離婚の原因を作った相手方配偶者に慰謝料を請求しようと考えています。
相場はいくらくらいでしょうか。

1 離婚の要因に違法性がある場合,慰謝料が認められる
2 離婚原因慰謝料はリンクすることが多いが協議離婚はそうとは限らない
3 過失相殺の考え方が適用されるので離婚の要因のバランスが反映される
4 離婚の慰謝料相場は200〜500万円
5 特殊な事情があると離婚慰謝料は跳ね上がる
6 離婚の慰謝料ローンという金融商品もある

1 離婚の要因に違法性がある場合,慰謝料が認められる

代表弁護士三平聡史慰謝料というのは,精神的損害に対する損害賠償,のことです。
不法行為の一種です(民法709条,710条)。

これが成立する条件として違法性があります。
一定程度の強い行為にだけ慰謝料が発生します。
有責行為と呼んでいます。

分かりやすいものは,次のようなものです。

<慰謝料の原因(有責行為)の典型例>

・浮気(不貞行為)
・暴力(DV)

これ以外にも,夫婦の仲が悪くなった原因は多くのバリエーションがあります。
結局,慰謝料が発生するかどうかは程度問題となります。
一方的,かつ,常識の範囲(一般的な夫婦喧嘩の範囲)を超えているかどうか,が決め手となります。

2 離婚原因慰謝料はリンクすることが多いが協議離婚はそうとは限らない

離婚の際,慰謝料が認められることは多いです。
離婚原因の大半は違法性が高い行為です。
慰謝料が認められることが多いです。

一方,協議離婚の場合は,離婚原因は必要とされていません。
詳しくはこちら|離婚原因の意味・法的位置付け
慰謝料が生じない,ということもあります。

3 過失相殺の考え方が適用されるので離婚の要因のバランスが反映される

暴力不貞という明確な事情がない場合,夫婦双方に破綻の要因があるというのが一般です。
離婚の要因として不当な言動がそれぞれにある場合,慰謝料を打ち消し合うことになります。
過失相殺という考え方です(民法722条2項)。

実際に,夫婦双方の不当な行為が同等という場合は離婚が認めるが慰謝料はゼロということもあります。

4 離婚の慰謝料相場は200〜500万円

離婚の要因となる事情は非常に幅広くあります。
慰謝料額の判断に影響を与える事情と,ごく平均的な慰謝料額の相場を説明します。

(1)慰謝料額の判断要素

<離婚の慰謝料額の判断要素>

ア 離婚の要因の違法性,不当性の程度
イ 違法,不当な行為のバランス(前記『3』)
ウ 婚姻期間
 長い場合は,高額となる傾向です。
エ 資産,収入の状況
 加害者の資産,収入が大きいと,慰謝料も高額となる傾向です。
オ 年齢
 年齢が高いと慰謝料が高額となる傾向です。
カ 職業
 社会的地位がある,収入が高い職種だと慰謝料が高額となる傾向です。
キ 養育が必要な子供の数
 未成熟子と言います。
 未成熟子が多い場合,慰謝料が高額となる傾向です。

(2)慰謝料額の相場

<離婚の慰謝料の相場>

200万円〜500万円
これはボリュームゾーンです。

前提
離婚の要因が100%一方の配偶者にある
→過失相殺不要,という前提です。

あくまでも目安としてのものです。
大幅にこの相場から外れる場合もあります(後記『5』)。

なお,不貞行為の場合に夫婦ではない『不貞相手』が負う慰謝料相場はこれとは別です。
詳しくはこちら|不貞相手の慰謝料|理論|責任制限説|破綻後・既婚と知らない→責任なし
詳しくはこちら|不貞相手の慰謝料|相場=200〜300万円|減額要素

(3)離婚という性質の特殊性

上記『(1)判断要素』の趣旨として離婚後の生活を保障するというニュアンスが含まれることもあります。
本来,離婚後は扶養義務はありません。
その一方で,例外的に離婚後の扶養義務を認めることがあります。
ただ,その場合でも,形式としては慰謝料ではなく扶養的財産分与とするのが通常です。
<→別項目;扶養的財産分与;基準,算定方法,割引率,終期

逆に実務上離婚後の扶養財産分与では考慮せず,慰謝料で反映させる,ということもあるのです。
離婚時には,通常,財産分与慰謝料を同時に協議し,清算します。
そこで,理論上もあまり厳格に区別されない傾向があるのです。
混同傾向と呼ぶべき現象です。

