労災の対象になる病気はどこで決まるのか|労働基準法施行規則別表第一の二
1 労災の対象になる病気はどこで決まるのか|労働基準法施行規則別表第一の二
仕事が原因で病気になったとき、それが労災の対象になるのかどうかは、労働基準法施行規則の別表第一の二という一覧で決まります。腰痛やじん肺、化学物質による疾患、感染症、がん、そして働きすぎによる脳・心臓疾患や精神障害まで、11の類型に分けて並べられています。
この一覧については、向きの違う二つの誤解が生まれやすいところです。一つは、一覧に名前が載っていればそれで労災が下りる、という読み方です。もう一つは、一覧に名前が無ければ対象外だ、という読み方です。どちらもそのとおりではありません。載っていることの意味は業務起因性が推定されるところまでですし、載っていない病気にも受け皿が用意されています。
この記事は、労災の対象になる病気の範囲がどの条文で決まっているのか、その一覧がどういう構造を持っているのかを説明します。なお「過労死等」という言葉そのものの定義については、別の記事で説明しています。
2 別表第一の二に並んでいる11の類型
下の表は、別表第一の二が並べている11の号を、号の順に一覧にしたものです。左が号、右がその号が挙げている疾病です。
この表は各号の柱書を短く言い換えたもので、各行の根拠はこの記事の本文にあります。2号・3号・4号・6号・7号には、この下にさらに細かい項目が並んでいます。自分の病気がどの号に当たるか、当たったとして労災と認められるかは、この表だけでは決まりません。
<別表第一の二に並んでいる11の類型>
別表第一の二その号が挙げている疾病1号業務上の負傷に起因する疾病2号物理的因子による疾病3号身体に過度の負担のかかる作業態様に起因する疾病4号化学物質等による疾病5号粉じんを飛散する場所における業務によるじん肺症・じん肺合併症6号細菌、ウイルス等の病原体による疾病7号がん原性物質・がん原性因子・がん原性工程における業務による疾病8号長期間にわたる長時間の業務その他血管病変等を著しく増悪させる業務による脳・心臓疾患9号心理的に過度の負担を与える事象を伴う業務による精神及び行動の障害10号前各号のほか、厚生労働大臣が指定する疾病11号その他、業務に起因することが明らかな疾病
3 労災の対象は「業務上の」病気で、その範囲は労働基準法の側で決まっている
労災保険の給付は、何にでも出るわけではありません。労働者災害補償保険法(以下「労災保険法」といいます)7条1項が、保険給付を種類ごとに号に分けて並べていて、その1号が業務災害に関する保険給付です。「労働者の業務上の負傷、疾病、障害又は死亡」を業務災害と呼ぶ、という書き方になっています。同じ項の3号が通勤災害に関する保険給付で、こちらは通勤による負傷・疾病などを指します。
では、その「業務上の疾病」とは何を指すのか。労災保険法には、その範囲を定めた規定がありません。範囲は労働基準法の側で決まっていて、労災保険法はそれを借りてくる形になっています。それが12条の8第2項です。船員法の条番号の列挙が本文の半分を占めていて読みにくいのですが、要は、業務災害についての保険給付は、労働基準法が定める災害補償の事由が生じたときに行われる、ということです。
その労働基準法の側の出発点が75条です。1項が、業務上負傷し、または疾病にかかった場合の療養補償を使用者の義務として定め、2項が「業務上の疾病及び療養の範囲は、厚生労働省令で定める」として、範囲の決め方を省令に預けています。
労働者災害補償保険法7条1項1号の条文
一 労働者の業務上の負傷、疾病、障害又は死亡(以下「業務災害」という。)に関する保険給付
※労働者災害補償保険法7条1項1号
労働者災害補償保険法12条の8第2項の条文
前項の保険給付(傷病補償年金及び介護補償給付を除く。)は、労働基準法第七十五条から第七十七条まで、第七十九条及び第八十条に規定する災害補償の事由又は船員法(昭和二十二年法律第百号)第八十九条第一項、第九十一条第一項、第九十二条本文、第九十三条及び第九十四条に規定する災害補償の事由(同法第九十一条第一項にあつては、労働基準法第七十六条第一項に規定する災害補償の事由に相当する部分に限る。)が生じた場合に、補償を受けるべき労働者若しくは遺族又は葬祭を行う者に対し、その請求に基づいて行う。
