1 『祭祀供養物=系譜・祭具・墳墓』の内容|基本的事項
2 墓地の土地所有権|親族所有形態
3 墓地の土地所有権|寺院所有形態
4 祭祀財産承継×登記|墓地・土地
5 遺骨・遺体の所有権|祭祀主宰者に属する
6 祭祀財産の所有権×処分権限|祭祀主宰者だけで判断可能
7 祭祀財産の特殊性|差押禁止

1 『祭祀供養物=系譜・祭具・墳墓』の内容|基本的事項

民法上『祭祀供養物』は相続とは別扱いとされています。
(別記事;リンクは末尾に表示)。
略して『祭祀財産』とも呼びます。
本記事では『祭祀供養物』の内容について説明します。
最初に基本的な部分をまとめます。

<祭祀供養物・内容|基本的事項>

あ 系譜

祖先からの血縁関係や系統関係を示した文書

い 祭具

祖先の祭祀・礼拝のために用いられるもの
例;仏像,位牌,霊位,仏壇,十字架

う 墳墓

ア 遺体を埋葬,遺骨(焼骨)を埋蔵するための設備
例;墓石・墓標,埋棺,霊屋
イ 埋葬・埋蔵された遺体・遺骨
※民法897条1項

2 墓地の土地所有権|親族所有形態

『墓地の土地所有権』が問題になることがあります。
まずは『家族で所有している』という状態の場合についてまとめます。

<墓地の土地所有権|親族所有形態>

あ 前提事情

(狭義の)墳墓が所在する土地を親族で所有していた
親族間での所有関係は曖昧≒共有の状態

い 解釈論

墳墓と一体の物と言える程度に密接不可分である範囲
→祭祀財産に含まれる
→祭祀主宰者が原則的に承継する
※民法897条
※広島高裁平成12年8月25日

3 墓地の土地所有権|寺院所有形態

墓地全体が寺院の所有・管理となっている場合の権利関係をまとめます。

<墓地の土地所有権|寺院所有形態>

あ 前提事情

墳墓が所在する土地は『墓地経営者』が管理している

い 墓地所有権

一般的には『墓地の経営者』が墓地の所有者である
例;宗教法人(寺院)・公益法人・地方公共団体
※墓地埋葬法10条参照

う 墓地使用権

墓園・寺院の墓地『使用権』
→祭祀財産に含まれる

墓地経営の法規制・許可制については別記事で説明しています。
詳しくはこちら|墓地・納骨・火葬場×法規制=許可制|許可基準・対象事業者

4 祭祀財産承継×登記|墓地・土地

墓地・土地の所有権が移転する場合,現実的に登記を要します。
登記申請に関する内容をまとめます。

<祭祀財産承継×登記|墓地・土地>

あ 基本的事情

分墓地は所有権移転登記をすることになる

い 登記申請・内容
登記原因 民法897条による承継
登記義務者 遺言執行者or相続人全員
登記権利者 祭祀承継者

※実務上の扱い
※『月報司法書士15年6月』日本司法書士会連合会p15〜

5 遺骨・遺体の所有権|祭祀主宰者に属する

『遺体・遺骨の所有権』が問題になることがあります。
変わっている解釈論ですが,通常,他の問題の前提として生じます。

<遺骨・遺体の所有権>

あ 死者の遺骨(焼骨)

墓地への埋蔵,供養のためにのみ行使可能
→祭祀主宰者に承継される
※民法897条準用
※最高裁平成元年7月18日

い 『遺体』

ア 原則
遺骨と同様に扱う方向性である
※裁判例複数
イ 例外=臓器移植法
臓器移植の対象となる死体の場合
→家族に管理権がある
※臓器移植法6条;『家族・遺族』

6 祭祀財産の所有権×処分権限|祭祀主宰者だけで判断可能

祭祀財産の所有権は祭祀主宰者にあります(前述)。
そうは言っても,処分権限に制限がある,という発想もあります。
しかし,解釈としては否定されています。

<祭祀財産の所有権×処分権限>

あ 解釈論

原則的に所有者は『祭祀財産』を自由に処分できる
公序良俗違反は除く

い 具体的状況

他の親族などが止める・返還を求める
→これらはできない
※民法90条
※広島高裁昭和26年10月31日

7 祭祀財産の特殊性|差押禁止

祭祀財産の特殊性として『差押禁止』というものがあります。
宗教・信仰と関連するので特殊・例外的な扱いとなっているのです。

<祭祀財産の特殊性|差押禁止>

祭祀に供された動産
→個人の礼拝・信仰の対象である
→差押が禁止されている
※民事執行法131条8号,9号
※国政徴収法75条1項7号