1 定年後も高年齢者雇用安定法により一定の延長が必要
2 高年齢者雇用安定法の雇用確保義務の内容
3 継続雇用制度の内容と対象者;経過措置がある
4 継続雇用制度が無効とされる例もある
5 定年引き上げ等奨励金を雇用主が需給することもできる

1 定年後も高年齢者雇用安定法により一定の延長が必要

(1)定年制度

<定年制度の内容>

定年制度は,一定の年齢に達した時点で退職となるものです。
労働契約が終了する,ということです。

一般的には就業規則に定めておく義務があります(労働基準法89条3号)。
当然,従業員自身も熟知しているはずですし,特に問題はありません。

(2)高年齢者雇用安定法による手当

高年齢者雇用安定法で,定年後に一定の規制がなされています。
65歳までの定年の引き上げや継続雇用制度の導入が義務付けられています。
これらの制度趣旨に反する,として定年制度(継続雇用制度)自体が無効とされます。
実際に無効とされた事例も増えつつありますので注意が必要です。

2 高年齢者雇用安定法の雇用確保義務の内容

高年齢者雇用安定法のルールはちょっと複雑ですので,整理して説明します。

<雇用確保義務が適用される事業者>

定年として65歳未満が設定されている事業主

<雇用確保義務の内容>

※いずれか
・定年の定めの廃止
・定年の引上げ(65歳以上)
・継続雇用制度を実施

いずれもおおざっぱに言えば定年を引き上げることと言えます。
ただし,この中で,継続雇用制度だけは,対象者を絞ることができるのが大きな違いです。
また,多くの会社では,定年年齢の引き上げの負担が重いため,継続雇用制度の導入を選択しています。
定年の定めの廃止と引上げは単純な変更です。
継続雇用制度だけはルールが多少複雑です。
次に説明します。

3 継続雇用制度の内容と対象者;経過措置がある

雇用確保義務の1つが継続雇用制度の実施です。
継続雇用制度に内容をまとめます。

(1)継続雇用制度の内容は2種類

<継続雇用制度の内容>

※いずれか

あ 勤務延長制度

定年になった従業員を退職させず,継続して雇用する制度

い 再雇用制度

定年になった従業員を退職させ,改めて雇用する制度

(2)継続雇用制度の対象者は原則が全員だが,例外もある

継続雇用制度の対象者は,次のいずれかとする必要があります。

あ 全員対象

これが原則です。
65歳までの雇用を確保する,言い換えると,65歳までは退職させられない,という高齢者雇用安定法の趣旨そのものです。
ただし,経過措置として,例外的に,次の基準年齢以上の従業員については,例外も認められています。

適用年度 基準年齢
平成25年4月1日〜平成28年3月31日 63歳以上
平成28年4月1日〜平成31年3月31日 62歳以上
平成31年4月1日〜平成34年3月31日 63歳以上
平成34年4月1日〜平成37年3月31日 64歳以上

この例外に該当する従業員については,次のような方法が認められます。

い 労使協定(+就業規則)

労使の間で納得・合意すれば,例外的に,全員が対象ではないという制度も作れます。
なお,労働者側は,労働組合があれば労働組合,ない場合は,労働者の過半数代表ということになっています。
また,労使協定で定めた後には,就業規則上の規定も変更することになります。
定年を含む退職に関連する事項は就業規則の絶対的記載事項とされているからです(労働基準法89条3号)。

う 就業規則(の変更のみ)

現在(平成23年4月1日以降)は適用されません。
大企業が平成21年3月31日まで,中小企業は平成23年3月31日までの間は,暫定的に,就業規則での規定が可能でした。
つまり,労働者側が納得しないため,労使協定が締結できないというケースでも,事業主側で一方的に設定することが可能でした。
しかし,平成23年4月1日以降は,中小企業も含めて,すべての事業主について,『就業規則に基づく雇用継続制度』という特例は終了します。

4 継続雇用制度が無効とされる例もある

高年齢者の雇止めについて,解雇権の濫用の理論を流用する(類推適用)裁判例が増えてきています(裁判例1)。
要は,再雇用制度の適用が原則で,再雇用されずに退職が例外という考え方です。
ここで,雇止めが有効か無効か,という判断については,解雇権濫用と同じような判断方法が取られます。
<→別項目;

5 定年引き上げ等奨励金を雇用主が需給することもできる

定年を引き上げた場合,通常,雇用主の負担が重くなります。
そこで,厚生労働省による,公的な給付金(奨励金)制度が用意されています。
規定の条件を満たせば,この奨励金給付を受けられます。
定年の引上げや定年の定めの廃止を実施した事業主の方への給付金(厚生労働省)

条文

[労働基準法]
(作成及び届出の義務)
第八十九条  常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。
一〜二(略)
三  退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
三の二〜十(略)

