1 育児休業|基本|一定の休暇が保障されている
2 育児休業|取得×男女|父母いずれも取得できる
3 育児休業×賃金|ノーワーク・ノーペイ
4 育児休業給付金
5 育児休業の事前の放棄は無効となる
6 育児休業取得による不利益取扱は禁止されている
7 育児休業取得×間接差別|昇進への影響|基本
8 育児休業×昇進|間接差別|適法性判断・具体例
9 育児休業;採用・雇用時の男女差別

1 育児休業|基本|一定の休暇が保障されている

労働者に子供が生まれた場合,育児のために退職せざるを得ない,ということを避ける制度があります。
『育児休業』と呼ばれる制度です。
一般には『育休』『育児休暇』と呼ばれることも多いです。

法律上,の規定の概要は次のとおりです。

<育児休業|基本>

あ 基本的事項

育児のために一定期間の休業ができる

い 育児休業期間|通常

子供が1歳になるまでの期間

う 育児休業期間|パパ・ママ育休プラス

出産後8週間以内に配偶者(お父さん)が休業した場合
→育児休業期間は1年2か月に延長される
※育児休業法5条,9条の2

就業規則でこれよりも従業員に有利な設定をすることは可能です。
『休業』ですから,育児休業明けに『復職する』ことが約束されます。

2 育児休業|取得×男女|父母いずれも取得できる

育児休業を取得できる者は『性別の指定』がありません。

<育児休業|取得×男女>

あ 基本的事項

育児休業は,男女ともに取得できる
つまり『父・母』で違いはない

い 条文|規定

条文上『子の育児(休業)』と規定されている
→男女の区別はない
※育児休業法5条

う バトンタッチ・リレー方式

父・母の両方が時期をずらして取得する方法も可能である

実際に,父が育児休業を取得する実例も見られます。

3 育児休業×賃金|ノーワーク・ノーペイ

育児休業の期間中は,ノーワーク・ノーペイ,が原則です。
法律上,雇用主には,育児休業中の労働者への賃金支払の義務は規定されていません。

もちろん,就業規則・賃金規程や労働契約で,一定の金額の手当を支給する制度を設定することは可能です。
財源を要するものなので,他に影響があることです。
他の労働者や役員への給与等や,株主への配当などです。

そこで,雇用主側としては,バランスを踏まえて政策的に考慮・判断するべき事項です。

4 育児休業給付金

育児休業中の生活の維持は社会的なケアがあります。

<育児休業給付金>

あ 社会的保護

育児休業者は『育児休業給付金』の支給を受けられる
休業期間中の現実的な労働者の生活の糧という趣旨である
※雇用保険法61条の4

い 給付金額|原則

支給金額=『従前の賃金』×40%
※雇用保険法61条の4第4項

う 給付金額|増額措置

『当分の間』は50%に増額されている
※雇用保険法附則12条

え 給付金額|一定期間増額措置

180日の期間に限定して67%に増額される
平成26年4月1日以降について適用される
※雇用保険法等の一部を改正する法律

お 申請手続|窓口

給付金の申請手続
→事業所の所在地を管轄する公共職業安定所
=ハローワーク

5 育児休業の事前の放棄は無効となる

一般的な民事的な法律では,私的自治が優先です。
法律のルールよりも,個別的な個人間(法人含む)の合意が優先,ということになっています。

しかし,育児休業の制度を含む労働法の多くは強行法規とされています。
つまり,個人・法人間で合意があっても,法律上の規定が優先,ということです。

育児休業を利用(取得)しないという合意があったとしても,法律上のルール=育児休業を利用できる,が優先,ということです。
結論的に,そのような合意は無効,ということです。

別の視点で考えると,採用・雇用の条件,あるいは審査対象として育児休業の取得の有無を用いることは,雇用機会均等法に違反する可能性もあります(後記)。

6 育児休業取得による不利益取扱は禁止されている

例えば,育児休業を取得した場合に,減給などの措置を取るという発想があります。
他の従業員との不公平の是正,負担の分担としては一定の合理性があります。
しかし,これは『不利益取扱い』として禁止されています。
不利益取扱いは復職時に問題となることが多いです。
これについては別に説明しています。
(別記事『育児休業×復職・配置変更|基本ルール』;リンクは末尾に表示)

現実的には,育児休業を女性(母)が取得するケースが多いです。
そのため,育児休業取得への不利益な扱いは,女性労働者の妊娠や出産に対する不利益として,雇用機会均等法に抵触する可能性もあります。
※雇用機会均等法9条,施行規則2条の2

