【各種決議の無効確認・不存在確認訴訟(形成か確認か・確認の利益)】

1 各種決議の無効確認・不存在確認訴訟(形成か確認か・確認の利益)

「確認訴訟」といえば通常、権利や義務の存否を確認するものです。確認訴訟の中には、決議の無効や不存在を確認する、という特殊なものもあります。これに関して法的な問題がありますので、本記事で説明します。

2 決議の無効・不存在確認の可否→可能

基本的に各種「決議」の無効や不存在を確認する訴訟は認められています。中には、法令上、無効確認訴訟や不存在確認訴訟が規定されているものもありますが、規定がない決議についても無効や不存在確認訴訟は可能です。

決議の無効・不存在確認の可否→可能

あ 確認訴訟の可否

会議体の決議の効力を争う訴訟は、実体法の規定の有無にかかわりなく確認の訴えとして認められる

い 実体法の規定例

株式会社における株主総会決議の不存在または無効の確認を求める訴え
※会社法830条
一般社団法人または一般財団法人の社員総会および評議員会の決議の不存在または無効の確認を求める訴え
※一般社団法人及び一般財団法人に関する法律265条

3 確認の訴え・形成の訴えの分類

(1)株主総会決議無効・不存在確認→「確認の訴え」傾向(概要)

各種の決議の無効や不存在を確認する訴訟については法的性質の分類の問題があります。それは、「確認の訴え」か「形成の訴え」のどちらか、という問題です。「◯◯確認訴訟」なので日本語としては(字面だけでは)「確認の訴え」だと思ってしまいますが、これらは専門用語なので特有の意味があるのです(ネーミングが悪いともいえます)。
「形成の訴え」とは、判決によって初めて無効という効果が生じるという特殊なものです。
この点、株主総会決議の無効、不存在確認訴訟については、会社法830条が定めていますが、確認の訴えに分類する見解が一般的ですが、形成の訴えに分類する見解もあります。
詳しくはこちら|株主総会決議不存在・無効確認の訴え(会社法830条)の趣旨・性質・手続
なお、決議の「取消」訴訟は、間違いなく「形成の訴え」にあたります。
詳しくはこちら|形成の訴えの分類(実体法上の形成の訴え・訴訟法上の形成の訴え・形式的形成訴訟)

(2)他の決議→「確認の訴え」傾向(判例)

最高裁判所が「形成の訴え」ではなく「確認の訴え」であると判断した(と読める)ものも多くあります。要するに、「無効を宣言する判決」がなくても無効であると主張できる、というものです。

他の決議→「確認の訴え」傾向(判例)

あ 消費生活協同組合の総会決議無効・不存在確認

消費生活協同組合法による協同組合の総会決議が当然に無効または不存在の場合には、訴訟の前提問題として、この総会の決議の無効または不存在の判断をすることができる
※最判昭和46年12月17日

い 取締役会決議無効確認

裁判所は、取締役会決議無効確認の訴えが確認の訴えとして適法であることを前提とした判断を示した
※最大判昭和47年11月8日

う 学校法人理事会決議無効確認

裁判所は、学校法人の理事会等の決議無効確認の訴えが確認の訴えとして認められることを示した
※最判昭和47年11月9日

え 医療法人社員総会決議不存在確認

裁判所は、医療法人の社員総会決議不存在確認の訴えが確認の訴えとして認められることを示した
※最判平成16年12月24日

お 宗教法人檀信徒総会決議不存在確認

裁判所は、宗教法人の檀信徒総会決議不存在確認の訴えが確認の訴えとして認められることを示した
※最判平成17年11月8日

4 訴えの利益

(1)確認の利益の特殊性→「現在」ではなく「過去」

会議体の決議の効力を争う訴訟は、「確認訴訟」の中でも特殊といえます(前述)。理論面では、過去の決議の効力の判断を求める、というところです。一般的に確認する対象は現在の権利関係であることが必要とされているのです。では、過去の決議の確認はできないかというと、そうではありません。

確認の利益の特殊性→「現在」ではなく「過去」

あ 確認の利益の基本(前提)

確認の利益は、現在の法律関係の確定を求める場合にのみ認められる

い 会議体の決議の効力を争う訴訟の確認の利益→肯定方向

会議体の決議の効力を争う訴訟が現在の法律関係の確定を求めるものかという疑義があるが、結論としては確認の訴えとして認められている

(2)訴えの利益の判断基準→紛争解決に必要

前述のように、過去の決議の効力を判定するというところは特殊ですが、その結果、現在の権利関係についての紛争が解決する、というメカニズムがあります。当事者としては現在の紛争を解決するために裁判をするのですから、当然の構造です。このように結果的に現在の権利関係に影響しているので、例外的に過去のある時点における法的判断でも確認の利益はあるということになるのです。

訴えの利益の判断基準→紛争解決に必要

あ 決議の存否確定の必要性→紛争解決に必要

会議体の決議の存否(あるいは効力)を判決をもって確定することが、当該決議から派生した現在の法律上の紛争を解決し、当事者の法律上の地位ないし利益が害される危険を除去するために必要な場合に、確認の訴えが認められる

い 「最も」適切要件→否定

(ア)最高裁判所昭和47年11月9日判決では、確認の訴えが認められる要件として最も適切かつ必要という限定を付していた(イ)最高裁判所平成16年12月24日判決および平成17年11月8日判決では、最もという限定的な表現を使用していない(ウ)会議体の決議の効力を争う訴訟において、現在存在する法律上の紛争を解決することに資する場合であれば確認の利益を肯定する趣旨と解される

(3)確認の利益が認められる実質的根拠

形式的には例外となる「過去の」判断を許容する実質的理由を整理します。法人などの会議体の1つの決議はその後、多くの権利義務、多くの人(関係者)の権利義務に影響します。このような構造があるので、伝統的な確認の利益の各項目(要件)を満たすといえるのです。

確認の利益が認められる実質的根拠

あ 会議体の決議の性質→法人関係の基礎

法人の意思決定機関である会議体の決議は、法人の対内および対外関係における諸々の法律関係の基礎となるため、確認の訴えの対象として適切である

い 決議の効力に関する疑義→現在の紛争発生

会議体の決議の効力に関する疑義が機縁となって、この決議から派生した各種の法律関係につき現在紛争が存在することがあるため、確認の訴えが必要となる

う 決議効力の既判力確定→紛争解決に有効

会議体の決議自体の効力を既判力をもって確定することが、紛争の解決のために有効適切な手段である場合があるため、確認の訴えが認められる

え 対世効の前提→第三者への影響

会社自体を被告とする会議体の決議の効力を争う訴えの場合、認容判決が確定した場合に第三者に対する対世効を肯定することを前提としている

(4)確認の利益の内容(訴え提起の要件)

会議体の決議の無効、不存在確認訴訟における確認の利益を、伝統的な3要件に沿って整理します。

確認の利益の内容(訴え提起の要件)

あ 即時確定の利益→原告に必要

会議体の決議の効力を争う訴訟を提起する原告に即時確定の利益が必要である

い 法的地位の不安危険→決議により発生

会議体の決議によって直接自己の法的地位に不安危険が生じている

う 不安・危険の除去→確認判決で可能

確認判決により、会議体の決議によって生じた不安・危険を除去できる

5 参考情報

参考情報

※秋山幹男ほか著『コンメンタール民事訴訟法Ⅲ 第2版』日本評論社2018年p64〜65

本記事では、任意の文字列1について説明しました。
実際には、個別的事情により法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。
実際に任意の文字列2に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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【株主総会決議不存在・無効確認の訴え(会社法830条)の趣旨・性質・手続】

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