1 合意に相当する審判の根本的趣旨
2 合意に相当する審判の対象案件
3 合意に相当する審判の要件
3 事実の調査の典型例
4 合意に相当する審判の効力
5 審判に至らないケースのフロー

1 合意に相当する審判の根本的趣旨

家事調停では『合意に相当する審判』という制度があります。
本記事では合意に相当する審判について説明します。
根本的な趣旨は,当事者の合意だけでは身分関係を決めるわけにはいかないということです。

<合意に相当する審判の根本的趣旨>

あ 身分関係の性格

調停の内容の身分関係について
当事者が処分できるものではない場合(後記※1)
→当事者の合意だけでは解決に至らない
=調停成立にならない

い 裁判所の審査の必要性

当事者が合意していても
裁判所による一定の審査が必要である

2 合意に相当する審判の対象案件

合意に相当する審判の対象となる案件の種類は,当事者が処分できない身分関係に関するものです。
人事訴訟の対象となる案件のうち,離婚・離縁以外のもの,ということになります。

<合意に相当する審判の対象案件(※1)>

あ 条文規定

離婚・離縁を除く人事訴訟事件
※家事事件手続法277条1項
(訴訟対象事件−特殊調停対象事件)

い 対象案件の性格

当事者が処分できない身分関係を対象とする
当事者の合意だけでは身分関係の確認や形成の結果を生じさせられない
※松本博之『人事訴訟法 第3版』弘文堂2012年p16

う 対象案件の具体的種類

ア 婚姻の無効確認
イ 協議離婚の無効確認
ウ 親子関係の不存在確認
エ 嫡出否認
オ 認知
詳しくはこちら|家事事件|手続|種類・基本|別表第1/2事件・一般/特殊調停対象事件

3 合意に相当する審判の要件

合意に相当する審判の要件をまとめます。
要するに,当事者が解決内容を合意していることに加えて,裁判所が一定の審査をする,というものです。

<合意に相当する審判の要件>

あ 基本的事項

『い〜え』のすべてに該当する場合
→『合意に相当する審判』をすることができる
※家事事件手続法277条1項

い 審判を受けることの合意

当事者が次の事項について合意している
合意内容=申立の趣旨のとおりの審判を受けること

う 実質的な主張事実の肯定

当事者の両方が実質的主張事実を争わない
実質的主張事実の内容は『アorイ』である
ア 申立に係る無効or取消の原因
イ 申立に係る身分関係の形成or存否の原因

え 調査による認定

家裁は事実の調査を行う(後記※2)
『い』の合意が相当であると認めた

3 事実の調査の典型例

裁判所が一定の事実確認をするための調査として典型的なものをまとめます。

<事実の調査の典型例(※2)>

ア 関係者の戸籍謄本
イ 医師である裁判所技官作成の血液型検査報告書
ウ 診断書
※家事事件手続法60条1項参照
エ 調査嘱託に応じて提出された報告書
例;官公庁・銀行・信託会社
※家事事件手続法62条参照
オ 家庭裁判所調査官の調査報告
※家事事件手続法58条3項
※松本博之『人事訴訟法 第3版』弘文堂2012年p16

4 合意に相当する審判の効力

裁判所が合意に相当する審判を行った場合には判決と同様の効果が生じます。
ただし,一般的な家事審判と同じように,既判力は含まれません。

<合意に相当する審判の効力>

あ 効力の内容

合意に相当する審判は確定判決と同一の効力を有する
※家事事件手続法281条

い 既判力

合意に相当する審判の効力(あ)について
既判力はない
※松本博之『人事訴訟法 第3版』弘文堂2012年p17
一般的な家事審判と同様である
詳しくはこちら|家事審判の対審構造の特徴(処分権主義・弁論主義・既判力なし)

う 効力発生時点

『ア〜ウ』のいずれかに該当した時点
ア 異議申立期間の経過
異議申立期間=審判から2週間の不変期間
※家事事件手続法279条1項,2項
イ 異議の却下審判の確定
異議の申立を却下する審判の確定
ウ 異議申立権放棄
異議を申し立てる権利の放棄
※家事事件手続法279条4項

5 審判に至らないケースのフロー

調停の手続において,合意に相当する審判がなされると手続が終了します。
逆に,合意に相当する審判に至らない場合は,調停不成立として手続が終了します。
そして,当事者のいずれかが(人事)訴訟を提起できる状態になります。

<審判に至らないケースのフロー>

あ 調停不成立

『ア・イ』のいずれかに該当する場合
→最終的に調停は不成立となり終了する
ア 合意に至らない
イ 合意したが裁判所が審判をしない

い 訴訟提起

調停不成立(あ)によって
→調停前置の要件をクリアする
詳しくはこちら|家事事件の調停前置の基本(趣旨・不服申立)
→当事者は訴訟を提起できる