判例・参考情報

(判例1)
[境地地方裁判所 平成22年11月26日]
2 判断
(1) 本件雇止めについて解雇権濫用の法理が適用又は類推適用されるか(争点(1))について
ア 高年齢者雇用安定法は,定年を65歳に引き上げ,その効力を事業主と労働者間に当然に及ぼすものではなく,各事業主に努力義務を課すものであること,被告が平成20年2月16日に制定した再雇用制度に関する就業規則41条では,従業員は,60歳の定年に達した後も,同条の定める継続雇用基準を満たす場合に,原則1年単位で再雇用され,上限年齢(原告の場合は4歳)に至るまでは反復更新が予定されていたこと,原告は平成20年6月a日に60歳になって定年を迎えたが,上記就業規則の定めに基づき,翌b日付けで平成21年6月15日までの間再雇用されたことに照らすと,原告と被告との間で締結された本件再雇用契約が,64歳までの有期雇用であったと解することはできない。
イ ところで,被告は,就業規則41条4項が「再雇用に関する労働条件等については,個別に定める労働契約(労働条件通知書)によるものとする。」とし,本件再雇用の契約書13条で会社の経営上の理由により契約更新が行われない場合を規定していることから,原告が主張するような定年後の継続雇用に対する合理的期待が生じる余地はない旨主張する。
しかし,就業規則41条1項,4項を素直に読むと,4項のいう「労働条件等」とは,賃金や労働時間等,雇用の継続を前提とした労働条件等を意味するのであって,再雇用契約の更新に関わる条件を意味するわけではないと解される。したがって,上記契約書13条の規定は,就業規則に違反し,無効である(労働契約法12条)。
就業規則で,再雇用に関し,一定の基準を満たす者については「再雇用する。」と明記され,期間は1年毎ではあるが同じ基準により反復更新するとされ,その後締結された本件協定でも,就業規則の内容が踏襲されている。そして,現に原告は上記再雇用の基準を満たす者として再雇用されていたのであるから,64歳に達するまで雇用が継続されるとの合理的期待があったものということができる。
ウ そして,原告が60歳定年までの間,平成7年4月以降統合前のB社及び統合後の被告において期間の定めなく勤務してきたことを併せ考えると,本件再雇用契約の実質は,期間の定めのない雇用契約に類似するものであって,このような雇用契約を使用者が有効に終了させるためには,解雇事由に該当することのほかに,それが解雇権の濫用に当たらないことが必要であると解される。
したがって,本件雇止めには,解雇権濫用法理の類推適用があるとするのが相当である。
(2) 本件雇止めが解雇権を濫用したものといえるか(争点2)について
ア 前記のとおり,本件雇止めについては,解雇権濫用法理の類推適用があると解するのが相当であるところ,被告は,原告の雇止めの理由として,「業績不振のため」を挙げている。
そこで,原告に対する雇止めが解雇権の濫用に当たらないかを判断するに当たっては,本件雇止めが整理解雇の要件を満たすかどうかを検討する必要があるところ,整理解雇については,人員整理の必要性があったか,解雇を回避する努力がなされたか,被解雇者の選定基準に合理性があるか,労働者や労働組合に対する説明・協議が誠実になされたかという点を総合的に考慮して判断するのが相当である。
イ そこで,上の諸点を検討するに,まず,人員整理の必要性については,被告の売上高は,第37期(平成20年6月1日~平成21年5月31日)を第36期(平成19年6月1日~平成20年5月31日)と比較すると,約1億2000万円減少しており,販売費及び一般管理費の削減等で営業損失の拡大はわずかであるが,被告は,百貨店を主要取引先としてマネキンの貸出し等を主力業務とする親会社の子会社として,マネキンの製造,メンテナンス等を業とする会社であり,昨今の百貨店各店の業績からすると,原告を雇止めにした平成21年6月時点において,被告における今後の売上高の上昇が期待できる見込みに乏しく,人員を削減すべき必要性を認めることができる。
しかしながら,解雇回避努力の点をみると,前記1で認定のとおり,平成21年6月にされた原告に対する本件雇止めより以前においては,平成20年12月に西営業所の契約社員(O)の雇止め,平成21年2月に役員及び管理職の賃金カット,東営業所の派遣社員(S)の契約打切り,原告の雇止めと同じ時期に西営業所の契約社員(F,E,H,G)をアルバイト又は顧問待遇に変更する措置を実施しているものの,西営業所の契約社員(O)については主として本人の資質の問題で雇止めにされたものであるし,平成21年4月には,親会社に移籍する予定とはいえ新規に大学卒を採用している。そして,被告において一時帰休を実施したのは平成21年7月,希望退職を募集したのは同年12月であって,こうした経緯からすると,被告において,本件雇止め以前にそれを回避すべき努力義務を尽くしたということはできない。
また,選定基準の合理性の点についても,原告以外の再雇用労働者5人(F,E,H,G,I)は,身分がアルバイト等に変更になった者もいるが,再雇用が継続されているのに,原告のみが雇止めになった理由について,被告において,5人が必要な理由を主張しているものの,必ずしも説得力のある理由とはいい難い。
ウ 以上の検討からすると,本件雇止めについて,整理解雇の要件を満たしていると認めることはできず,被告の業績不振を理由とする本件雇止めは,解雇権の濫用に当たり無効である。