1 妻の自宅鍵の交換により有責の夫の離婚請求を認めた裁判例
2 事案の内容(夫と妻の有責性)
3 裁判所の判断(有責配偶者の離婚請求認容)

1 妻の自宅鍵の交換により有責の夫の離婚請求を認めた裁判例

不貞(不倫)をした者が離婚請求をしても,一定の要件をクリアしないと離婚は認められません。
詳しくはこちら|有責配偶者からの離婚請求を認める判断基準(3つの要件)
本記事では,夫が不貞(不倫)をしたケースで,妻が夫に無断で自宅の鍵を交換して夫を締め出したことが考慮されて,夫からの離婚請求が認められた裁判例を紹介します。

2 事案の内容(夫と妻の有責性)

特殊な事情から,別居期間が1年半と,とても短いのに離婚が認められた事例を紹介します。
最初に,事案の内容だけを整理します。夫が不貞(不倫)を行い,有責であることははっきりしていました。
その後,妻は,夫婦で同居していた自宅の玄関の鍵を交換してしまいました。夫と話し合うとか了解を取るようなことはありませんでした。つまり夫を強制的に締め出したということです。なお,これ以外にも妻の側に,夫婦関係を悪化させる事情もありました。

<事案の内容(夫と妻の有責性)>

あ 夫の有責性

夫が単身赴任中に女性と同居するようになった
→夫には有責性がある

い 破綻(自宅の鍵の交換)

電話での会話もない状態で妻が自宅の鍵を交換した
=夫が自宅に入ることができなくなった
→この時点で主観的にも客観的にも婚姻関係が完全に破綻するに至った

う 妻の有責性

妻の『ア〜エ』の行為により,妻にも一定程度の有責性がある
ア 杜撰な家計の管理
イ 安易で多額な夫名義での借金の繰り返し
ウ 夫に風俗店の利用を勧めた
エ 自宅の鍵を交換した
※札幌家裁平成27年5月21日

3 裁判所の判断(有責配偶者の離婚請求認容)

前記の事案について,裁判所が判断した内容をまとめます。
まず,別居期間は1年半であり,これだけをみるととても短いので,離婚は認められないはずです。
しかし,その別居は,妻の実力行使で始まった,つまり,妻が強制的に別居の状態を開始させたといえるのです。これ以外に,妻の方にもやや小さめではありますが,有責行為がありました(前記)。さらに,夫の方は,妻に婚姻費用を多めに支払っていました。
このように,多くの事情が積み上がって,トータルでは離婚を認めてもよいレベルに達したのです。

<裁判所の判断(有責配偶者の離婚請求認容)>

あ 長期間の別居についての判断

同居期間18年半,別居期間1年半であった
→別居期間は比較的短い
ただし,別居に至った直接のきっかけ(原因)は妻の実力行使である
=妻が積極的に夫との同居を拒んだ

い 未成熟子の存在についての判断

未成熟子はいるが,比較的年長者である

う 特段の事情(苛酷条項)の判断

夫は,妻が作った借金の返済を未だ続けている
妻は,夫の収入や借金返済額に比べて過分の婚姻費用の支払を1年以上にわたって受け続けている
今後,妻が家計の切り詰めをすることにより,相当程度の支出の圧縮が可能である
妻が育児のために稼働制限をしなければならないような状況にはない
特段の事情はない

え 結論

夫からの離婚請求を認めた
※札幌家裁平成27年5月21日

本記事では,自宅からの締め出しという事情を考慮して有責配偶者からの離婚請求を認めた裁判例を紹介しました。
実際には,個別的な細かい事情や,主張と立証のやり方次第で結論が違ってきます。
実際に有責配偶者の離婚請求に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。