1 成年被後見人×婚姻・協議離婚|後見人の関与は不要
2 成年被後見人×離婚|調停
3 成年被後見人×離婚|審判
4 成年被後見人×離婚|訴訟
5 成年被後見人×婚姻費用・養育費・財産分与|後見人の関与が必要

1 成年被後見人×婚姻・協議離婚|後見人の関与は不要

成年被後見人は判断能力が低いはずです。
一般的な契約・取引は後見人が『代理して行う』必要があります。
しかし『婚姻・離婚』については特別扱いがあります。

<成年被後見人×婚姻・協議離婚>

婚姻・離婚ともに『単独の判断』ができる
=後見人の同意は必要ではない
財産の処分は含まれない
※民法738条,764条

これらは『身分』に変動を与える『身分行為』です。
第三者の判断による変動は好ましくありません。
そこで可能な限り『本人の意思・意向』が尊重されるのです。

2 成年被後見人×離婚|調停

離婚には『協議離婚』以外にも裁判所が関与する方式があります。
これらについても成年被後見人が単独で行うことが認められています。
まずは離婚に関する『調停』についてまとめます。

<成年被後見人×離婚|調停>

あ 基本事項

単独で手続行為能力が認められる

い 具体的内容

監護権者指定・親権者指定も含む
『財産上の給付』に関するものは除外される
※家事事件手続法252条1項2号,4号,5号

3 成年被後見人×離婚|審判

『審判』についても『調停』と同様です。

<成年被後見人×離婚|審判>

内容は『調停』と同じ
※家事事件手続法151条,118条

4 成年被後見人×離婚|訴訟

成年被後見人の離婚訴訟については『調停・審判』と多少異なります。

<成年被後見人×離婚|訴訟>

あ 基本事項

単独で手続行為能力が認められる

い 裁判所による代理人選任

裁判所が『訴訟代理人として弁護士』を選任できる

う 財産上の給付

『財産上の給付』の除外規定はない
※人事訴訟法13条

5 成年被後見人×婚姻費用・養育費・財産分与|後見人の関与が必要

離婚や夫婦関係に付随して,財産的な条件を決めることがあります。
これらについては原則的に『成年被後見人』が単独で判断できません。
財産に関わる事項の判断について,次にまとめます。

<成年被後見人×婚姻費用・養育費・財産分与>

あ 原則

『財産上の給付を求めるもの』に該当するもの
→後見人が代理して行う必要あり
※家事事件手続法252条1項,151条

い 例外=離婚訴訟

離婚訴訟では『成年被後見人』に訴訟能力が認められている
個別的な事情により『訴訟代理人』を裁判所が選任する(前述)