1 香典は誰がもらえるのか
2 香典の趣旨・法的性質と帰属
3 香典の剰余部分の帰属
4 税務上の葬儀の収支(葬儀費用と香典)の扱い

1 香典は誰がもらえるのか

葬儀(葬式)の時に,香典を渡すことが行われます。この点,相続人の間で,香典を誰がもらうのかということで対立することがあります。本記事では,香典は誰に帰属するのか,また,税務上どのような扱いになるのか,ということを説明します。
なお通常,香典は葬儀費用とセットで問題になります。葬儀費用を誰が負担するのか,という問題については別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|葬儀費用は誰が負担するのか(喪主・相続人・相続財産・慣習説)

2 香典の趣旨・法的性質と帰属

香典の受け渡しは当たり前のことになっていますが,趣旨としては,葬儀費用を多くの参加者で分担(負担)するというものです。
法的性質は,葬儀費用を負担する喪主(葬儀の主宰者)に対して贈与する,という扱いになります。

香典の趣旨・法的性質と帰属

あ 香典の趣旨

香典は,葬儀費用の一部を負担する趣旨で渡されるものである

い 葬儀費用の負担者との関係(参考)

葬儀費用の負担者にはいくつかの見解があるが,喪主(葬儀の主宰者)が負担するという見解が一般的である
詳しくはこちら|葬儀費用は誰が負担するのか(喪主・相続人・相続財産・慣習説)
香典の趣旨(あ)は,この見解と整合する

う 香典の法的性質・帰属

香典は,葬儀主宰者(喪主)に対する贈与である(葬儀主宰者に帰属する)
相続財産になるわけではない
※広島高裁平成3年9月30日

3 香典の剰余部分の帰属

実際には,香典の総額が葬儀費用は一致せず,どちらかが多いことになります。葬儀費用よりも香典(の総額)の方が大きい場合,喪主は,葬儀費用を支払っても手元に金銭が残ることになります。
この場合,葬儀費用の分担という香典の趣旨からは外れるのですが,贈与である以上,余ったとしても贈与を受けた人の金銭である,という結論になります。もちろん法要など,葬儀に関係する費用にあてることが自然ですが,他の用途で使うことも自由です。

香典の剰余部分の帰属

あ 帰属

葬儀費用よりも香典が多い場合(=剰余が出た場合)
香典の剰余部分も葬儀主宰者に帰属する
他者に分配する必要はない
使途は,葬儀主宰者の裁量によって決定できる

い 使途の典型例

ア 今後の法事等の祭祀費用に充当するイ 福祉団体に寄付する ※広島高裁平成3年9月30日
※多数説
※二宮周平『家族法』新世社p313
※松原正明『相続法2』日本加除出版p303〜308
※自由法曹団『くらしの法律相談ガイドブック』旬報社p178

4 税務上の葬儀の収支(葬儀費用と香典)の扱い

以上のように,香典は,葬儀費用にあてる,という趣旨のものです。たとえば100万円をもらって,それを葬儀費用にあてたとすれば,税務上はノーカウントになるように思えます。しかしそうではありません。
まず,もらった香典100万円は非課税です。支出した葬儀費用100万円は(相続税の計算上),遺産総額から控除できます。税金がマイナスする効果は発生するけれど,税金がかかる(プラスになる)効果は発生しない結論になっています。

税務上の葬儀の収支(葬儀費用と香典)の扱い

あ 収入(香典・弔慰金)

香典・弔慰金として得た金銭について
贈与税・相続税・所得税のすべてが非課税とされている
※相続税法基本通達21の3−9
※所得税基本通達9−23

い 支出

ア 葬儀費用 葬儀費用としての支出(負担)について
相続税算定において遺産総額から控除できる
イ 香典返し費用 香典返しのための支出(負担)について
葬儀費用として相続税から控除することはできない

う 参考サイト

外部サイト|タックスアンサー|贈与税がかからない場合
外部サイト|タックスアンサー|相続財産から控除できる葬式費用

本記事では,香典は誰がもらえるのか,ということと,香典や葬儀費用の税務上の扱いについて説明しました。
実際には,個別的な事情によって法的判断や最適な対応方法は違ってきます。
実際に相続や遺産分割に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。