1 家事審判に関する特別抗告と許可抗告
2 特別抗告ができる範囲
3 特別抗告の申立手続と期限
4 許可抗告ができる範囲
5 許可抗告の申立手続と期限

1 家事審判に関する特別抗告と許可抗告

相続や夫婦に関する多くの問題を家庭裁判所が扱います。家庭裁判所の判断としては,通常,最初は,審判(第1審)を出し,これに対して当事者は,不服があれば即時抗告を行い,抗告審(第2審)に移ります。
詳しくはこちら|家事審判に対する即時抗告(不服申立・第2審)
抗告審の結論(決定)に対する不服申立の手続もあります。それは特別抗告許可抗告です。第3審ということになります。第3審に進むことができる状況はとても限定的です。
本記事では,特別抗告許可抗告の基本的なことを説明します。

2 特別抗告ができる範囲

最初に,特別抗告ができるのはどのような状況か,ということを整理します。法律上の規定は少し分かりにくいですが,よく使うのは,家庭裁判所が審判をして,高等裁判所が即時抗告についての決定をした,という状況です。3回目の審理を求める,という状況です。
第2審に不服があれば何でも特別抗告ができるわけではありません。高等裁判所の決定内容に,憲法の違反がある場合に限られています。現実的に特別抗告によって決定を覆す作戦が適している,という状況はあまりありません。

特別抗告ができる範囲

あ 対象となる裁判

家庭裁判所の審判で不服を申し立てることができないもの(及び)
高等裁判所の家事審判事件についての決定

い 不服の範囲(理由)

裁判に憲法の解釈の誤りがあることその他憲法の違反があることを理由とするときに,最高裁判所に特別抗告をすることができる
※家事事件手続法94条1項

3 特別抗告の申立手続と期限

特別抗告を申し立てる手続について簡単にまとめておきます。
まず,抗告状を提出します。期限は,決定書が届いてから5日間だけ,ととても短く切られています。ただし,抗告状に理由(不服の内容)を詳しく記載する必要はありません。
裁判所は,抗告状を受け取ったら受理したということを示す抗告提起通知書を当事者に送達します。そして,抗告の理由(抗告理由書)は,抗告提起通知書を受領してから14日以内に提出する必要があります。

特別抗告の申立手続と期限

あ 抗告状

ア 提出 特別抗告をする場合には,原裁判所に抗告状を提出する
※家事事件手続96条1項,87条1項
イ 期限(期間) (特別抗告をする者が裁判の告知を受ける者である場合)
提出期間は,裁判の告知を受けた日から5日の不変期間内である
※家事事件手続96条2項,民事訴訟法336条2項

い 抗告理由書

ア 提出 (抗告状に抗告理由の記載がない場合)
抗告人は,抗告理由書を提出しなければならない
イ 期限(期間) 抗告理由書の提出期間は,抗告人が抗告提起通知書の送達を受けた日から14日である
※家事事件手続法96条2項,家事事件手続規則63条,民事訴訟法315条
ウ 期限経過の扱い 抗告理由書が期間内に提出されない場合には,原裁判所は特別抗告を却下する
※家事事件手続法96条2項,民事訴訟法316条1項

4 許可抗告ができる範囲

家事審判の第3審には,特別抗告のほかに,許可抗告があります。
対象となる裁判について,細かい規定がありますが,主に家事審判(第1審)への即時抗告の決定(第2審)が対象となります。
そして,許可抗告の理由とすることができるのは,法令の解釈に関する重要な事項を含むものであり,その典型例は最高裁の判例に反するというものです。ただ,判例違反に限定されるわけではありません。証拠の評価方法や経験則違反(事実認定)であっても,他の案件へ与える影響が大きいならば,法令の解釈に関する重要な事項を含むといえることもあります。
ただ,全体としては(統計的には)許可抗告によって原審の決定が変更されるということはあまりありません。

許可抗告ができる範囲

あ 対象となる裁判

高等裁判所の家事審判事件についての決定であること
許可抗告の申立の許否決定ではないこと
その決定が家庭裁判所の審判であるとした場合に即時抗告をすることができるものであること
(以上のすべての要件を充足するもの)

い 不服の範囲(理由)

最高裁判所の判例(これがない場合にあっては,大審院又は上告裁判所若しくは抗告裁判所である高等裁判所の判例)と相反する判断がある場合その他の法令の解釈に関する重要な事項を含むと認められる場合(には原審(高等裁判所)は抗告を許可する)
※家事事件手続法97条2項

う 「法令の解釈に関する重要な事項を含む」の解釈(概要)

「法令の解釈に関する重要な事項を含む」は,(一般的な訴訟における)上告受理申立の理由にもなっている
証拠の評価方法や経験則違反がこれにあたることもある
詳しくはこちら|民事訴訟の上告受理申立の理由(上告受理の要件)

5 許可抗告の申立手続と期限

許可抗告を申し立てる手続について簡単にまとめておきます。
まず,抗告許可申立書を提出します。要するに,抗告を許可してくださいという要求です。
申立書の提出期限は,決定書が届いてから5日間だけ,ととても短く切られています。ただし,申立書に理由(不服の内容)を詳しく記載する必要はありません。
裁判所は,申立書を受け取ったら受理したということを示す抗告許可申立通知書を当事者に送達します。そして,抗告の理由(抗告理由書)は,抗告許可申立通知書を受領してから14日以内に提出する必要があります。

許可抗告の申立手続と期限

あ 申立書

ア 提出 許可抗告の申立は,原裁判所に申立書を提出して行う
※家事事件手続98条1項,87条1項
イ 期限(期間) (申立人が裁判の告知を受ける者である場合)
申立期間は,告知を受けたから5日の不変期間内である
※家事事件手続法98条2項,民事訴訟法336条2項

い 理由書

ア 提出 (申立書に理由の記載がない場合)
抗告人は,理由書を提出しなければならない
イ 期限(期間) 理由書の提出期間は,抗告人が抗告許可申立通知書の送達を受けた日から14日である
※家事事件手続規則69条,63条
ウ 期限経過の扱い 理由書が期間内に提出されない場合には,原裁判所は抗告不許可決定を行う
※家事事件手続法96条2項,民事訴訟法316条1項

本記事では,家事審判に関する特別抗告・許可抗告の基本的なことを説明しました。
実際には,個別的な事情によって,法的判断や最適な対応方法が違ってきます。
実際に家庭裁判所の手続(調停や審判)を検討している方,既に行っていて進め方にお悩みの方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。