【取締役の利益相反取引のうち直接取引の具体例】

1 取締役の利益相反取引のうち直接取引の具体例
2 利益相反取引の典型例
3 利益相反取引と判断されたその他の実例

1 取締役の利益相反取引のうち直接取引の具体例

取締役と会社との間の利益相反取引は会社法で制限されています。
詳しくはこちら|取締役の競業取引・利益相反取引の制限(会社の承認・全体像)
この利益相反取引に該当するかどうかを判断しにくいケースも多いです。
この点,利益相反取引は,直接取引と間接取引の2つに分けられます。
本記事では,利益相反取引のうち直接取引の具体例を説明します。

2 利益相反取引の典型例

会社と取締役との間の経済的な取引は,基本的に利害の対立を含みます。そこで原則的に利益相反取引に該当します。
財産を譲渡すると,(無償でない限り)財産権や金銭がそれぞれ相手方に移転することになります。利益相反取引の典型です。
金銭の貸借では,経済的にはプラスマイナスゼロですが,財産を使用できるという利益が移転するので,これも同様に利益相反取引に該当します。

<利益相反取引の典型例>

あ 会社から取締役への財産の譲受

ア 典型例 会社の製品を取締役に譲渡すること
イ 裁判例 取締役に対する債権譲渡
※山口地裁下関支部昭和39年1月22日

い 取締役から会社への財産の譲渡
う 金銭の貸借

取締役から会社に対する金銭貸付
※最高裁昭和38年12月6日
※江頭憲治郎著『株式会社法 第7版』有斐閣2017年p444

3 利益相反取引と判断されたその他の実例

前記のような典型的な取引以外にも利益相反取引に該当するものは多くあります。判例・裁判例として示されたものを紹介します。
少し変わっているものもあります。いずれにしても,経済的な価値(利益)の移転が生じる場合は広く利益相反取引に該当するのです。

<利益相反取引と判断されたその他の実例>

あ 会社に対する債権の更改

取締役が会社に対して有する債権について
債権者の交替による更改
※大判大正4年10月21日

い 会社の有する債権の更改

債権者を会社から取締役にする更改
※大判大正8年10月21日

う 有価証券の無償寄託

会社に対する第三者保有の有価証券の無償寄託
※大判大正4年10月21日

え 会社所有不動産の賃貸

会社所有の不動産を取締役に対して賃貸すること
※東京地裁昭和50年3月20日

本記事では,会社と取締役の利益相反取引のうち直接取引の具体例を説明しました。
実際には,個別的な事情によって利益相反取引に該当するかどうかの判断が違ってきます。
実際に会社と取締役の間の取引に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINE
【取締役の競業取引・利益相反取引の制限(会社の承認・全体像)】
【取締役の利益相反取引のうち会社の承認が不要な取引】

関連記事

無料相談予約 受付中

0120-96-1040

受付時間 平日9:00 - 20:00