1 面会交流の拒絶・妨害×対抗策・予防策
2 面会交流拒絶×対抗策|調停調書や判決書がない場合
3 面会交流拒絶×対抗策|調停調書や判決書がある場合
4 面会交流妨害→親権者変更の審判申立|実例あり
5 面会交流の強制執行が可能な調停条項の条件
6 面会交流の強制執行を認めた合意内容
7 条項の具体例と面会交流の強制執行の可否
8 面会交流×工夫|強制執行が不可能な調停調書もある
9 調停調書作成時の工夫|予め強制執行を意識して表現を強化する

1 面会交流の拒絶・妨害×対抗策・予防策

離婚後に子供の別居する親は子供との『面会交流』が認められます。
しかし,同居する親が面会させない=妨害する,というケースが多いです。
面会交流の拒絶・妨害があった場合の対抗策があります。
詳しくはこちら|面会交流妨害への履行勧告と間接強制(間接強制金の相場)
本記事では対抗策やそうなる前の予防策の全体を説明します。

2 面会交流拒絶×対抗策|調停調書や判決書がない場合

協議離婚の場合,調停調書や判決書が作られていません。
また調停や裁判による離婚でも,和解調書に子供との面会交流のことが記載してない場合もあります。
この場合は,子供との面会について強制執行をすることはできません。
仮に離婚協議書を作成していたとしても,それでは強制執行はできません。
公的な書面が必要なのです。正式には債務名義が必要,ということになります。
なお,公正証書に面会交流のことが記載されていても,これでは強制執行できません。
公正証書は,原則的に金銭支払だけしか債務名義にはならないからです。

3 面会交流拒絶×対抗策|調停調書や判決書がある場合

調停離婚や裁判離婚において,最終的な書面である,調停調書や判決書に子供との面会について記載されている場合はちょっと複雑です。
ストレートに考えると,記載されているなら債務名義として,強制執行できるという結論になりそうです。
別項目;強制執行;債務名義;基本

しかし,ここで大きな問題があります。
この記載内容がしっかりしたものではないと,債務名義としては扱われません。
結果的に,強制執行ができないということになります。
調停調書や判決書の記載内容で変わってくるのです。

4 面会交流妨害→親権者変更の審判申立|実例あり

面会交流を監護親が『妨害』したために『親権者変更』がされた,という判例があります。
このケースでは『監護権者との分断』がなされたので『子供の引渡』まで含むものではありませんでした。
しかし,今後は具体的事情によっては『子供の引渡』まで認められる可能性も見えてきています。
詳しくはこちら|親権者・監護権者の『変更』|初回の指定・判断よりハードルが高い

5 面会交流の強制執行が可能な調停条項の条件

調停調書が子供との面会交流の強制執行ができるための条件を説明します。
調停調書でも判決書でも同じことですが,子供との面会交流について,明確な記載でないと債務名義としては扱われない→強制執行できない,となります。
どのような記載があれば,債務名義として認められる=強制執行できる,ということになるか,まとめます。

<面会交流の強制執行が可能な調停条項の条件>

あ 基本的事項

面会交流の合意の内容について
監護親がすべき給付の特定に欠けるところがない場合
→監護親に対し強制執行をすることができる

い 給付の特定

『ア〜ウ』が具体的に定められている
ア 面会交流の日時or頻度
イ 各回の面会交流時間の長さ
ウ 子の引渡しの方法

う 明確な義務(補足)

監護親の義務ということが文言上明確になっている
例;『・・・させる』という表現など
※最高裁平成25年3月28日;間接強制を認めた

6 面会交流の強制執行を認めた合意内容

実際に面会交流の強制執行(間接強制)が認められた合意内容の例を紹介します。

<面会交流の強制執行を認めた合意内容(※1)>

ア 面会交流の日程等
月1回,毎月第2土曜日の午前10時から午後4時までとし,場所は,長女の福祉を考慮して父の自宅以外の父が定めた場所とする
イ 面会交流の方法
長女の受渡場所は,母の自宅以外の場所とし,当事者間で協議して定めるが,協議が調わないときは,JR甲駅東口改札付近とする
母は,面会交流開始時に,受渡場所において長女を相手方に引き渡し,相手方は,面会交流終了時に,受渡場所において長女を抗告人に引き渡す
母は,長女を引き渡す場面のほかは,父と長女の面会交流には立ち会わない
ウ 長女の病気などやむを得ない事情により『ア』の日程で面会交流を実施できない場合は,父と母は,長女の福祉を考慮して代替日を決める
エ 母は,父が長女の入学式,卒業式,運動会等の学校行事(父兄参観日を除く。)に参列することを妨げてはならない
※最高裁平成25年3月28日;間接強制を認めた

7 条項の具体例と面会交流の強制執行の可否

子供との面会交流の強制執行ができる条件を満たす条項の例を説明します。
裁判例で強制執行の可否が判断された例をいくつか挙げます。

<条項の具体例と面会交流の強制執行の可否>

あ 当事者の表記(前提)

※甲=夫,乙=妻,丙=子供

い 強制執行できない例

乙は,2か月に1回程度,甲が丙と面接交渉することを認める。
その具体的な日時,場所,方法等については,丙の情緒安定に十分に配慮しつつ,甲・乙間で誠実に協議して定める。

う 強制執行できる例

乙は,甲と丙を,奇数月の第1土曜日,午前10時から午後3時まで,面会交流させる。
乙は,前記面会交流開始時刻において,○○鉄道○○駅○○改札口で丙を甲に受け渡すことにより,面会交流させる。
(具体例として前記※1もある)

え 両方の見解が生じる例

乙は,甲と丙が面会交流をすることを妨げない。
(強制執行を認めた裁判例もあるが否定される可能性もある)

8 面会交流×工夫|強制執行が不可能な調停調書もある

調停調書があるのに子供との面会交流について強制執行ができない,ということは実際によくあります。
現実的に,実務上,離婚の調停証書において,子供との面会交流について内容を明記しない(=強制執行できない)状態となっているものを目にします。
調停の話し合いにおいて,面会交流の内容明記について,要請と拒否の攻防が行われた末に辿り着いた結論,ということもありましょう。
現実的な子供の気持ち・コンディションを考えて,明確な内容を決定・特定すること自体が現実的ではない,ということもありましょう。
しかし一方で,代理人弁護士があまり深く意識せずに,そのような調停調書ができあがっている,ということも少なくないと思われます。

9 調停調書作成時の工夫|予め強制執行を意識して表現を強化する

調停成立時には,後から面会交流の強制執行ができない状態になっていたということを回避する方がベターです。

調停成立間際に,最後のシメ,として調停条項の文言の協議・調整をします。
この際,文言=形式的=大したことがないこと,と考えてしまう例があるようです。

しかし,少なくともその後面会交流に不履行があった場合の対抗措置まで配慮しておくべきです。
つまり,適切な具体的条項(文言)を提示・提案するとよいのです。
内容として不合理・非常識なものであれば別ですが,常識的な範囲のものであれば,相手方が深く意識せずにすんなり応じることも多いです。

本記事では,子供との面会交流の妨害を解消して,面会を実現するための方法や工夫について説明しました。
実際には,具体的な状況によって最適な工夫を考える必要があります。
実際の子供との面会の問題に直面されている方は,本記事の内容だけで判断せず,弁護士の法律相談をご利用くださることをお勧めします。