1 不動産の資金や利益の特別受益の典型例
2 不動産の資金を特別受益と認めた裁判例
3 不動産の使用利益を特別受益と認めた裁判例
4 不動産の権利を特別受益と認めた裁判例
5 不動産の資金や利益を特別受益と認めなかった裁判例

1 不動産の資金や利益の特別受益の典型例

不動産の生前贈与や遺贈が特別受益に該当することがあります。単純な贈与や遺贈以外でも,実質的な負担はこれと同じ扱いとなることもあります。
まずは,不動産の資金や不動産に関する利益が特別受益に該当する典型例をまとめます。

<不動産の資金や利益の特別受益の典型例>

次のような典型例が多い
ア 住宅購入資金の贈与
イ 不動産(そのもの)の贈与
ウ 借地権の承継
エ 借地権の設定
被相続人所有の土地について子が借地人になる
オ 不動産の無償『使用』

これはタイプとして分類したものです。これらに該当する行為が特別受益として認められるかどうかは別です。判断基準については別の記事で説明しています。
以下,特別受益性が判断された裁判例を紹介します。個別的事案の判断を考える上で参考になるものです。

2 不動産の資金を特別受益と認めた裁判例

不動産の資金の負担を特別受益に該当する贈与と認めた裁判例をまとめます。

<不動産の資金を特別受益と認めた裁判例>

あ 建築請負代金の一部

※大阪高裁昭和49年9月17日

い 建物増改築費用

※大分家中津支部昭和51年4月20日

う 建物建築資金+建築材

次の『ア・イ』の生前贈与
ア 土地購入資金5万円(昭和24年)
イ 住宅建築用の木材
※徳島家裁昭和52年9月16日

3 不動産の使用利益を特別受益と認めた裁判例

不動産そのものではなく,使用する利益を特別受益として認めた裁判例をまとめます。

<不動産の使用利益を特別受益と認めた裁判例>

あ 全体

不動産の使用貸借があったケースにおいて
次の『い〜え』の内容で特別受益として認められた

い 負担付きの持戻し免除

負担付きで持戻し免除が認められた
※東京家裁昭和49年3月25日

う 一部は持戻し免除

2人のうち1人につき持戻免除が認められた
※大阪家裁平成6年11月2日

え 遺留分減殺の前提

遺留分減殺の算定の前提として
特別受益として認められた
※東京地裁平成15年11月17日

4 不動産の権利を特別受益と認めた裁判例

所有権や借地権という,不動産に関する権利の移転を特別受益として認めた裁判例をまとめます。

<不動産の権利を特別受益と認めた裁判例>

あ 借地権(+建物)

※神戸家裁尼崎支部昭和48年7月31日
※大阪家裁昭和51年3月31日
※東京家裁平成12年3月8日

い 田畑

※東京家裁昭和33年7月4日

う 国から売り渡された農地

※仙台家裁昭和49年3月30日

5 不動産の資金や利益を特別受益と認めなかった裁判例

以上の裁判例は,不動産に関する資金や利益を特別受益として認めたものでした。次に,特別受益として認めなかった裁判例をまとめます。

<不動産の資金や利益を特別受益と認めなかった裁判例>

あ 不動産

※大阪高裁昭和34年4月25日

い 妻との共有不動産の共有持分放棄

※岡山家裁新見支部昭和42年2月25日

う 家業への労に報いるための購入物件

※広島家裁三次支部昭和49年3月25日

え 建物の維持管理をしながら無償使用

※新潟家裁昭和55年5月27日

お 土地買受代金の一部負担

※岡山家裁昭和55年8月30日