1 『生命』の定義|見解
2 『生物』の定義|見解
3 『生物』の定義×脳死
4 『生物・生命』の判断×法的解釈論
5 ウイルス|定義・特徴|基本
6 ウイルス×『生命・生物』解釈論byサイエンス
7 ウイルス×『動物』解釈論by法律

1 『生命』の定義|見解

本記事では『生命・生物』の科学的な定義・解釈を説明します。
法律上の解釈論とは似ているけど異なります。
注意が必要です。
まずは科学における『生命』の定義・見解を整理します。
最高裁判例のような統一的なものはありません。
『どのような条件が揃うと人は生命を感じるか』という心理学とも思えます。
いずれにしても,科学の世界で有力な見解をまとめます。

<『生命』の定義|見解>

あ 内外の境界

外界との区別をする境界を持っている

い 自己増殖性

自分と同じものをつくり増やすことができる

う 物質代謝能・外界との相互作用(※1)

次の能力を持つ
ア 外界から物質を取り入れて自分の身体をつくる
イ 自分が活動するエネルギーをつくる
※元九州大学理学部教授・名誉教授伊藤明夫『自分を知るいのちの科学』培風館
※早稲田大学先進理工学部生命医科学科『生命科学概論』朝倉出版p2

2 『生物』の定義|見解

科学において『生物』の定義も統一的なものがあるわけではありません。
有力な見解をまとめます。

<『生物』の定義|見解>

あ 細胞(※2)

『細胞』という構造体からできでいる
『細胞』はリン脂質2重層からなる膜で囲まれた

い 自己複製

遺伝物質DNAによって,自己を複製する

う 刺激応答性(※3)

環境からの刺激に応答する

え ATP合成

環境からATPを合成する
ATPのエネルギーを用いて生活・成長する
ATP=エネルギー物質・アデノシン3リン酸
※東京大学生命科学教科書編集委員会『現代生命科学』羊土社p12

3 『生物』の定義×脳死

『生物』の定義と『脳死』との関係をまとめます。

<『生物』の定義×脳死>

『刺激応答性』(上記※3)が欠けている
→『生物』には該当しない
=『脳死』も『死亡』とする見解と整合する

4 『生物・生命』の判断×法的解釈論

『生物・生命』の『法律的』な判断・定義にもバラエティがあります。
科学的な分類・定義とはまた異なるのです。

<『生物・生命』の判断×法的解釈論>

あ 『死亡の認定』

法律上の人間の『死亡の認定』において
→『生命』の判断と類似する基準が用いられている
『脳死』も『死亡』に含める見解が一般的になっている
(別記事『死亡認定・3徴候説』;リンクは末尾に表示)

い 動物愛護法

『動物』『愛護動物』の定義
→一定の動物のカテゴリが明記されている
※動物愛護法10条1項,44条4項
詳しくはこちら|動物愛護法|動物の殺傷,苦痛を与えることは犯罪となる

う 環境省告示|家庭動物飼養・保管基準

『家庭動物等』の定義
→一定の動物のカテゴリが明記されている
※平成14年5月28日環境省告示37号『家庭動物飼養・保管基準』第2(1)(2)
詳しくはこちら|環境省告示『家庭動物飼養・保管基準』|共通

え 動物の『占有者』責任×ウイルス

民法上,動物の『占有者』の責任が規定されている
『動物』の範囲について解釈論がある
『ウイルス』の該当性に復数の見解がある(※3)

5 ウイルス|定義・特徴|基本

ウイルスは科学における扱いがちょっと複雑です。
まずは科学での定義や特徴の基本的事項をまとめます。

<ウイルス|定義・特徴|基本>

あ 分類・定義

タンパク質の殻とその内部に核酸を持つ微小な構造体
他の生物の細胞を利用して,自己を複製させることができる
細胞を持たない
遺伝子を持つ

い 特徴
細胞壁 なし
核酸 DNA/RNAのどちらかしか持っていない
抗生物質 効かない

6 ウイルス×『生命・生物』解釈論byサイエンス

ウイルスの科学における分類を整理します。

<ウイルス×『生命・生物』解釈論byサイエンス(上記※3)>

あ 『生命』解釈論

少なくとも物質代謝能(上記※1)が欠けている
→ウィルスは『生命』に該当しない

い 『生物』解釈論

細胞(上記※2)を持たない
→『生物』には該当しない

う サイエンス的解釈論|まとめ

一般的には『生物』には分類しない
『生物的存在』と呼ぶこともある
※C.K.マシューズほか『カラー生化学』西村書店p16

7 ウイルス×『動物』解釈論by法律

ウイルスの解釈は法律的なものでも見解の対立があります。

<ウイルス×『動物』解釈論by法律>

『動物』の占有者の責任の適用の有無
→法学でも解釈論が分かれている
※民法718条
詳しくはこちら|動物の占有者の責任|基本・『動物』解釈論