1 動物愛護法により動物の殺傷や苦痛を与えることが禁止されている
2 『愛護動物』の定義
3 『愛護動物』の虐待・保護不足の罰則
4 『みだりに殺す・傷つける』の解釈|闘犬・闘牛という伝統行事は例外という方向性
5 『愛護動物』以外の保護
6 適正な業務における動物の処分は違法ではない
7 食用,実験用の動物の扱いは環境省で基準が定められている

1 動物愛護法により動物の殺傷や苦痛を与えることが禁止されている

<動物愛護法との抵触|事例>

熱帯動物園を経営している
集客のため,ハブ対マングースの決闘ショーの企画を検討している

この企画は,現在では動物愛護法違反となり,刑事罰の対象となります。
動物の分類としてハブは爬虫類,マングースは哺乳類に該当します。
そうすると,動物愛護法上の『愛護動物』となります。
愛護動物については,みだりに殺すことも傷つけることも罰金刑の対象とされています(後述)。
徳川綱吉の時代の生類憐れみの令の現代版とも言えるルールです。

2 『愛護動物』の定義

(1)動物愛護法上の『愛護動物』の定義

動物愛護法上の『愛護動物』は,飼育されている哺乳類・鳥類・爬虫類+野生の指定11動物が指定されています。
『愛護動物』については,『みだりに殺傷すること』が禁じられている動物は次のとおりです。

<動物愛護法上の『愛護動物』|定義>

対象動物 飼育下 野生(野良)
牛,馬,豚,めん羊,やぎ,犬,ねこ,いえうさぎ,鶏,いえばと,あひる
哺乳類,鳥類,爬虫類
その他

※動物愛護法44条4項

(2)『愛護動物』の分類の趣旨;呼吸方法で分類

哺乳類,鳥類,爬虫類に該当しない動物については,飼育下・野生のいずれも,対象外です。
言い換えると,脊椎動物の中では魚類,両生類と,無脊椎動物のすべて,ということになります。
この分類は,脊椎動物のうち,呼吸の方式で区別されているという状態です。

愛護動物への該当性>

呼吸法式 『愛護動物』該当性 該当する具体的『綱』
肺呼吸 哺乳類,鳥類,哺乳類
えら呼吸(※1) 両生類,魚類

※1 一時期だけのえら呼吸も含みます。

なお,脊椎動物以外(無脊椎動物)は『愛護動物』には含まれません。
例えば昆虫の『闘い』をショーにすることは動物愛護法で止めることができない状態なのです。

3 『愛護動物』の虐待・保護不足の罰則

『愛護動物』の保護として,虐待や不十分な保護について罰則が規定されています。
参考として『人間の子供』への虐待などの罪名も入れてまとめました。

<『愛護動物』の虐待・保護不足に対する罰則>

行為 被害者=『愛護動物』の場合の法定刑 動物愛護法 被害者=人間の子供の場合の罪名
みだりに殺すこと 懲役2年以下or罰金200万円以下 44条1項 殺人罪
みだりに傷つけること 懲役2年以下or罰金200万円以下 44条1項 傷害罪
給餌・給水をしないこと 罰金100万円以下 44条2項 保護責任者遺棄罪
酷使すること 罰金100万円以下 44条2項 児童福祉法違反
健康・安全環境の悪い状態で拘束・衰弱させること 罰金100万円以下 44条2項 保護責任者遺棄罪
飼育中に疾病・負傷→適切な保護をしないこと 罰金100万円以下 44条2項 保護責任者遺棄罪
遺棄すること 罰金100万円以下 44条3項 遺棄罪

4 『みだりに殺す・傷つける』の解釈|闘犬・闘牛という伝統行事は例外という方向性

(1)『みだりに殺す・傷つける』の解釈論

動物愛護法で違法される『みだりに殺す』『みだりに傷つける』の解釈はちょっと曖昧です。
これについて,環境省による公的な見解があります。

<『みだりに殺す・傷つける』の解釈|環境省>

あ 基本的基準

不必要に強度の苦痛を与えるなどの残酷な取扱をすることをいう

い 具体的判断要素

対象行為の目的・手段・態様等及び当該行為による苦痛の程度等を総合して判断する
社会通念としての一般人の健全な常識により判断する

(2)闘牛・闘犬は『伝統的』だから適法という方向性

また『闘牛・闘犬』は現在でも実際に行なわれています。
少なくとも政府としては,『みだりに殺す・傷つける』に該当しない,と判断しているようです。

<闘犬等|内閣総理大臣官房管理室長の回答|要約|昭和49年>

伝統行事として社会的に認容されている闘犬・馬力大会等は法律上の禁止行為に該当しない

あまり具体的・明確な理由はないようです。
要するに『伝統行事』であるから保護(維持)する,というものと思えます。
実際に『伝統』に達していない『ハブvsマングース決闘ショー』を断念(廃止)した沖縄の動物園もあります。
外部サイト|環境省|『虐待の防止』について

5 『愛護動物』以外の保護

飼育されている魚類や両生類の殺傷については,動物愛護法の保護の対象外です。
しかし,他の法律に抵触することはあります。

他の人の飼育,所有している動物については,当然ですが,法律が保護しています。

<他の人の飼育する動物の殺傷への法規制>

あ 器物損壊罪

刑法261条

い 不法行為による損害賠償責任

民法709条,710条

動物を『器物』(条文上は『物』)と呼ぶのはちょっと心がないように思います。
ただ,刑法上は人間以外を広く『器物』に含めて解釈しています。
民法上は『動産』に該当します。
※民法85条,86条2項
当然ですが,他人の飼っている動物を傷つけたり,殺してしまったら,慰謝料その他の損害賠償責任が生じます。
※民法709条,710条

なお,動物は『動産』扱いなので,ペットに財産を相続で承継するということはできません。
ただし,信託を使って類似する趣旨を実現することはできます。
別項目;ペットへの相続のような仕組みも信託で作れる

6 適正な業務における動物の処分は違法ではない

例えば,業種によっては,仕事上,動物を処分することもあります。
典型例は,鳥を食用にする,というような業務です。

この場合,適正な業務として行っているので,動物愛護法違反とはなりません。
動物愛護法で禁じられているのは,あくまでも,一般的に賛同されることのない,非人道的な行為です。
人間(その他動物)の食用にするという適正な業務の一環としての行為は禁止の対象外です。
条文上,禁止される殺傷は『みだりに』という文言が付されています。

つまり,正当・適正な目的を欠く,という場合だけ,刑事罰の対象となるわけです。

7 食用,実験用の動物の扱いは環境省で基準が定められている

例えば,食用での動物の処分や実験用動物の扱いについては,『基本指針』を環境省が定めています。
※動物愛護法5条
この『基本指針』は,動物愛護法違法とされる『みだり』な殺傷に該当するか否かの判断において用いられます。
要するに,このような基準に違反すると,動物愛護法違反となる可能性が高まる,ということです。

食用動物のさばき方や実験用動物の扱いについて,細かい基準が定められています。
※産業動物の飼養及び保管に関する基準

実験用動物についても,科学の発展を尊重しつつも,支障ない範囲での苦痛などの防止が図られています。
例えば,飼育環境や,麻酔,鎮痛剤の使用による安楽死に関するものです。
※実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準,第4『1』項など
また,管理上の個体識別措置としてマイクロチップ装着等の個体識別措置の努力義務も規定されています。
※同基準,第3『5』項

<環境省|実験動物・基準|オリジナル>

平成25年環境省告示第84号
実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準
外部サイト|環境省|実験動物・基準