また,マスコミで話題になるようなケースでは慰謝料協議離婚の条件が混同されがちです。
<→別項目;結婚債権評価額;算定式

いずれにしても見解の相違があると無用な紛争につながります。
そのために請求合意を書面にする場面ではより明確にした方が良いです。

5 特殊な事情があると離婚慰謝料は跳ね上がる

前記『4』の離婚慰謝料の相場は,あくまでも平均的なものです。
この範囲を逸脱することも生じます。

特殊事情による慰謝料の高額化が生じるケースの類型を説明します。

(1)交渉結果としての高額化

協議離婚の条件として高額で合意するケースです。
本来的には必ずしも慰謝料というものとはニュアンスが異なります。

<生じる要因>

一方配偶者(支払う側)に次のような要望が強い

あ 早期解決

 →時間を金で買ったという状況です。

い レピュテーションリスク

 →訴訟となると公表される,ということを回避する意欲です。

(2)裁判所の判断としての高額化

蓄積されている裁判例から抽出した基準と代表的なものを示します。

<特殊事情による離婚慰謝料の高額化>

あ 事情

・婚姻期間が長期(40年以上)
・夫の収入が高い
・夫が妻以外の女性(愛人など)と交際→長期間同居→出産→認知
・妻が高齢→再婚可能性に乏しい
 本来的に扶養的財産分与として反映されるべきだが混同傾向があるのです(上記『4』)。

い 慰謝料額

1000万円〜1500万円
※次の裁判例に現れたものです。

<離婚慰謝料高額化;裁判例>

あ 裁判例1

平成元年11月22日 東京高裁 昭62(ネ)2794号 離婚請求控訴事件
・婚姻生活48年
・夫婦間に子供なし
・夫=複数の会社経営
・夫は妻以外の女性と交際→同居36年→子供2人出産→認知済
→慰謝料1500万円

い 裁判例2

※昭和63年 6月 7日 東京高裁 昭62(ネ)408号 離婚等請求控訴事件
・婚姻生活55年
・妻=専業主婦
・別居期間=17年
・夫=会社経営者(社長)
・夫は妻以外の女性と交際→同居17年→子供出産→認知済
→慰謝料1000万円

6 離婚の慰謝料ローンという金融商品もある

離婚の慰謝料という用途に特化したローンがあります。
参考として示しておきます。

<離婚の慰謝料を目的としたローン;例>

大垣共立銀行の離婚関連専用ローンRe

条文

[民法]
(不法行為による損害賠償)
第七百九条  故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
(財産以外の損害の賠償)
第七百十条  他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

(損害賠償の方法及び過失相殺)
第七百二十二条  第四百十七条の規定は、不法行為による損害賠償について準用する。
2  被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。

判例・参考情報

(判例1)
[平成元年11月22日 東京高裁 昭62(ネ)2794号 離婚請求控訴事件]
 三 被控訴人の慰籍料請求について
 控訴人は、昭和24年8月ころから丙野月子と同棲し不貞行為を継続しているものであり、しかも被控訴人と別居するに際して文京区○○町所在の建物(当時の価格24万円)を与えたほかには40年間何らの経済的給付をせずに今日に至つたのであつて、被控訴人を悪意で遺棄したものというべきであるから、控訴人には民法第709条に基づき被控訴人が受けた精神的損害を賠償する義務がある。
 なお、被控訴人は控訴人の訴訟活動により名誉を毀損され、侮辱を受けたと主張するけれども、控訴人の訴訟活動が、不法行為を構成しないものと認むべきものであることは前記のとおりである。
 そこで慰籍料の金額について検討するに、被控訴人は破綻の原因を作出していないのに自己の意思に反して強制的に離婚させられ、控訴人が不貞の相手方たる丙野月子と法律上の婚姻ができる状態になることは被控訴人に多大の精神的苦痛を与えることは明らかであり、控訴人が丙野月子と生活して2人の子供も生まれ、一家によつて会社を経営し、相当程度の生活を営んでいることは前記のとおりであり、一方、被控訴人は実兄の家に身を寄せ、今日まで単身生活を送つてきたこと、その他一切の事情を斟酌するならば、被控訴人の精神的苦痛(控訴人が破綻原因を作つてから本件慰籍料請求反訴状が控訴人に送達された平成元年7月28日まで)を慰籍するには1500万円をもつて相当というべきであり、控訴人は被控訴人に対し右金員及びこれに対する不法行為の後である平成元年7月29日から完済に至るまで民法所定年5分の割合による遅延損害金を支払う義務がある。

(判例2)
[昭和63年 6月 7日 東京高裁 昭62(ネ)408号 離婚等請求控訴事件]
 「右1、2の認定事実、特にその婚姻歴、その間の第一審被告太郎の不貞関係、別居期間、婚姻破綻の原因は専ら第一審被告太郎側にあること、別居後の第一審原告に対する婚姻費用分担の実情、右分担額がその間の第一審被告太郎の収入に比し極めて低額であり、昭和五九年一月からはその支払いすら停止されたこと、いずれにしても第一審原告は見るべき資産とて形成できず、今後の住居すら安定しておらず、これまででもその子らの援助でどうやら過ごしてきたこと、さらに後記の財産分与の額等諸般の事情を考慮すると、第一審被告太郎は第一審原告に対し、離婚にともなう慰謝料として金一〇〇〇万円を支払うべきである。」