1 私立大学の運営や私学助成金についての政府や納税者による監督
2 私立学校法による監督
3 私学助成法による監督
4 補助金適正化法による監督
5 会計検査院による監督
6 総務省行政評価局による監督
7 納税者vsタックスイーターという構図
8 納税者による法的統制の可能性

1 私立大学の運営や私学助成金についての政府や納税者による監督

私立大学は政府からの補助金(私学助成金)の交付を受けています。
詳しくはこちら|私立大学の補助金(私学助成金)の基本(公的規制・減額や不交付)
税金を財源とする公金の交付を受けているため,私立大学は政府や納税者の監督を受けています。このような監督を受けていることにより,私学助成金の交付が憲法違反とならずに済んでいるといえます。
詳しくはこちら|私立大学の補助金(私学助成金)の合憲性(公の支配に属するか否か)
本記事では,私学助成金についての監督の内容を説明します。

2 私立学校法による監督

私立大学は,私立学校法によって,国や地方自治体の監督を受けます。

<私立学校法による監督>

あ 監督の主体

国or地方自治体

い 権限

業務・会計の状況に関し報告を要求できる
予算について必要な変更を勧告できる
役員の解職を勧告できる
※私立学校法59条

3 私学助成法による監督

私立大学は,私学助成法によって,国(文部科学大臣)や地方自治体(知事)の監督を受けます。

<私学助成法による監督>

あ 監督の主体

文部科学大臣or都道府県知事

い 権限

ア 報告徴収・質問検査権限
イ 収容定員(超過)の是正命令
ウ 予算の変更命令
エ 役員の解職勧告
オ 公認会計士・監査法人の会計監査を受ける要請
※私学助成法12条,14条3項

4 補助金適正化法による監督

私立大学は,補助金適正化法により,国(文部科学大臣)の監督を受けます。

<補助金適正化法による監督>

あ 監督の主体

文部科学大臣

い 権限

ア 立入・検査権限
※補助金適正化法23条,31条3号
イ 補助事業の遂行等を罰則付で命令する権限
※補助金適正化法13条31条1号
ウ 罰則付で報告義務を課す権限
※補助金適正化法31条2号

5 会計検査院による監督

私立大学は,会計検査院法により,会計検査院の監督を受けます。

<会計検査院による監督>

あ 検査

会計検査院による会計検査
『選択的検査』として実施する

い 対象となる学校

経常費補助金を受けている私立大学
※会計検査院法23条1項3号

6 総務省行政評価局による監督

政府の各部署(各府省)は,総務省行政評価局の調査などの一定の範囲の監督を受けます。私立大学への補助金の交付も,当然,政府の業務ですから,総務省行政評価局による調査や行政評価を受けます。
間接的に私立大学へのコントロールが及ぶといえます。

<総務省行政評価局による監督>

あ 総務省行政評価局の性格

政府内における第三者的な評価専門機関

い 監督内容

各府省の業務の実施状況について,調査(行政評価・監視)を実施する
各府省の課題や問題点を実証的かつ総合的に把握・分析し,改善策を勧告する

以上のいろいろな監督の内容には強弱がありますが,いずれも私立大学に対する公的な監督制度(機能)です。

7 納税者vsタックスイーターという構図

私学助成金は公金があてられています。つまり,財源は税金です。負担しているのは納税者(国民)です。そこで,補助金適正化法には,税金の無駄遣い(非効率な使用)がないように,という注意的な規定があります。

<納税者vsタックスイーターという構図>

あ 根本的構造

納税者は,私学補助金の財源を負担している

い 非効率な使用への警戒

ア 各省各庁の長は,補助金等が国民から徴収された税金その他の貴重な財源でまかなわれるものであることに特に留意する
イ 補助金等が法令及び予算で定めるところに従って公正かつ効率的に使用されるように努めなければならない
※補助金適正化法3条

8 納税者による法的統制の可能性

私学助成金を実質的に負担する納税者が私立大学を監督するというのが素朴な発想です。
法律的には,私学助成金の交付について,政府に監査(調査)を求める住民監査請求の手続や,裁判所に適法性の判断を求める住民訴訟の手続があります。
しかしこのような納税者が直接監督する手続はいずれも事後的なものだけです。私学助成金の交付の前の段階で直接関与する手続はありません。
納税者は問題が大きくなった時にだけ参加できると言えます。そこで,運営への参加の機会として不十分な制度設計であるという指摘もあります。

<納税者による法的統制の可能性>

あ 法的統制手続

ア 住民監査請求
イ 住民訴訟
※地方自治法242条,242条の2
※碓井光明『公的資金助成法精義』信山社p428〜
※井上元『住民訴訟の上手な活用法』民事法研究会

い 法的統制の不合理性

納税者による法的統制(あ)より前段階の監督・是正の手続は
文部科学大臣・私学事業団の理事長によるものしかない
納税者がこの(事前の)監督・是正に関与する法的手続がない

本記事では,私立大学の補助金(私学助成)に関する公的機関や納税者による監督の手続を説明しました。
実際に私立大学の補助金に関する具体的問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。