【遅刻の罰金・ペナルティ|1日の賃金の半分・1か月の10%までは設定可能】

1 遅刻へのペナルティの分類
2 ノーワークノーペイの原則
3 『減給』のルール設定は適法だが『上限』がある|減給の制裁
4 『減給の制裁』を超えると『賠償予定の禁止』に違反となる
5 『減給の制裁』の規定を設定・変更する場合は不利益変更禁止の原則に注意
6 遅刻のペナルティの設定の妥当性|労働マーケットが決める

1 遅刻へのペナルティの分類

『遅刻のペナルティ』のルールを導入している会社もあります。
ここで法律的な性格は3つに分類できます。

<遅刻へのペナルティ|法律的な性格の分類>

あ ノーワークノーペイ

『時刻時間分』の給与を差し引く(支給しない)→OK

い 減給・罰金

ルールで決めた金額を差し引く
ア 一定の限度内→『減給』=OKイ 一定の限度を超えた→『罰金』=NG

内容については順に説明します。

2 ノーワークノーペイの原則

遅刻や早退などの『ロスタイム』は『労働時間』に当たりません。
給与などの『賃金』支給の前提を欠きます。
就業規則で『不払い』というルールを規定しなくても『支給しない』のが原則です。

<遅刻×ノーワークノーペイの原則>

『労働の提供がなかった時間』に相当する賃金を支給しないことは『減給の制裁』に該当しない
※通達;昭和63年3月14日基発150号

『減給の制裁』というルールについては後述します。
なお,法律上『休暇・休業』の取得が強制されている制度でも『賃金支給』は強制されていません。
ノーワークノーペイの原則が当てはまるのです。
詳しくはこちら|育児休業(育休);給与の有無,給付金,不利益扱い禁止,間接差別
詳しくはこちら|職場の妊婦・母の保護|つわり休暇・軽易業務転換・降格の有効性|マタハラ判例

3 『減給』のルール設定は適法だが『上限』がある|減給の制裁

『実際のロスタイム』以上に『給与を減らす』という場合は『減給』にあたります。
まずは『就業規則における設定』が必要です。
さらに,上限が規定されています。

<『減給の制裁』の上限>

あ 減給の制裁の前提

就業規則で規定しておく

い 減給の上限額

次のどちらも超えてはいけない
ア 1回ごとの上限 平均賃金1日分の半額
イ 賃金支払期の合計の上限 賃金の総額の10分の1
※労働基準法91条

この中で使われる『平均賃金』については別に説明しています。
詳しくはこちら|平均賃金|計算方法・除外される賃金

4 『減給の制裁』を超えると『賠償予定の禁止』に違反となる

『減給の制裁』の上限を超えてペナルティを設定すると違法となります。
『労働契約の不履行』についての『違約金・損害賠償額の予定』に該当するのです。
※労働基準法16条
逆に言えば,『減給の制裁』の範囲内であれば,形式的に『違約金』ですが違法とはならない,ということです。

5 『減給の制裁』の規定を設定・変更する場合は不利益変更禁止の原則に注意

『減給の制裁』はプラス・マイナスの両方の側面があります。
就業規則で設定する『義務』はありません。
労働基準法の範囲内であれば,新たに設定する・変更する,という裁量があるのです。
この点,『従前の状態からの変化』については要注意です。
『従業員に不利益な方向』であれば『不利益変更禁止の原則』に違反する可能性があるのです。
詳しくはこちら|不利益変更禁止の原則は例外も多い・同一労働同一賃金は法規範ではない

6 遅刻のペナルティの設定の妥当性|労働マーケットが決める

『遅刻のペナルティ』については会社に裁量があります。
設定する/しない,どのような内容で設定するか,というようなことです。
この点,遅刻のペナルティはプラス・マイナスの効果があるので,一概・一律に『これが最適』という解はありません。

<遅刻のペナルティの影響>

あ プラス効果

ア 従業員が責任を持つようになるイ 『言い訳を考えぬく』という無用な作業を排除できる

い マイナス効果

ア ギスギスするイ 『成果・仕事内容』が評価されないという感覚を生じる →官僚化(社内ラッダイト)につながる
関連コンテンツ|事業の負けパターン|社内ラッダイト=プロフィット・イーター

この設定方法によって『生産性』に影響が出る,というよりも,労働マーケットの選択,という側面があるでしょう。
特定の設定方法・内容を批判するとか,単に模倣する,というのはナンセンスです。

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