※労働者災害補償保険法12条の8第2項
労働基準法75条の条文
労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかつた場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない。
2 前項に規定する業務上の疾病及び療養の範囲は、厚生労働省令で定める。
※労働基準法75条
4 範囲を決めているのは労働基準法施行規則の別表第一の二である
労働基準法75条2項が省令に預けた「業務上の疾病及び療養の範囲」を受けているのが、労働基準法施行規則35条です。ひとことで、業務上の疾病は「別表第一の二に掲げる疾病とする」と定めています。労災の対象になる病気は、ここから先、この別表第一の二という一覧で決まります。
では、なぜ一覧という形が採られているのか。事故によるけがと違って、事故によらない病気では、その病気の原因が業務にあるのかどうか——業務起因性があるかどうか——が主に問われます。そして、その判定には専門的な医学的知識が要ることが多いとされています。そこで、業務に起因して発生する可能性が高い疾病をあらかじめ類型として並べておくことで、迅速で定型的な判定ができるようにした、と説明されています。
労働基準法施行規則35条の条文
法第七十五条第二項の規定による業務上の疾病は、別表第一の二に掲げる疾病とする。
※労働基準法施行規則35条
事故によらない病気では業務起因性の有無が主に問われ、その判定には医学的知識が要る
事故によらない業務上の疾病(いわゆる「職業病」等)については,事故の発生が業務遂行中であったか否か(業務遂行性)が問題となる事故性傷病とは異なり,疾病の原因が業務にあるか(疾病が業務に起因したものか)という業務起因性の有無が主として問題となる59)。
この「業務上の疾病」の業務起因性の判定には専門的な医学的知識を必要とすることが多い。
※水町勇一郎著『詳解 労働法 第4版』東京大学出版会2025年 9月p882
業務上の疾病の範囲は省令に委ねられ、別表第一の二に類型的に列挙されている
そこで労基法は,その迅速で定型的な判定を可能とするため,業務上の疾病の範囲を厚生労働省令で定めることとし(75条2項),これを受けて労基法施行規則は,別表第1の2において,医学的にみて業務に起因して発生する可能性が高い疾病を有害因子と業務の種類ごとに類型的に列挙している(労基則35条)。
※水町勇一郎著『詳解 労働法 第4版』東京大学出版会2025年 9月p882
5 1号から7号は、有害因子と業務の種類ごとに並んでいる
別表第一の二の1号から7号までは、病名から引く形ではなく、病気の原因になる有害因子と業務の種類ごとに並んでいます。業務上のけがから生じた病気、物理的因子、体に過度の負担のかかる作業のしかた、化学物質、粉じん、細菌やウイルスなどの病原体、発がん性のある物質や工程、という順です。
次に引くのは、この7つの号の柱書だけです。2号・3号・4号・6号・7号には、柱書の下にさらに細かい項目が並んでいて、そこで具体的な業務と病気の組み合わせが挙げられています。
続けて、同じ一覧を①から⑪の番号で整理した文献を引きます。番号は別表の号の順に対応していて、③から⑦がここで扱っている号にあたります。文献のほうは、それぞれの号にどんな病気が入るのかを例で示しています。⑧と⑨は働きすぎによる病気、⑩と⑪は一覧の受け皿にあたるもので、いずれも後述します。
別表第一の二 1号から7号までの柱書
業務上の負傷に起因する疾病
※労働基準法施行規則別表第一の二第一号
物理的因子による次に掲げる疾病
※労働基準法施行規則別表第一の二第二号
身体に過度の負担のかかる作業態様に起因する次に掲げる疾病
※労働基準法施行規則別表第一の二第三号
化学物質等による次に掲げる疾病
※労働基準法施行規則別表第一の二第四号
粉じんを飛散する場所における業務によるじん肺症又はじん肺法(昭和三十五年法律第三十号)に規定するじん肺と合併したじん肺法施行規則(昭和三十五年労働省令第六号)第一条各号に掲げる疾病
※労働基準法施行規則別表第一の二第五号
細菌、ウイルス等の病原体による次に掲げる疾病
※労働基準法施行規則別表第一の二第六号
がん原性物質若しくはがん原性因子又はがん原性工程における業務による次に掲げる疾病
