1 有責配偶者の離婚請求を認めなかった事例(裁判例)の集約
2 別居2年4か月・7歳の子・妻に障害→夫の離婚請求棄却
3 別居3年半・中学2年の子→夫の離婚請求棄却
4 別居9年・妻56歳→夫の離婚請求棄却
5 別居9年4か月・過去の婚姻費用支払遅滞→夫の離婚請求棄却
6 別居11年・17歳の子→夫の離婚請求棄却
7 嫌がらせ行為が有責行為となった→離婚請求棄却
8 別居中の夫婦の交流により破綻を否定した(概要)
9 有責配偶者の離婚請求を認めた裁判例(概要)

1 有責配偶者の離婚請求を認めなかった事例(裁判例)の集約

不貞(不倫)をした者が離婚請求をしても,一定の要件をクリアしないと離婚は認められません。判例で判断基準が示されていますが,これで明確に判断できるわけではありません。
詳しくはこちら|有責配偶者からの離婚請求を認める判断基準(3つの要件)
そこで,実例と裁判所の判断をみた方が理解しやすいです。
本記事では,有責配偶者の離婚請求を認めなかった裁判例をいくつか紹介します。
つまり,破綻してはいるけれど,離婚請求をする者が有責であるために離婚が否定されたというものです。有責であることによるペナルティが効いた事例といえます。

2 別居2年4か月・7歳の子・妻に障害→夫の離婚請求棄却

別居期間が2年4か月と短く,7歳という小さい子がいたため,有責配偶者からの離婚請求が認められませんでした。有責であるために離婚が否定される典型のような事例です。

<別居2年4か月・7歳の子・妻に障害→夫の離婚請求棄却>

あ 形式的状況
同居 別居
6年7か月 2年4か月 34歳 33歳
い 実情

子は7歳である
妻が子宮内膜症にり患していた

う 結論

夫からの離婚請求を認めなかった
※最高裁平成16年11月18日

3 別居3年半・中学2年の子→夫の離婚請求棄却

別居期間が3年半と短く,中学2年の子がいたケースです。これも有責であるために離婚が否定される典型のような事例です。

<別居3年半・中学2年の子→夫の離婚請求棄却>

あ 形式的状況
同居 別居
3年 3年半 36歳 32歳
い 実情

次男は中学2年生であり,多感な年代である
離婚は子らにとって大きな打撃を与える

う 結論

特段の事情といえる
=夫からの離婚請求を認めなかった
※東京高裁平成9年11月19日

4 別居9年・妻56歳→夫の離婚請求棄却

別居期間が9年であり,目安である10年に近く,さらに未成熟の子はいなかったけれど,結論としては有責配偶者からの離婚請求が認められなかった事例です。
経済的な状況として,妻はパート収入だけでは暮らしてゆけず,夫からの婚姻費用に頼っているため,婚姻費用を維持させた結果になっています。

<別居9年・妻56歳→夫の離婚請求棄却>

あ 形式的状況
同居 別居
約21年 約9年 56歳 56歳
い 実情

妻はパート収入と婚姻費用によって生活を維持できている
職歴・年齢からは,経済的に自立できる程度の職業に就ける見通しも乏しい

う 結論

特段の事情といえる
=夫からの離婚請求を認めなかった
※福岡高裁平成16年8月26日

5 別居9年4か月・過去の婚姻費用支払遅滞→夫の離婚請求棄却

別居期間は目安である10年近くに達していました。しかし,夫(有責配偶者)は,過去に婚姻費用の支払いが遅れていました。そのため,将来の金銭支払も確実ではないと予測されて,結局離婚は認められませんでした。

<別居9年4か月・過去の婚姻費用支払遅滞→夫の離婚請求棄却>

あ 別居期間

別居期間=9年4か月

い 実情

夫(離婚請求者)は,過去に婚姻費用の支払を遅滞していた

う 結論

夫の将来の金銭支払の不履行が不安視される
→離婚請求を認めなかった
※仙台高裁平成25年12月26日
詳しくはこちら|有責配偶者の支払不履行リスクにより離婚請求を棄却した裁判例

6 別居11年・17歳の子→夫の離婚請求棄却

目安として,別居期間が10年を超えると,有責配偶者からの離婚請求でも認められる傾向があります。
しかし,夫婦間の経済力の格差が大きく,また,高校生の子どもがいたために,離婚請求が否定された事例です。

<別居11年・17歳の子→夫の離婚請求棄却>

あ 形式的状況
同居 別居
約10年 約11年 47歳 47歳
い 実情

妻はパートとして働いている,生活保護を受けている
17歳の高校生を養育している
夫は金銭的に余裕がある
調停で決められた婚姻費用を2年しか払わなかった

う 結論

特段の事情といえる
=夫からの離婚請求を認めなかった
※東京高裁平成元年5月11日

7 嫌がらせ行為が有責行為となった→離婚請求棄却

ほとんどのケースで有責行為の内容は不貞(不倫)です。この点,この裁判例は,夫やその母の嫌がらせ有責行為として認めました。破綻していたのに,有責であるために離婚請求は否定されました。

<嫌がらせ行為が有責行為となった→離婚請求棄却>

あ 形式的状況
同居 別居
約16年 約13年 58歳 51歳
い 実情(有責性の内容)

婚姻当初から妻は,夫の母の嫌がらせに悩まされていた
夫と夫の母が,長男(障害を持つ)に冷たい仕打ちをしていた
このことについても妻は悩んでいた

う 結論(有責性の判断)

夫を有責配偶者とした
→夫からの離婚請求を認めなかった
※東京高裁平成20年5月14日

8 別居中の夫婦の交流により破綻を否定した(概要)

通常の別居とは違う事情が問題となった裁判例があります。別居中に夫と妻が継続的に会っていたのです。この事例では,夫から妻へのプレゼントがあり,また,夫婦で一緒に映画や食事に行くこともあったので,夫婦の間には愛情があると評価されました。結果として通常の別居と同じようには扱われず,破綻していないとして離婚は認められませんでした。

<別居中の夫婦の交流により破綻を否定した(概要)>

あ 夫の社会的地位と不貞(有責性)

夫は高い社会的地位を持ち,収入も大きかった
夫が妻以外の女性と同居していた(有責行為)
(形式的な)別居期間が20年以上に達していた
夫はたまに妻の居住する建物を訪問し泊まっていた(調停申立後も継続)

い 愛情あり

夫から妻へプレゼント・礼状を渡していた
夫と妻は一緒に映画鑑賞や食事をすることがあった

う 結論

夫婦関係の破綻(一般的な別居)ではない
→離婚請求を認めなかった
※東京高裁平成9年2月20日
詳しくはこちら|別居中の夫婦の交流により破綻を否定した裁判例(有責配偶者の離婚請求棄却)

9 有責配偶者の離婚請求を認めた裁判例(概要)

以上は,有責配偶者からの離婚請求を認めなかった裁判例でした。逆に離婚請求を認めた裁判例については,別の記事で紹介しています。
詳しくはこちら|有責配偶者の離婚請求を認めた事例(裁判例)の集約

本記事では,有責配偶者からの離婚請求を認めなかった裁判例を紹介しました。
実際には,個別的な細かい事情や,主張と立証のやり方次第で結論が違ってきます。
実際に有責配偶者の離婚請求に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。