交通事故で私の自動車を修理することになりました。
修理の期間中にレンタカーを借りようと思います。
その費用も賠償されますか。
車の修理中の「代車使用料」が認められるのは一定の「必要性」がある場合のみです。
必要性が認められる場合でも,グレード,期間,については原則的に「最小限」となります。

1 自動車修理中の代車使用料は一定の必要性があれば認められる
2 代車のグレードは使い方に応じた最小限度
3 代車が認められる日数は修理期間プラスアルファ
4 代車使用料の負担と交渉のタイミングとの兼ね合いは絶妙
5 代車使用料について保険会社提示の基準があるが絶対ではない
6 代車使用料;交渉のタイミング×修理or買い替えの選択
7 代車使用料に関する事例(裁判例)

1 自動車修理中の代車使用料は一定の必要性があれば認められる

(1)代車使用料が損害に含まれるのは必要性がある場合のみ

自動車の修理中は不便になります。
この点,レンタカーを借りれば,その不便の穴埋めができます。
では,必ず代車使用料が損害として賠償請求できるようにも思いたいところです。
しかし,一定の必要性がないと,認められません。

(2)代車の必要性

単純に通勤で使う,というだけでは不十分です。
単純に通勤でマイカーを使っていた,というだけでは,代車使用が必要とまでは認められないでしょう。
このような場合は,電車その他の公共交通機関を使うという方法が残っているのです。
逆に,公共交通機関が使いにくい,というエリアでは,通勤のための代車が必要,と認められるでしょう。
また,元々自動車を営業用に使っていた,という場合は,代車使用が必要,と認められることが多いです。

<代車使用の必要性,の判断例>

あ 通勤

 →原則 ×
 →例外;公共交通機関の利用が困難なエリア・時間帯だと認められることもある。

い 営業車両

 →原則 ○
  営業用の場合,使わないと損失を被ります(逸失利益)。
  そこで,原則的に代車使用料の請求が認められます。

2 代車のグレードは使い方に応じた最小限度

代車使用料が認められた場合,車種,グレードによって金額が違います。
これについて説明します。

(1)グレードは最小限度

基本的には,最小限度,ということになります。
使用料の金額が最小という意味です。
グレードとしては,支障がない範囲で最低ということになります。
被害車両が使用されていた用途に応じて,支障の有無を考えます。
損害の解釈上はこのようになります。

必ずしも事故に遭った車と同一グレードとは限りません。

(2)代車のグレードを抑えた場合

高級車が事故に遭って,我慢して安いレンタカーで済ませた場合,差額について問題となります。

通常は,代車使用料として認められるのは安いレンタカー代までとなります。
結果的には我慢した分差額は反映されないことになります。
いわば,グレードを下げて我慢した分,損をした,という形になります。
これは,被害者の負う損害拡大防止義務という考え方に関連しています。
被害者だからと言って,過剰に請求するのは良くない,最小限に抑えるよう努力すべき,という考え方です。

一方,理論的には損害額は事故発生時に決まっている,と考えると,事後的な対応で金額が異なるのはおかしいです。
ですが,実務上は,事後的に損害内容が現実化している場合,現実化したものを重視する傾向にあります。

3 代車が認められる日数は修理期間プラスアルファ

代車使用が認めれた場合,レンタカーの利用期間として認められる期間について説明します。

被害車両の修理や買い替えのために必要不可欠な最小限の日数分が賠償の範囲とされます。
実際には,保険会社との交渉期間や考慮期間,といった余裕部分についても一定の日数が認められます。
ただし,非常に限定的です。

<代車の使用日数について判断した裁判例>

※名古屋地方裁判所 平成15年3月14日

あ 裁判所が認めた代車の日数

事故日~買い替え拒否と修理着工の通知 36日
修理相当期間 47日
→合計83日が認められました。

い 判断要素

事故~修理(着工に相当する時期)の間として36日が認められています。
これはやや長めです。

う 特殊事情

購入後まもなくの新車同様であった
→被害者が買い替えや買取を求めたことには理由がないことではなく,保険会社も検討に応じていた

4 代車使用料の負担と交渉のタイミングとの兼ね合いは絶妙

代車の必要性やグレードについて保険会社と意見が対立することが多いです。
このような場合,構わず高いグレードのレンタカーを借りてしまう,というニーズがあります。
しかし,一定のリスクを取ることになります。

仮に高いグレードのレンタカーを借りて使用した場合,後からそのレンタカー料金の全額までは認められない,ということが考えられます。
その一方で,我慢して安いグレードに抑えておいた場合,そのレンタカー料金が賠償の上限となります。
蓄積された過去の裁判例からある程度の予想はできますが,グレード・日数について認められる範囲を正確に判断できるとは限りません。
最後は,自腹リスクとグレードを下げるデメリットのバランスの問題となるのです。

5 代車使用料について保険会社提示の基準があるが絶対ではない

例えば,保険会社が次のように説明することがあります。

<保険会社の説明,主張の例>

『代車使用料の基準としては1日3000円で2週間までです』

しかし,保険会社の基準,というのは公的・公平なものではありません。
一般の方は,『公的な基準なのかな。仕方ないのか』と誤解される方が多いです。
しかし違います。

裁判例などになっている裁判所の判断は別です。
裁判所の判断の方が中立・公平なのは敢えて言うまでもないでしょう。

6 代車使用料;交渉のタイミング×修理or買い替えの選択

保険会社との交渉がなかなか進まず,修理するのか,廃車→買い替えにするか,決めかねる,ということがあります。

確かに,保険会社のせいで長引いたのだから,それによって加算されたレンタカー料金を保険会社が負担すべきだと考える方も多くいらっしゃいます。
しかし,理論的には,過去の事故の賠償問題と被害車両をどのように扱うかは別個の問題なのです。
平均的な交渉期間や考慮期間は代車が認められる期間に入りますが,ごく限定的な期間とされます。
だからといって,交渉を早く終わらせるために保険会社の不当な提案をのむのは良くないです。
一時的に,自腹となりますが,修理や買い替えを進めて代車料金の発生を食い止めてしまうのが得策でしょう。

7 代車使用料に関する事例(裁判例)

代車使用料に関して,裁判所が判断を行ったケースを紹介します。
特殊事例も含めて,参考となる裁判例を紹介します。

(1)東京地方裁判所 平成8年5月29日

代車期間=80日
(内訳)
 修理見積書作成期間=30日
 修理or買い替えの判断期間=10日
 修理期間=40日
特殊性;被害車両が社用車として接待等に用いられていた

<裁判所で認められなかった>

代車として使用した自動車
 =メルセデスベンツのリムジン車→日額4万円

<裁判所で認めた範囲>

国産最高級クラス→日額2万円

(2)東京地方裁判所 平成7年3月17日

被害車両=キャデラックリムジン

<裁判所で認められなかった>

代車として使用した自動車
 =キャデラックリムジン→488万0655円

<裁判所で認めた範囲>

国産高級車2万5000円/日×39日間
 =97万5000円

(3)名古屋地裁 平成19年7月11日

被害車両=ポルシェ
実際に代車として使用=トヨタマーク2

<裁判所で認められなかった>

ポルシェを借りたと仮定した場合に想定される金額

<裁判所で認めた範囲>

実際に支払った使用料(トヨタマーク2)