※労働基準法施行規則別表第一の二第七号
別表第一の二に列挙された疾病の整理(③身体への負担から⑪その他まで)
③身体に過度の負担のかかる作業態様に起因する一定の疾病(例えば腰部に過度の負担のかかる業務による腰痛〔非災害性腰痛〕,電子計算機への反復入力等上肢に過度の負担のかかる業務による腕・手指等の運動器障害)
④化学物質等による一定の疾病(抗生物質等にさらされる業務における呼吸器疾患,石綿にさらされる業務による良性石綿胸水・びまん性胸膜肥厚)62)
⑤粉じんを飛散する場所における業務によるじん肺症・じん肺合併症
⑥細菌,ウイルス等の病原体による一定の疾病(例えば患者の診療・看護等病原体を取り扱う業務による伝染性疾患,屋外業務による恙虫病)
⑦がん原性物質・因子またはがん原性工程における業務による一定の疾病(例えばベンジジンにさらされる業務による尿路系腫瘍,石綿にさらされる業務による肺がん・中皮腫,ジクロロメタンにさらされる業務による胆管がん)
⑧長期間にわたる長時間の業務等による脳・心臓疾患(⇨(ii))
⑨心理的に過度の負担を与える事象を伴う業務による精神障害(⇨889頁(iii))
⑩以上のほか,厚生労働大臣の指定する疾病(例えば超硬合金の粉じんを飛散する場所における業務による気管支肺疾患)
⑪その他業務に起因することの明らかな疾病
※水町勇一郎著『詳解 労働法 第4版』東京大学出版会2025年 9月p883
6 働きすぎによる病気は、別表第一の二の8号と9号に入っている
ここまで見てきた1号から7号までは、有害因子や作業のしかたが原因になる、いわゆる職業病の類型です。これに続く8号と9号が、働きすぎによる病気にあたります。脳・心臓疾患を挙げた8号と、精神障害を挙げた9号です。
どちらも2010(平成22)年の改正で加わったもので、それ以前は一覧に載っていませんでした。順に見ていきます。
なお、「過労死等」という言葉そのものの定義は、過労死等防止対策推進法という別の法律が置いています。その定義については、別の記事で説明しています。
(1)「過労死」と呼ばれてきたもの——脳・心臓疾患は8号
働きすぎが原因で脳や心臓の病気になった場合は、8号に当たります。脳出血、くも膜下出血、脳梗塞、高血圧性脳症、心筋梗塞、狭心症、心停止、重篤な心不全、大動脈解離が並んでいます。「過労死」という言葉は、このうち亡くなった場合を指す呼び方として使われてきました。
次に条文を引き、続けて、この8号が加わった経緯を述べた文献を引きます。文献の側は2010年改正当時の条文を括弧の中に引いているため、末尾が「解離性大動脈瘤」となっていて、現行の条文(「重篤な心不全若しくは大動脈解離」)とは異なります。現行の文言は、条文の引用のほうです。
労働基準法施行規則別表第一の二第八号の規定
長期間にわたる長時間の業務その他血管病変等を著しく増悪させる業務による脳出血、くも膜下出血、脳梗塞、高血圧性脳症、心筋梗塞、狭心症、心停止(心臓性突然死を含む。)、重篤な心不全若しくは大動脈解離又はこれらの疾病に付随する疾病
※労働基準法施行規則別表第一の二第八号
脳・心臓疾患は2010年の改正で別表8号に加えられた(それ以前は11号で判断)
この脳・心臓疾患の「業務上」認定については,従来は,労基則別表第1の2の職業病リストに列挙されていなかったため,「その他業務に起因することの明らかな疾病」(⇨⑪)に該当することを立証することで判断されてきた。
しかし,過重労働による脳・心臓疾患(死亡した場合「過労死」と呼ばれる)が社会的に深刻な問題となり,その行政や司法の判断も蓄積してきたことを受けて,2010(平成22)年の同別表の改正により,過重負荷による脳・心臓疾患(「長期間にわたる長時間の業務その他血管病変等を著しく増悪させる業務による脳出血,くも膜下出血,脳梗塞,高血圧性脳症,心筋梗塞,狭心症,心停止(心臓性突然死を含む)若しくは解離性大動脈瘤又はこれらの疾病に付随する疾病」)が列挙疾病として追加されるに至った(同別表8号)。
※水町勇一郎著『詳解 労働法 第4版』東京大学出版会2025年 9月p884
(2)「過労自死」と呼ばれてきたもの——精神障害は9号
