【死後の認知の全体像(背景・遺産分割と金銭賠償)】
1 認知を回避/遅らせる|背景事情
父の死後に認知をする、という方法があります。
本記事では『死後の認知』に関する全体的・基本的事項を説明します。
一般的に『認知』をすぐに行わない、ということがあります。
このような背景が『死後の認知』につながります。
まずは認知しない、とか、遅らせるという背景についてまとめます。
認知を回避/遅らせる|背景事情
あ 背景事情|例
『父子関係』があることについては疑問はない
ただし『父子関係』を戸籍に反映させることを回避したい
例;いわゆる『隠し子』と呼ばれる状況など
一方『相続権』を与えるために認知が必要である
詳しくはこちら|認知の効果|全体・相続|認知がない状態の扱い
い 任意認知をしない/遅らせる
ア 認知届の提出をしないでおくイ 認知届を後で提出する 認知届の提出期限はない
2 父の死後の認知×任意認知
認知を後回しにしているケースはよくあります(前述)。
そのような状況で『父』が亡くなると『任意認知』ができなくなります。
この点、誤解されている方もいらっしゃいます。
これについてまとめておきます。
父の死後の認知×任意認知
あ 父の死後×認知届提出|典型的事情
『父』が認知届に記入・押印をしておいた
認知届を母が保管していた
役所への提出はしないでおいた
い 父の死後×認知届提出→NG
『認知届の提出』を他の者が代行することはできない
→『父』の死後は認知届を提出できない
う 父の死後×認知
父の死後に認知を行う方法・制度はある(後述)
3 父の死後の認知|方法
『父』の死後に認知を行う方法はあります。
具体的な内容をまとめます。
父の死後の認知|方法
あ 死後認知請求
子や母が訴訟提起を行う
被告は検察官とする
一定の手間・時間・費用的コストがかかる
3年の期間制限がある
※民法787条
詳しくはこちら|死後認知請求|手続=訴訟|当事者・申立期限3年・調停前置の例外
い 遺言認知
『父』が生前に遺言の中に『認知』を記載しておく方法
死後の手続は比較的容易・簡易である
詳しくはこちら|遺言認知|子の存在を隠す・遺言執行者が認知届提出
※民法781条2項
4 死後認知×相続権|基本
死後認知を行った時の『相続権』について、原則的事項をまとめます。
死後認知×相続権|基本
あ 死後認知×遡及効
『父』の死後に認知された場合
→効果は遡って生じる
※民法784条
い 死後認知×相続権|基本
死後認知後に、相続権は当然に認められる
5 死後認知を受けた者の相続
(1)遺産分割完了後の死後認知→本来は遺産分割は無効
死後認知により『相続権』が発生します(前述)。
しかしノーマルの相続とは違う特殊な状況になることが多いです。
そのため不都合を回避する制度があります。
これについてまとめます。
遺産分割完了後の死後認知→本来は遺産分割は無効
あ 死後認知の時点で遺産分割が完了していた事例
認知が完了するまでに数か月〜数年がかかることも多い
→認知完了時には、既に他の相続人による遺産分割が完了していることがある
い 原則論→遺産分割は無効
『相続人の一部を欠いた』遺産分割であったことになる
→遺産分割は理論的には無効となる
詳しくはこちら|『相続人全員』ではない参加者による遺産分割の有効性(基本)
(2)死後認知を受けた者の価額賠償請求権(民法910条)
前述のように遺産分割を無効としてしまうと支障が大きいので、民法上、遺産分割は有効として(維持して)、その代わり、認知された者には金銭で補償する、というルールになっています。
死後認知を受けた者の価額賠償請求権(民法910条)
→金銭による賠償で足りる
例=不動産などの遺産現物の承継の代わりに金銭で支払われる
※民法910条
(3)認知を受けた者の価額賠償における評価の基準時→請求時(概要)
被相続人が亡くなった後に死後認知、価額賠償の請求までに時間が経過しているケースでは、遺産の評価額が大きく変動していることがあります。この点、価額賠償の計算では、請求の時点を基準として遺産の評価をすることになります。
詳しくはこちら|遺産分割における評価の基準時(遺産・特別受益・寄与分・死後認知の価額請求)(解釈整理ノート)
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