1 合意がない場合の法定借家の期間
2 期間の定めなしとなる具体的状況
3 合意による定期借家の設定
4 借地開始時における将来の定期借家の設定の例

1 合意がない場合の法定借家の期間

建物譲渡特約付借地では借地人や建物の賃借人の請求により法定借家権が発生することがあります。
詳しくはこちら|建物譲渡特約付借地における法定借家権発生と賃料の決定(協議・裁判)
本記事では,法定借家の期間について説明します。
まず,法定借家の期間について当事者で合意がないケースでの扱いをまとめます。

<合意がない場合の法定借家の期間>

あ 前提事情

法定借家について当事者間に合意がない
借地の残存期間の有無により『い・う』のいずれかとなる

い 借地の残存期間の流用

借地人が法定借家権発生の請求をした時点において
借地の残存期間がある場合
→その残存期間が法定借家の期間となる

う 期間の定めなし

『い』に該当しない場合(後記※1)
→法定借家は期間の定めのない賃貸借となる
→ 建物賃貸人(地主)は解約申入ができる
→正当事由があれば契約が終了する
一般的には明渡料が必要となる
※民法617条,借地借家法28条
詳しくはこちら|建物賃貸借終了の正当事由の内容|基本|必要な場面・各要素の比重
※借地借家法24条2項

2 期間の定めなしとなる具体的状況

法定借家の期間の定めがないという扱いになることがあります。
この扱いとなる具体的な状況をまとめます。

<期間の定めなしとなる具体的状況(※1)>

あ 借地満了時の請求

借地期間満了時において
借地人が法定借家権発生の請求をした
=借地期間満了と建物所有権移転が同時となる

い 建物賃借人による請求

建物の賃借人が法定借家権発生の請求をした

3 合意による定期借家の設定

法定借家の内容を普通借家ではなく,定期借家とする方法もあります。

<合意による定期借家の設定>

あ 合意による定期借家の設定

当事者の合意によって
法定借家の内容を定期借家とすることもできる
※借地借家法24条3項,38条

い 定期借家(概要)

ア 借家の期間を定める+更新がないものとする
イ 賃料の改定を制限する特約の制限が適用されない
借地借家法32条の適用の排除
詳しくはこちら|定期借家の基本|更新なし=確実に建物が戻る・賃料相場が低め・終了通知義務
※借地借家法24条3項

4 借地開始時における将来の定期借家の設定の例

将来発生する法定借家の内容が定期借家だと建物や敷地の活用の制限が小さく抑えられます。経済的なコスト・リスクを小さくすることになります。
そこで,借地の開始の時点から,将来の法定借家を定期借家にしておくことは有用です。
具体的な設定の例を紹介します。

<借地開始時における将来の定期借家の設定の例>

あ 合意の内容

地主と借地人において
始期付定期借家契約を予め交わしておく
始期(効力発生時)=将来の建物譲渡時

い 定期借家の内容

法定更新がないことを明記する
期間の下限の制限はない

う 具体的な活用の例

定期借家の期間を6か月と設定してある
借地開始の30年後に建物譲渡が行われた
→トータル30年6か月後の時点において
土地・建物とも地主に返還される
※澤野順彦『実務解説借地借家法』青林書院p119