仕事による強い精神的な負担でうつ病などの精神障害になった場合は、9号に当たります。条文は「人の生命にかかわる事故への遭遇その他心理的に過度の負担を与える事象を伴う業務による精神及び行動の障害」という書き方で、病名を並べてはいません。「過労自死」「過労自殺」は、このうち自ら命を絶った場合を指す呼び方です。
8号と同じく、この9号も2010年の改正で加わりました。
労働基準法施行規則別表第一の二第九号の規定
人の生命にかかわる事故への遭遇その他心理的に過度の負担を与える事象を伴う業務による精神及び行動の障害又はこれに付随する疾病
※労働基準法施行規則別表第一の二第九号
精神障害も2010年の改正で別表9号に加えられた
これに対し,いわゆる「過労自殺」や「メンタルヘルス」問題が社会的に顕在化・深刻化し,その行政や司法の判断も蓄積してきたことを受けて,2010(平成22)年の同別表改正により,過重負荷による脳・心臓疾患(⇨884頁(ii))と並んで,過度の心理的負荷を与える業務による精神障害(「人の生命にかかわる事故への遭遇その他心理的に過度の負担を与える事象を伴う業務による精神及び行動の障害又はこれに付随する疾病」)が列挙疾病として追加されるに至った(同別表9号)。
※水町勇一郎著『詳解 労働法 第4版』東京大学出版会2025年 9月p890
7 一覧に載っていることの意味は、業務起因性が推定されることである
ここまでで、どんな病気が一覧に並んでいるかを見てきました。では、一覧に載っていると、どうなるのか。
条文はそこを書いていません。条文が書いているのは、どの類型がこの表に載っているか、というところまでです。一覧に載っていることの法的な意味は、文献では次のように説明されています。①から⑩、つまり別表の1号から10号に当たる疾病は業務起因性が推定され、特段の反証がない限り「業務上の疾病」と認められる。当たらない疾病であっても、被災した労働者の側で業務に起因することを立証できれば、⑪の「業務に起因することが明らかな疾病」として認められる、というものです。
つまり、一覧に名前が載っていることの意味は、業務が原因だと推定されるところまでです。反証があればくつがえりますし、逆に載っていない病気でも、立証できれば対象になります。
①から⑩は業務起因性が推定され、当たらない疾病も立証できれば⑪として認められる
以上に列挙された疾病のうち,①から⑩に該当する疾病については業務起因性が推定され,特段の反証がない限り「業務上の疾病」と認められる。
①から⑩に該当しない疾病であっても,被災労働者側で疾病が業務に起因することを立証できれば,⑪の「業務に起因することが明らかな疾病」として,「業務上の疾病」と認められる。
近年では,介護業務における疥癬,理美容業務における接触皮膚炎,印刷業における胆管がん等が,業務上の疾病(⑪)と認定されている。
※水町勇一郎著『詳解 労働法 第4版』東京大学出版会2025年 9月p883
8 一覧に名前が無い病気も、それだけで外れるわけではない
別表第一の二は類型を並べた一覧ですが、そこで閉じているわけではありません。開き方は三段になっています。
一段目は、号の中の受け皿です。細かい項目を持つ2号・3号・4号・6号・7号は、いずれも最後の項目が「これらの疾病に付随する疾病その他……業務に起因することの明らかな疾病」という形になっていて、その号が扱う因子にさらされる業務が原因であることが明らかであれば、名指しされていない病気も拾えるようになっています。下に引くのは3号ですが、ほかの4つも同じ形です。
二段目が10号で、厚生労働大臣の指定する疾病を受けます。三段目が11号で、「その他業務に起因することの明らかな疾病」という、表全体にかかる受け皿です。
前に引いた文献が述べているとおり、脳・心臓疾患も、8号が加わる前はこの11号に当たるかどうかで判断されていました。一覧に載ったことで、その類型に当たるかどうかという形で判断できるようになった、という関係です。
なお、別表第一の二は業務災害のほかでも使われていて、そこでは引かれ方が変わります。
労働基準法施行規則別表第一の二第三号の規定
身体に過度の負担のかかる作業態様に起因する次に掲げる疾病
1 重激な業務による筋肉、腱、骨若しくは関節の疾患又は内臓脱
2 重量物を取り扱う業務、腰部に過度の負担を与える不自然な作業姿勢により行う業務その他腰部に過度の負担のかかる業務による腰痛
