1 解雇無効|請求内容・解決手続のバリエーション
2 解雇無効×給与支払義務|紛争中も給与が発生する
3 解雇無効×加算的損害賠償・慰謝料|多少加算されることもある
4 解雇無効|解決手続|全体
5 裁判所の利用|仮処分|種類・内容
6 裁判所の利用|労働審判・訴訟|請求の種類・内容
7 復職/退職方向の設定|注意|誤解・違和感がありがち

1 解雇無効|請求内容・解決手続のバリエーション

解雇の無効を主張するケースでは『請求内容』が重要です。
理論的にも,また実際の設定=法律構成もバリエーションがあるのです。
また『請求内容』は,解決手続の選択とも密接に関係します。
従業員側は当初の設定・方針検討→選択が非常に重要です。
雇用主側はこのような背景全体を把握しておくと良いです。
最適な防御・反撃の実現につながるのです。
本記事では解雇無効の紛争における請求内容・解決手続について説明します。
最終的な解決の段階,つまり和解金の相場などについては別記事にまとめてあります。
(別記事『和解金相場・所要期間』;リンクは末尾に表示)

2 解雇無効×給与支払義務|紛争中も給与が発生する

解雇無効の紛争は『給与』の扱いに注意が必要です。
紛争・係争中も『給与発生が止まらない』という性格です。
もちろん解雇が有効・適切であれば解雇後の給与は生じません。
『給与発生』についてまとめます。

<解雇無効×給与支払義務>

あ 解雇無効の効果

解雇が無効と判断された場合
→『継続して従業員として在籍していた』ということになる
=過去に遡って給与・手当などが発生していたことになる

い ノーワークノーペイ|素朴な感覚

通常,交渉・労働審判・訴訟などの紛争中は勤務していない
→ノーワークノーペイという発想もある

う ノーワークノーペイ|法的解釈

勤務しなかった理由は,雇用主側による『不当・違法な解雇の宣告』である
→雇用主が『故意に条件成就を妨げた』に該当する
→ノーワークだけど給与は発生する
※民法130条類推適用

え 退職を受け入れる方法

解雇は無効であるが退職を受け入れる方法もある
この場合は『給与』自体は発生しない(後記)

3 解雇無効×加算的損害賠償・慰謝料|多少加算されることもある

解雇が無効である場合,原則的に給与発生は止まりません(前述)。
給与とは別に損害賠償=慰謝料が認められることもあります。

<解雇無効×加算的損害賠償・慰謝料>

あ 前提事情

次のいずれにも該当する
ア 不当・違法な解雇の宣言が無効であった
イ 雇用主側の『不当性・悪質性が強い』
解雇の宣言・前後の経緯について

い 損害賠償・慰謝料

一定額の損害賠償=慰謝料が認められることがある

う 損害額|傾向

解雇が無効と判断された
→賃金(給与)が支払われる
賃金とは別の金銭保障の必要性は小さい
→金額はそれ程大きくならない傾向がある
※東京地裁平成17年3月29日;ジャパンタイムズ事件

慰謝料というのはあくまでも『追加部分』と考えると分かりやすいです。

4 解雇無効|解決手続|全体

解雇の有効性が争われる場合の解決手続はいくつかあります。
手続の全体をまとめます。

<解雇無効|解決手続|全体>

あ 裁判所を利用しない方法

ア 交渉
イ 公的機関のあっせん(裁判所以外)
例;労働局・労政事務所など

い 裁判所を利用する方法

ア 仮処分
イ 労働審判
ウ 訴訟

個別的事情・当事者双方の方針によって最適な手続は異なります。
この選択自体も結論・所要コスト全体の有利/不利につながります。
いずれの場合でも従業員側は『請求内容の設定』が重要です。
特に裁判所を利用する手続では『明確な特定』が必要です。
これについては後述します。

5 裁判所の利用|仮処分|種類・内容

裁判所の手続の中に『仮処分』というものがあります。
これは,暫定的措置を行うものです。
仮処分は必須ではありません。
すぐにメインの裁判手続を進める方が良いケースもあります。

<裁判所の利用|仮処分|種類・内容>

あ 基本的事項

メインの裁判の前に『暫定的措置』を行う手続

い 地位確認の仮処分

従業を継続できる状態にする

う 賃金仮払の仮処分

給与が継続的に支払われるようにする

6 裁判所の利用|労働審判・訴訟|請求の種類・内容

労働審判・訴訟では『請求の内容特定』が重要です。
解雇無効の主張についてはいくつか選択肢があります。
ちょっと複雑なので,次にまとめます。

<裁判所の利用|労働審判・訴訟|請求の種類・内容>

あ 設定=復職方向

ア 地位確認請求
『労働契約上の地位』を確認する請求
つまり『労働者・従業員の地位』という意味である
イ 賃金支払請求
ウ (加算的)損害賠償請求
エ 付加金請求
詳しくはこちら|賃金・残業代の遅延損害金・付加金|退職日前後の違い・裁判所の裁量

い 設定=退職方向

ア (代替的)損害賠償請求
『解雇』を『不法行為』とする
損害額=逸失利益=75歳までの給与相当額
将来の給与に『代わる』損害賠償という位置付けである
イ 解雇予告手当支払請求

7 復職/退職方向の設定|注意|誤解・違和感がありがち

解雇無効の主張では『復職/退職』のいずれかの方向性を選択します(前記)。
この選択はちょっと複雑で,また違和感を生じることが多いです。
このことをまとめます。

<復職/退職方向の設定|注意>

あ 基本的考え方

単純に従業員側の意向だけで決めるわけではない
雇用主側の反応を予測した上で最適な方針を選択すると良い

い 典型例

ア 従業員の意向
『復職』は望まない
イ 雇用主の意向
・『復職』を受け入れるはずはない
・『賃金発生が延々と続く』ことを避ける意向が強い
→これを避けるために和解金で大幅な譲歩が予想される
ウ 従業員側の請求の設定
敢えて『復職方向』の請求を設定する
つまり『継続的な賃金請求』を含む方を選択する

う 注意|解雇無効紛争の特殊性

従業員=請求側は『本音と違う請求内容』を提示することが多い
当事者(本人)には違和感がある
しかし,実務=弁護士・裁判所ではむしろありふれている
『退職方向』の設定の方が,実務的には違和感があるくらい