【サイト・アプリ運営者の法的責任|まとめ|監視義務・責任免除・努力義務】
1 ユーザーの行為によりサイト・アプリ運営者が責任を負うリスク
一般ユーザーがテキスト・画像・動画を投稿できる、インターネット上のサイト・アプリが普及しています。
また、ユーザーが販売できるサイト・アプリもあります。
これらのプラットフォーム上で、ユーザーが不法・違法な投稿を行う、という事例もよく生じます。
当然、そのようなユーザーは法的な責任を負うことになります。
それだけではなく、『サイトやアプリの運営者』も責任を負う、というケースもあります。
一定の関与が前提となりますが、運営者(事業者)としては、一定のケア(リソース配分)が必要です。
ユーザーの違法行為の責任を負う『サイト・アプリ』の例
あ テキスト・画像・動画の投稿サイト
2ちゃんねる・ニコニコ動画・YouTube
い SNS
Facebook・twitter・インスタグラム
う 販売プラットフォーム・オークションサイト
Amazon・楽天市場
サイト・アプリ運営者が責任を負う事情|概要
あ 違法行為を知っていた
ユーザーによる各種違法行為を知っていたが削除などの対応をしなかった
被害者から削除要求を受けたが放置した
い 収益
ユーザーによる各種違法行為により利用料・広告料等の収益を上げていた
サイト・アプリ運営者が負う責任の種類
あ 刑事責任
投稿が犯罪行為に該当する場合
→運営者が『幇助犯』『教唆犯』となるケース
い 民事責任
投稿による被害者が生じた
→運営者が損害賠償責任を負うケース
以上は、いろいろな種類の違法行為に共通する、大雑把なものです。
違法行為の種類などについては次に説明します。
2 サイト・アプリ運営者が負う刑事責任|『幇助犯』『教唆犯』
まずは刑事責任として『幇助犯』『教唆犯』となるものを示します。
ユーザーの投稿によって運営者が『幇助犯』『教唆犯』となるリスクの例
あ 第三者の名誉を毀損する投稿
詳しくはこちら|ネット上の名誉棄損など|運営者・管理人の責任|損害賠償・削除義務
い 第三者の著作権を侵害する投稿
投稿サイト,アプリ運営者,クラウドサービス運営者の著作権に関わる責任
う わいせつ系の投稿
運営者が次のような責任を負うことがある(後記)
ア 児童ポルノ法違反の幇助犯イ わいせつ物頒布罪の幇助犯ウ 風営法違反エ 売春防止法違反の幇助犯男女交際や性行為に関する刑罰(売春防止法・児童ポルノ法・青少年育成条例・強姦罪)
え 各種犯罪を『指南』する投稿
さまざまな『犯罪に当たる行為』の遂行方法を説明する投稿がなされた場合
運営者が幇助犯、教唆犯となる可能性がある
お 第三者を脅迫する投稿
脅迫罪や強要罪、恐喝罪に当たる投稿がなされた場合
一般的に、『幇助犯』『教唆犯』となる基準については別に説明しています。
3 サイト・アプリ運営者が負う民事責任|損害賠償責任
ユーザーの投稿により、サイト・アプリ運営者が民事的な損害賠償責任を負うこともあります。
典型的なものをまとめます。
ユーザーの投稿によって運営者が損害賠償責任を負うリスクの例
あ 名誉毀損、著作権侵害等の『幇助犯』『教唆犯』に当たる場合
ア 前提事情上記の『幇助犯』『教唆犯』に該当する
被害者・損害が生じている
イ サイト・アプリ運営者の責任被害者に対して、不法行為の損害賠償責任を負うことがある
い 第三者の肖像権、プライバシー権、パブリシティ権を侵害する投稿(民事)
ア 前提事情肖像権、プライバシー権、パブリシティ権の侵害が生じた
イ 法的扱い『犯罪』としての規定がない
しかし、民事的な、損害賠償請求の対象となる
関与の程度によっては、運営者も賠償責任を負うことがある
4 児童ポルノの投稿×アプリ運営者の刑事責任|実例
実際に検挙されたケースについて紹介します。
まずは児童ポルノ法違反によるアプリ運営者の逮捕というケースです。
全国初のケースとして話題となっています。
児童ポルノの投稿×アプリ運営者の刑事責任|実例
あ 事案|疑いの内容
ユーザーが『写真共有アプリ』に児童ポルノの画像を投稿した
アプリ運営者はこのことを知っていた
一定範囲で児童ポルノの閲覧には料金がかかる
アプリ運営者は閲覧者からの収入で利益を得ていた
い 検挙
次の疑いでアプリ運営者が逮捕された
罪名=児童ポルノ法違反(公然陳列)の幇助犯
う 検挙の歴史
児童ポルノ法違反容疑での『アプリ運営者の検挙』は全国で初めてである
※日本経済新聞オンライン平成27年11月5日
『幇助犯』については、『著作権侵害の投稿』のケースにおける判例が参考になります。
投稿サイト,アプリ運営者,クラウドサービス運営者の著作権に関わる責任
5 わいせつ動画の投稿×サイト運営者の刑事責任|実例