3 さく岩機、鋲打ち機、チェーンソー等の機械器具の使用により身体に振動を与える業務による手指、前腕等の末梢循環障害、末梢神経障害又は運動器障害
4 電子計算機への入力を反復して行う業務その他上肢に過度の負担のかかる業務による後頭部、頸部、肩甲帯、上腕、前腕又は手指の運動器障害
5 1から4までに掲げるもののほか、これらの疾病に付随する疾病その他身体に過度の負担のかかる作業態様の業務に起因することの明らかな疾病
※労働基準法施行規則別表第一の二第三号
労働基準法施行規則別表第一の二第十号の規定
前各号に掲げるもののほか、厚生労働大臣の指定する疾病
※労働基準法施行規則別表第一の二第十号
労働基準法施行規則別表第一の二第十一号の規定
その他業務に起因することの明らかな疾病
※労働基準法施行規則別表第一の二第十一号
(1)複数の会社で働いている場合は、別表のうち8号と9号が使われる
二つ以上の会社で同時に働いている場合のように、二以上の事業の業務を要因とする災害は複数業務要因災害と呼ばれ、労災保険法7条1項が、業務災害・通勤災害と並べて給付の種類の一つに挙げています。その対象になる疾病の範囲を定めているのが、労働者災害補償保険法施行規則18条の3の6です。
ここで別表第一の二から引かれているのは8号と9号だけで、これに「その他二以上の事業の業務を要因とすることの明らかな疾病」という受け皿が添えられています。名指しされていない病気の受け皿が置かれているという形は、別表の側と同じです。どの会社の業務をどう合わせて見るのか、給付の中身がどうなるのかは、この記事では扱いません。
労働者災害補償保険法施行規則18条の3の6の条文
法第二十条の三第一項の厚生労働省令で定める疾病は、労働基準法施行規則(昭和二十二年厚生省令第二十三号)別表第一の二第八号及び第九号に掲げる疾病その他二以上の事業の業務を要因とすることの明らかな疾病とする。
※労働者災害補償保険法施行規則18条の3の6
9 対象の範囲に入ることと、労災と認められることは別である
別表第一の二のどれかの号に当たる病気であれば当然に労災と認められる、というわけではありません。ここまでが対象になる病気の範囲の話で、実際にその人の病気が業務によるものといえるかどうかは、そこから先の判断になります。その判断は、厚生労働省が定めている認定基準に従って行われます。
この記事は労災の対象になる病気の範囲までを扱うもので、認定基準の中身には立ち入りません。労災が認められるための要件については、別の記事で説明しています。
仕事による自死(過労自殺)の労災・損害賠償請求が認められる要件(基礎知識)
認定基準に沿って実際にどう主張していくことになるのかについては、別の記事で説明しています。
職場環境(過労やパワハラ)による自殺の労災・損害賠償が認められる要件(実践アプローチ)
対象になる精神障害の種類(国際疾病分類ICD-10による分類)については、別の記事で説明しています。
10 おわりに
労災の対象になる病気の範囲は、労働基準法75条2項が厚生労働省令に預け、労働基準法施行規則35条が別表第一の二に送り、その別表が11の類型を並べる、という形で決まっています。
その一覧は、閉じた名簿ではありません。載っていれば業務起因性が推定されるところまでで、反証があればくつがえります。載っていなくても、号の中の受け皿、10号、11号という三段の開き方があり、業務に起因することが明らかであれば対象になります。
働きすぎによる病気で労災の申請を考えている場合や、会社に損害賠償を求めることを考えている場合の全体像については、別の記事で説明しています。
職場環境(過労やパワハラ)による自殺と労災・損害賠償の総合ガイド
本記事は一般的な説明です。個別の事案にそのまま当てはまるとは限らず、一見似ている事案でも、事情が異なれば結論は異なります。個別的事情により、法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。実際に問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。
本記事の引用は、書籍・判例などの原文から範囲を選んで載せたものです。改行の位置は読みやすさのために当方で整えており、原文の改行と同じとは限りません。また、記号や外字の扱いにより、文字の一部が原文と異なって表示されることがあります。


