【子の監護・財産分与・親権者を定める基本的な方法(協議・家事審判)】
1 子の監護・財産分与・親権者を定める基本的な方法
2 子の監護に関する事項を定める手続の全体像
3 財産分与を定める手続の全体像
4 親権者を定める基本的な方法
5 家裁の手続の種類(独立した審判と離婚訴訟の附帯処分)
6 離婚訴訟に伴う判断(附帯処分等・概要)
1 子の監護・財産分与・親権者を定める基本的な方法
離婚に伴って定める事項にはいろいろなものがあります。主なものとして,子の監護に関する事項や親権者,財産分与があります。
これらについては,原則的に当事者の協議(合意)で定めますが,実際には対立した状況で合意に達しないことも多いです。そこで裁判所が定めることもできます。
本記事では,子の監護に関する事項や親権者,財産分与について定める方法の基本的事項を説明します。
2 子の監護に関する事項を定める手続の全体像
子の監護に関する事項にはいろいろなものが含まれます。監護権者の指定や養育費を定めることが代表的なものです。
詳しくはこちら|離婚訴訟の附帯処分等(子の監護・財産分与・親権者)の申立と審理の理論
最初に,子の監護に関する事項を定める手続の基本的なものを押さえておきます。
原則的には(元)夫婦が協議によって定めます。そして,合意に達しない場合に家裁が家事審判として定めることになっています。
そして,離婚訴訟が提起されている場合には,別に家事審判を申し立てなくても,附帯処分として申し立てることで離婚訴訟と一緒に審理されることになります。
<子の監護に関する事項を定める手続の全体像>
あ 協議(合意)
協議離婚において
未成年の子の監護に関して必要な事項を協議で定める
※民法766条1項
い 家裁の審判
協議が調わない場合は家裁が定める(別表第2事件)
※民法766条2項,家事手事件手続法39条,別表第2の3の項
う 離婚訴訟に伴う判断
離婚訴訟において裁判所が職権で定める規定はない
附帯処分として当事者が申し立てることができる
3 財産分与を定める手続の全体像
次に,財産分与を定める手続も,前記の子の監護に関する事項を定める手続と同様です。原則が協議で,合意できない場合に家裁が家事審判として定めます。
離婚訴訟が係属している場合は,当事者が附帯処分として申し立てれば裁判所が判断することになります。
<財産分与を定める手続の全体像>
あ 協議(合意)
協議離婚において
当事者は財産分与を請求することができる(合意により定まる)
い 家裁の審判
協議が調わない場合には家裁が定める(別表第2事件)
※民法768条1項,2項,家事事件手続法39条,別表第2の4の項
う 離婚訴訟に伴う判断
離婚訴訟において裁判所が職権で定める規定はない
附帯処分として当事者が申し立てることができる
4 親権者を定める基本的な方法
親権者の指定も,以上の2つと似ています。原則的に協議で定めるが,合意できない場合に裁判所が審判で定めるというところまでは同じです。
しかし,離婚訴訟が提起された状態だと,裁判所が職権で(親権者を)定めます。つまり,当事者が附帯処分として申し立てる必要はないのです。この部分が前記の2つの事項と違います。
なお,申立以外,つまり審理の方法は,以上の2つと親権者の指定は共通しています。そこで,親権者の指定は,附帯処分に準じる扱いがなされています。本来の附帯処分と親権者の指定を合わせて附帯処分等と呼んでいます。
<親権者を定める基本的な方法>
あ 協議(合意)
協議離婚において
未成年の子がいる場合,協議により親権者を定める
い 独立した家裁の手続
協議が調わない場合
家裁が協議に代わる審判により親権者を定める(別表第2事件)
※民法819条1項,5項,家事事件手続法39条,別表第2の8の項
う 離婚訴訟に伴う判断
裁判離婚において離婚を認容する場合
(裁判離婚を審理判断する)裁判所が親権者を定める
※民法819条2項
裁判所は職権で離婚判決の中で親権者の指定をしなければならない
※人事訴訟法32条3項
5 家裁の手続の種類(独立した審判と離婚訴訟の附帯処分)
以上の説明で登場した裁判所の手続の種類には,(独立した)家事審判と離婚訴訟の中で判断する方法(附帯処分等)がありました。
なお,これとは別に裁判所の手続として調停もあります。最終的に裁判所が判断するものではないので以上の説明では除外していました。
家事審判として申し立てる場合には,現在の法律では調停を先に申し立てる(調停前置)必要はありません。しかし実務では調停を先に申し立てることが要請されています。
<家裁の審判の分類と事実上の調停前置>
あ 家事事件としての分類
子の監護に関する事項・財産分与・親権者の指定について
→別表第2事件に分類されている
詳しくはこちら|家事事件(案件)の種類の分類(別表第1/2事件・一般/特殊調停)
い 原則的な手続(審判or調停)
家事審判の対象である
→当事者は家事審判の申立をすることができる
実務上は先に調停の申立をしている
詳しくはこちら|一般的付調停|事実上の調停前置・必要的付調停との違い
6 離婚訴訟に伴う判断(附帯処分等・概要)
離婚訴訟の審理の中で,子の監護に関する事項・財産分与・親権者の指定を一緒に判断することもあります(附帯処分等・前記)。附帯処分等については申立や審理において,特殊な法的扱いがあります。
これについては別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|離婚訴訟の附帯処分等(子の監護・財産分与・親権者)の申立と審理の理論
本記事では,子の監護・財産分与・親権者を定める基本的な方法について説明しました。
実際には,個別的な事情や主張・立証のやり方次第で結論が違ってくることもあります。
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