【分散型取引所(DEX)への仮想通貨交換業の規制や所得税の問題】
1 分散型取引所(DEX)への仮想通貨交換業の規制や所得税の問題
ブロックチェーンや仮想通貨に関するテクノロジーは日々進化を続けています。
発展・普及が期待されるテクノロジーの1つに、分散型取引所(DEX)があります。
本記事では、DEXに仮想通貨交換業の規制が適用される可能性がある、という問題や所得税の課税について説明します。
2 分散型取引所(DEX)の意味
DEXに仮想通貨交換業の規制が適用されるかどうかは、DEXの仕組みが大きく影響します。
まずはDEXの機能・仕組みを整理しておきます。
従来は、仮想通貨と法定通貨、あるいは仮想通貨同士を交換するには特定の事業者が運営するサービスを利用していました。これを中央集権型取引所と呼びます。
DEXはブロックチェーン上で異種の仮想通貨(トークン)の交換を実行するという仕組み(機能)です。交換というサービス(機能)を特定の事業者が管理しているわけではないのです。このような仕組みから分散型と呼ばれるのです。
分散型取引所(DEX)の意味
あ 分散型取引所の意味
ブロックチェーンの上で仮想通貨と別の仮想通貨の交換をする機能
仮想通貨の預け入れ・引き出し・交換(買手と売手の最適化されたマッチング)を行うことができる
い 名称と略称
(自律)分散型取引所と呼ばれる
DEX = Decentralized Exchanges
う 特徴(トラストレス)
DEXでの取引(売買)の履歴はブロックチェーン上に記録される
半永久的に改ざん不可能な状態で記録される
→信頼できる管理者がいなくても取引ができる(トラストレス)
え 従来の交換サービス(比較)
従来の仮想通貨の交換サービスを中央集権型取引所と呼ぶ
3 DEXへの仮想通貨交換業の規制の適用
仮想通貨はトラストレスであることが特徴ですが、仮想通貨同士の交換もトラストレスな状況で実現するのがDEXです。
実際にDEXが普及することを想定すると、通常はアプリやウォレットを介することになります。つまり、ユーザーがアプリ(ウォレット)を操作すると、アプリの機能としてDEX(ブロックチェーン)への接続(仮想通貨の預け入れ・交換の指示・受け取り)が行われます。
ということは、アプリを提供する者は仮想通貨の交換の媒介や取次ぎ(とこれに伴う仮想通貨の管理)を行ったといえる可能性もあるのです。仮想通貨の交換の媒介や取次ぎは仮想通貨交換業の定義に該当します。
そうするとアプリやウォレットの提供者は仮想通貨交換業者登録が必要ということになってしまいます。
DEXへの仮想通貨交換業の規制の適用
あ DEXの機能
DEXは仮想通貨同士の『交換』を行う機能がある
→DEXを組み込んだアプリやウォレットは『い』の『ア・イ』のいずれかに該当する可能性がある
い 仮想通貨交換業の定義(の一部)
ア 仮想通貨と他の仮想通貨との交換の媒介or取次ぎor代理をすることイ 仮想通貨と他の仮想通貨との交換の行為に関して利用者の仮想通貨の管理をすること
う 規制の適用
『い』の『ア・イ』はいずれも仮想通貨交換業である
→(該当した場合)アプリやウォレットの提供のためには仮想通貨交換業者登録が必要となる
仮にアプリやウォレットが日本国外で作製されたものでも変わらない
4 DEXと所得税課税の問題
DEXは、仮想通貨交換業の規制とは別の問題も生じます。
現在の国税庁の解釈では、仮想通貨同士の交換(コインtoコイン)についても所得として認識し、所得税の課税対象となります。
DEXの機能としては、瞬時に多数回の仮想通貨同士の交換を行うことも想定されています。そこで、所得税の算定をするために、個々の交換の内容やそれぞれの交換の時点における日本円換算レートを把握してすべてを集計することが必要になります。
現実的に膨大な手間がかかりますし、そもそも正確に個々の交換のタイミングや内容を把握できるとは限りません。
現在の解釈を前提とすると、DEXの機能の活用ができないような状況であるといえます。
本記事では、分散型取引所(DEX)への仮想通貨交換業の規制や所得税の問題を説明しました。
実際には、具体的な仕組みによって規制の適用の有無は違ってきます。
本記事は一般的な説明です。個別の事案にそのまま当てはまるとは限らず、一見似ている事案でも、事情が異なれば結論は異なります。個別的事情により、法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。本記事でご説明したものと同様の問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。


