1 巷で聞くことのある『結婚強制法案』
2 『結婚強制法案』が実現不可能な理由
3 外国のデ・ファクトの制度
4 デ・ファクトの制度のいろいろな効果
5 結婚しないと犯罪となる実在ルール(青少年保護育成条例)

1 巷で聞くことのある『結婚強制法案』

『交際が長期化→男性が結婚を承諾せずに別れる,というのはヒドい』ということを聞くことがあります。
要するに『法律で結婚を強制すべきだ』という見解です。

<巷で聞くことのある『結婚強制法案』>

ア 交際5年以上→結婚しないと懲役刑
イ 女性の年齢が30歳オーバー→結婚しないと懲役刑

たわいもない冗談やグチのようですが,状況によっては法律的に正しいといえることもあります。
本記事では,一定の男女交際によって法律的な拘束力が生じるということについて説明します。

2 『結婚強制法案』が実現不可能な理由

まず,前記のアイデアをストレートに(真面目に)考えると,いろいろな点から問題があります。理論的に実現できません。

<『結婚強制法案』が実現不可能な理由>

あ 法的視点→違憲

『合意のみで結婚が成立』という日本国憲法24条1項に違反する

い マーケット・メカニズム的視点

『法案』を前提にすると
→結婚の意向がない場合『適用される前』に別れざるを得なくなる
→不合理である

う 投資的視点

『独身長期化(高齢化)』という掛け金(リスク)で『結婚できる可能性』(リターン)に投資している
→『約束のない交際継続』=リスクテイク,という『選択』
→リスク・リターンのバランスが取れている
→『法案』はこのバランスを崩す=不公平

一方で一定の強制がプラス効果も指摘されています。
諸外国で実際に運用されている一定の強制(法律的)制度を元に説明します。

3 外国のデ・ファクトの制度

前記の『法案』だと,一定時期に『結婚or別れる』を強制されます。
この点,諸外国では,これに近い制度が実際に運用されている例もあります。

<外国のデ・ファクトの制度>

あ デ・ファクトの制度の具体例

半年間の同居(同棲)により結婚と同様の扱いをする
期間の設定=半年や1年
※オーストラリアなど

い 『デ・ファクト』の語源

『デ・ファクト』を直訳すると『既成事実』という意味である

日本でも,一定の条件が揃うと内縁(事実婚)として結婚の規定の大部分が準用される扱いがあります。
しかし,単に同居だけで適用されるほど過激ではありません。
詳しくはこちら|実質的な『夫婦』は『内縁』として婚姻と同じ扱いになる

4 デ・ファクトの制度のいろいろな効果

デ・ファクトの制度がある地域では同棲が半年や1年になる段階で『拘束を受ける(結婚に突入)or別れる』という選択が強制されます。
この結果・効果を整理します。

<デ・ファクトの制度のいろいろな効果>

あ デ・ファクトの現実的効果

一定時期に『結婚or別れる』を政府が強制することになる
=恋愛・交際の選択肢を政府が奪う

い 理論的な問題

法理論として一般的に問題がある
法理論以外でも,『個人の価値観』『生き方』を否定される
→不合理である

う 恋愛の流動化

『実らない恋愛』を強制排除する結果になる
=強制的に『空き』状態(恋人がいない状態)を作る
→『新たな恋愛』が促進される

え 有期雇用の無期転換(参考)

『有期雇用』には法律上の期間の上限がある
→上限を超えた場合は『無期』が強制される
詳しくはこちら|有期労働契約|上限3年/5年|無期転換・雇い止め規制・無期との差別禁止

法理論は置いておいて『恋愛の流動化』=無駄な高齢化抑制,という効果もあるのです。
実は,労働マーケットではこれと同じルールが現在運用されています。
有期雇用の無期転換ルールです。
要するに『長期化するなら労働市場に戻すor無期を約束しなさい』というものです。
デ・ファクトの制度は,恋愛市場でこれと同じ機能を発揮することになります。

5 結婚しないと犯罪となる実在ルール(青少年保護育成条例)

ごく限定的な局面で『結婚しないと犯罪』というルールが日本の現行法でも存在します。
都道府県ごとに定めている青少年(保護)育成条例によるルールです。

<結婚しないと犯罪となる実在ルール>

あ 対象行為

18歳未満の者との性的関係
→事実上『結婚(前提)』でない限り違法となる

い 適用される法令

東京都青少年育成条例18条の6 (他の道府県も基本的に同様)
『みだら』の解釈→一般的に『結婚(前提)以外』として運用されている

詳しくはこちら|青少年育成条例の『みだらな性交』の解釈と明確性の原則違反

本記事では,長期間交際した男女について『結婚しないと犯罪』という冗談のような発想を元に,これに近い実際の法律的な制度を紹介・説明しました。
単なる男女交際は,原則的に法的拘束の対象ではないのですが,このように状況によっては法的な拘束力(責任)が発生するのです。
実際に男女交際に関する問題や悩みに直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。