かない方法であった
《トリガーの内容(次の両方)》
ア 特定の場所にブラスター(対地ミサイル)を撃ちこむイ タイトル画面に『namco』の文字列が存在しない
(2)XEVIOUS正規品vs模倣品
XEVIOUSの開発後、予想どおり、模倣品が登場しました。
模倣品作成者も、『著作者の刻印』に気付けば、当然削除します。
登場した2種類の模倣作品における『結果』をまとめます。
XEVIOUSの『著作者刻印』成功例
| 模倣作品 | 森のなかの『namco』 | ブラスター命中による『DEAD_COPY』 |
| XEVIOS(Uを抜かした) | 解除(削除)された | 解除(削除)できず |
| BATTLES | 解除(削除)できず | 解除(削除)された |
結果的に、2つの模倣品ともに、2つの『刻印』のうち、片方の抹消は成功しましたが、もう片方は抹消に成功できませんでした。
結局、『オリジナリティ証明による模倣品(複製権侵害)であることの認定』が可能となったのです。
(3)『敵が逃げる』というXEVIOUSのコンセプトは『模倣者』も含む
XEVIOUSのコンセプト
あ 革新的なコンセプト
『敵が逃げる』というもの
↑『敵も意思を持っている』
い それ以前のシューティングゲームの『常識』
敵は基本的に止まっている・定位置がある
↑あたかも『撃たれるために存在する』『的としての存在』
例;スペース・インベーダー、ギャラクシアン・ギャラガ
このように、当時のXEVIOUSの『敵が意思を持っていて、逃げる』ということは画期的なものでした。
このコンセプトには『模倣者という敵が逃げる』ということも含まれていたのかもしれません。
謎が深まる思いです。
6 XEVIOUS×著作権|付随的|ナスカの地上絵・『ソル』という名称
(1)ナスカの地上絵の描写は著作権侵害にならない
XEVIOUSでは、背景(地上)に、『地上絵』が登場します。
ペルー共和国のナスカの地上絵に類するものです。
ナスカの地上絵は、地上の石をどかすことによって、上空から『色の違い』として見えるというものです。
一般的には『絵』として著作物となり、無断の複製は違法となります。
この点、ナスカの地上絵は創作者が特定できていません。
また、放射性炭素年代測定(C14)により、約1500年前に創作されたことが分かっています。
創作者不明・期間制限を大幅に超過している、という理由から『著作権の対象』とは言えません。
ゲームの背景として使用しても『著作権違反』の問題は生じません。
(2)『ソル』『ソルバルウ』と通貨単位『ソル』の一致は法律問題を生じない
XEVIOUSのキャラクターとして『ソル』という文字列が登場します。
XEVIOUSのキャラクターの例
| ソル | 研究施設・隠れキャラ |
| ソルバルウ | プレイヤーの自機;『太陽の鳥』の意味 |
一方、ペルー共和国の通貨単位は『ヌエボ・ソル』です。
名称が通貨単位と重複しています。
この点、通貨単位は『芸術』などには該当しません。
そこで『著作権』の対象にはなりません。
結果的に法的な問題は生じません。
7 参考情報
以上の内容に関する参考情報をまとめておきます。
参考情報
あ THEナムコブック(書籍)
成沢大輔『THEナムコブック』JICC出版局1991年
い シューティングゲーム探求記(ブログ)
本記事は一般的な説明です。個別の事案にそのまま当てはまるとは限らず、一見似ている事案でも、事情が異なれば結論は異なります。個別的事情により、法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。本記事でご説明したものと同様の問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。


