1 傷害事故における損害内容
2 傷害事故における慰謝料相場の基準表
3 自営業者の場合の休業損害
4 『収入』が特殊な場合の逸失利益算定

1 傷害事故における損害内容

傷害事故(ケガ)の損害賠償における『損害』の内容を説明します。
傷害を負ったことについて生じる損害を分類すると次のようになります。

<傷害事故による損害の内容>

あ 財産的損害賠償

・治療費
・付添人費用
・通院交通費
・休業損害
・逸失利益(後遺症の場合)

い 精神的損害賠償

・慰謝料
→入院や通院を余儀なくされたことによる精神的な苦痛に関する損害

2 傷害事故における慰謝料相場の基準表

(1)傷害事故の慰謝料とは

事故で負傷した場合に,実際に必要だった費用とは別の損害もあります。
純粋に,つらい思いをしたこと,つまり,精神的な苦痛です(民法710条)。
これを金銭に換算したものを慰謝料と呼んでいます。

裁判例の蓄積により,一定の基準が目安として使われています。
この基準は,入院や通院の期間を元に算定しています。
あくまでも基準です。
通院日数が極端に少ない場合など,例外的事情があるケースでは,単純な入通院日数だけでは計算しないこともあります。

(2)入通院慰謝料の基準表・表1(重傷)

入通院慰謝料;赤い本;別表1
入院 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 13月 14月 15月
通院 53 101 145 184 217 244 266 284 297 306 314 321 328 334 340
1月 28 77 122 162 199 228 252 274 291 303 311 318 325 332 336 342
2月 52 98 139 177 210 236 260 281 297 308 315 322 329 334 338 344
3月 73 115 154 188 218 244 267 287 302 312 319 326 331 336 340 346
4月 90 130 165 196 226 251 273 292 306 316 323 328 333 338 342 348
5月 105 141 173 204 233 257 278 296 310 320 325 330 335 340 344 350
6月 116 149 181 211 239 262 282 300 314 322 327 332 337 342 346
7月 124 157 188 217 244 266 286 304 316 324 329 334 339 344
8月 132 164 194 222 248 270 290 306 318 326 331 336 341
9月 139 170 199 226 252 274 292 308 320 328 333 338
10月 145 175 203 230 256 276 294 310 322 330 335
11月 150 179 207 234 258 278 296 312 324 332
12月 154 183 211 236 260 280 298 314 326
13月 158 187 213 238 262 282 300 316
14月 162 189 215 240 264 284 302
15月 164 191 217 242 266 286

(3)入通院慰謝料の基準表・表2(むちうち症などの場合)

入通院慰謝料;赤い本;別表2
入院 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 13月 14月 15月
通院 35 66 92 116 135 152 165 176 186 195 204 211 218 223 228
1月 19 52 83 106 128 145 160 171 182 190 199 206 212 219 224 229
2月 36 69 97 118 138 153 166 177 186 194 201 207 213 220 225 230
3月 53 83 109 128 146 159 172 181 190 196 202 208 214 221 226 231
4月 67 95 119 136 152 165 176 185 192 197 203 209 215 222 227 232
5月 79 105 127 142 158 169 180 187 193 198 204 210 216 223 228 233
6月 89 113 133 148 162 173 182 188 194 199 205 211 217 224 229
7月 97 119 139 152 166 175 183 189 195 200 206 212 218 225
8月 103 125 143 156 168 176 184 190 196 201 207 213 219
9月 109 129 147 158 169 177 185 191 197 202 208 214
10月 113 133 149 159 170 178 186 192 198 203 209
11月 117 135 150 160 171 179 187 193 199 204
12月 119 136 151 161 172 180 188 194 200
13月 120 137 152 162 173 181 189 195
14月 121 138 153 163 174 182 190
15月 122 139 154 164 175 183

3 自営業者の場合の休業損害

(1)自営業者の休業損害の考え方

自営業者の収入が減額した分,については休業損害として請求できます。
実務上は,この減収の算定が容易ではないことが多いです。
一定期間の休業がどのように収入に影響を及ぼしているかが分かりにくいのです。

自営業の場合,収益構造がバラエティに富んでいます。
特に,休業期間明けのリスタート時のハンディの判断が難しいです。
ハンディを考えなくて良いケースもあるでしょうけど,どう考えてもなしとは言えない,というケースもあります。

法的には相当因果関係と呼んでいます。
相当というのがちょっと分かりにくい言葉です。
一般的な用語に言いかえると,常識的という言葉になるのでしょう。
常識的に考えて,事故の影響と言える範囲当該事故によって普通及ぼされる範囲という形です。

(2)自営業者の休業損害の裁判例

自営業者の休業損害を算定した裁判例を紹介します。

<自営業者の休業損害に関する裁判例>

あ 寿司屋経営者が事故により負傷したケース

東京地方裁判所 昭和61年10月30日
(あ)事案内容
寿司屋経営者が事故で負傷
→一時閉店
→営業再開時に新聞折り込み広告を掲出

(い)裁判所が認めた休業損害
閉店期間分の収入+新聞折り込み広告の広告費

い 歯科医(開業医)が事故で負傷したケース

名古屋地方裁判所 平成14年9月27日
(あ)事案内容
歯科医(開業医)が事故で負傷
→3か月間休業

(い)裁判所が認めた休業損害
休業期間分の収入+診療再開後の『減収』分の8割

4 『収入』が特殊な場合の逸失利益算定

被害者の収入の評価,特定が単純ではない場合の逸失利益や休業補償の算定について説明します。
具体的には,被害者が無職や,主婦や学生で元々収入がなかったという場合です。

このような場合は,一定の方法(基準)を用いて算定します。
収入をストレートに算定上用いることができない場合,一定の例外的算定方法を用います。

<特殊な収入→例外的算定方法>

あ 無職の場合

無職の内容によって変わります。
例えば,労働できる能力と意思を持っていたにもかかわらず、たまたま失業中だったような場合には、逸失利益が認められます。
しかし、働く意思が見られない浮浪者や利子だけで生活している者などには、逸失利益は認められません。

い 幼児・小中学生の場合

幼児や小学生であっても,逸失利益が発生しますので請求が可能です。
裁判所は,18歳~67歳までの49年間を働ける期間として,労働者の平均賃金を基準として逸失利益を計算します。

う 高校生・大学生の場合

高校生や大学生であっても,逸失利益が発生しますので請求が可能です。
事故当時,高校生であっても,大学進学が見込まれていた場合は
大卒労働者の平均賃金を基準として逸失利益を計算しますし,
事故当時,大学生であっても,企業に内定していた場合には,
その企業の平均賃金を基準として逸失利益を計算します。