『わいせつな動画』を広く配信すると、『わいせつ物頒布罪』となります(刑法175条1項)。
ユーザーがサイトにわいせつ動画を投稿することが『わいせつ物頒布罪』となります。
この場合、運営サイトは、『投稿場所の提供』として、この犯罪を『手助け』したことになります。
わいせつ動画の投稿×サイト運営者の刑事責任|実例
あ 事案
わいせつ行為の動画を、ユーザーが有料配信していた
投稿サイト運営者はこれを把握した後も放置していた
い 検挙
次の犯罪の疑いでサイト運営者が検挙(捜索)された
ア 公然わいせつ罪の幇助犯イ 風営法(無許可営業)※平成26年9月の報道
『幇助犯』だけではなく、風営法違反も被疑事実とされました。
閲覧するユーザーから徴収する料金が『アダルト動画』の対価、に該当します。
要するに『アダルト動画の無許可販売』ということになるのです。
6 『電気通信役務提供者』|定義=プロバイダ・サーバー管理者など
いくつかの法律で『サイト運営者の責任』に関する規定があります。
共通して使われる『電気通信役務提供者』の定義についてまとめておきます。
『電気通信役務提供者』|定義
あ 対象事業者
『電気通信役務提供者』
い 具体例
プロバイダ・サーバー管理者・運営者など
『サーバーの提供がないアプリ制作者』は含まれない
※電気通信事業法2条2項
具体的な規定の内容は次に説明します。
7 サイト運営者→監視義務まではない
サイト・アプリ運営者が責任を負う前提は、違法行為を『知っていること』が前提です。
この点、運営者は『違法行為の有無を監視するべき』という考え方もあります。
仮に『管理義務あり』とすると運営に大きな負担を課すことになってしまいます。
現行法では、一般的な『監視義務』は否定されています。
サイト運営者×監視義務
『電気通信役務提供者』
→『監視義務』は否定される
※プロバイダ責任制限法3条1項
※東京地裁平成16年5月18日
※東京高裁平成13年9月5日;ニフティサーブ事件
ただし、一定の範囲で『努力義務』が規定されています(後述)。
8 ユーザーの違法行為によるサイト運営者の責任|責任免除
いくつかの法律で、サイト運営者の責任の免除(制限)が規定されています。
ユーザーの違法行為によるサイト運営者の責任|責任免除
あ 責任免除|共通事項
各法律により一定の情報の『削除・送信防止措置』の責任が免除される
い プロバイダ責任制限法
『他人の権利を侵害』する情報
※プロバイダ責任制限法2条
う 医薬品医療機器等法(※1)
指定薬物(危険ドラッグ)に関する違法広告
※医薬品医療機器等法72条の6、76条の7の3
え 児童ポルノ法
『免責』の規定はない
お リベンジポルノ法
『私事性的画像記録』
→これにより名誉or私生活の平穏を侵害する情報
※リベンジポルノ法4条
※1 正式名称=医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
これらは『責任制限=免除』です。
しかし、反対解釈が事実上適用される傾向があります。
つまり『削除しないと違法性あり』という認定・判断です。
9 ユーザーの違法行為によるサイト運営者の責任|努力義務
『児童ポルノ法』だけはサーバー・サイト運営者の『努力義務』が規定されています。
『努力義務』ですから、法律的・具体的な『義務』ではありません。
これを履行しなくても『罰則』などの不利益が直接適用されることはありません。
ユーザーの違法行為によるサイト運営者の責任|努力義務
あ 児童ポルノ法×サイト運営者の努力義務|内容
ア 児童ポルノ法違反に関して捜査機関に協力するイ 児童ポルノの情報を防止する措置を講じる※児童ポルノ法16条の3
い 他の法律
次の法律には『サイト運営者の努力義務』規定はない
ア プロバイダ責任制限法イ 医薬品医療機器等法ウ リベンジポルノ法
各法律の説明はそれぞれ別の記事に記載しています。
詳しくはこちら|ネット上の名誉棄損など|運営者・管理人の責任|損害賠償・削除義務
詳しくはこちら|児童ポルノ単純所持罪・公然陳列罪(基本・サーバー運営者の責任)
詳しくはこちら|リベンジポルノ法|元恋人とのセクシャル画像のインターネッツ拡散→犯罪
本記事は一般的な説明です。個別の事案にそのまま当てはまるとは限らず、一見似ている事案でも、事情が異なれば結論は異なります。個別的事情により、法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。本記事でご説明したものと同様の問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。