7 育児休業取得×間接差別|昇進への影響|基本

育児休業の取得を理由とした不利益な取扱いは禁止されています(前述)。
また,男女,つまり性別を理由とした差別も禁止されています。
※雇用機会均等法6,9条
さらに,実質的・結果的に性別を理由としている,とみられる場合の差別も禁止されています。
※雇用機会均等法7条
これを間接差別と呼んでいます。

だからといって,性別,育児休業取得者などについて,一切差が生じてはいけないの,ということではありません。
このような結果の平等を貫くと,現実的・実質的には不平等,不公平,となってしまいます。

そこで,間接差別については,業務の性質,必要性,雇用管理上など,現実的な観点から合理的な理由があれば適法,とされています。
※雇用機会均等法7条

8 育児休業×昇進|間接差別|適法性判断・具体例

育児休業の取得によって昇進に影響が生じることは違法となる可能性があります(前述)。
ここでは具体例をいくつか紹介します。

<育児休業×昇進|間接差別|具体例|スキル低下>

あ 適法|具体例

育児休業の取得により,業務スキルが低下した
→結果的に,同期入社の別の従業員を優先的に昇進させた

い 注意|違法となるケース

育児休業へのペナルティが目的という場合
→違法となる

<間接差別|昇進|具体例|昇進条件>

あ 事例

会社として,昇進の条件を客観的なルールとして作成してある
一定の勤続年数,年齢,転勤経験などを条件としてある
育児休業を取得したためにこの条件を満たせなくなった
→昇進できない状況になった

い 適法性判断

実質的に合理的な理由があるかどうかで適法性を判断する
※雇用機会均等法7条

昇進のルールの設定内容は,形式的には性別による差別には該当しないでしょう。
しかし,実質的に出産,育児を行う女性に不利に働くとも言えます。
法律上は合理的な理由の有無により,違法性が判断されます。

<間接差別|昇進|具体例|違法判断>

あ 勤続年数・年齢

ア 規定|例
課長職への昇進条件=勤続15年,年齢37歳以下
イ 法的判断
大卒者が多い職場である場合
→実質的に育児休業を取得したことにより昇進が不可能となる
→違法となる

い 転勤経験

ア 規定|例
課長職への昇進条件=転勤経験を有すること
イ 法的判断
転勤経験が必須である
個別的な能力でカバーすることが否定されている
→違法となる
※平成18年厚生労働省告示第614号労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針『第34(2)』

昇進に関する間接差別の判断要素をまとめます。

<間接差別|昇進|適法性|判断要素>

ア 広域にわたり支店,支社が展開している
イ 上級職の業務遂行のためには,他の地域での勤務経験が必要である
ウ 転居を伴う転勤(人事ローテーション)が必要である

実際には,個別的な事業・業務内容から必要性を細かく判断する,ということになります。

9 育児休業;採用・雇用時の男女差別

<発想>

出産後に女性従業員が退職すると,職場として他の従業員にしわ寄せが生じます。
このような不合理を回避するために,採用面接で,出産後の勤続の意向や育児休業取得の意向を質問する。

一般的に,求職者への質問,採否の判断基準については,事情によっては違法となります。
別項目;採用審査における質問や健康診断;過去の活動,思想,感染の有無,精神疾患

採用・雇用の場面で,男女の差別は禁止されています。
※雇用機会均等法5条
正確には均等な機会を与え(る)ことが強制されています。

一方,企業側としても,事業による収益活動を効率化すること,従業員間の公平を図ること,は重要です。
そのため,採用・雇用における裁量・自由,ということは尊重されています(三菱樹脂事件)。
結局,採用の場面での質問事項,採否基準の適法性判断の枠組みは次のとおりにまとめられます。

<採用・雇用の場面での男女差別の適法性判断の枠組み>

あ 原則→適法(の傾向)
い 形式的に男女で扱いが異なる→違法(の傾向)

例;
・女性にだけ出産後の就業継続意思を質問する
・男性にだけ幹部候補となる意欲を聞く

う 形式的には男女均一だが,実質的に差別がある→個別的合理性の判断による

例;
・男女で質問内容は同一であるが,男女の一方についてのみ,返答内容を採否の判断要素とする

なお,実際に,採用後に,育児休業取得を事実上制限した場合,当然,違法となるでしょう。

<参考情報>

厚労省による解説(ホームページ等)