1 民事訴訟法の特別代理人の選任の要件
2 訴訟行為を予定しているという選任要件
3 法定代理人不在or代理権行使不能の選任要件
4 遅滞のための損害発生リスクの選任要件

1 民事訴訟法の特別代理人の選任の要件

民事訴訟法では特別代理人を選任する制度があります。
特別代理人を選任できる要件は条文に記載されています。
詳しくはこちら|訴訟無能力者への提訴では民事訴訟法の特別代理人の選任ができる
しかしこれについてはいろいろな解釈があります。
本記事では,特別代理人の選任要件に関する解釈を説明します。

2 訴訟行為を予定しているという選任要件

特別代理人の選任要件の1つに,未成年者・成年被後見人に対する訴訟行為を予定しているというものがあります。
これについての解釈として,代表者が不明の法人も含まれます。
実際に実体の存在がよくわからない法人に対する提訴で特別代理人選任が活用されています。

<訴訟行為を予定しているという選任要件>

あ 条文規定(選任要件の1つ)

未成年者or成年被後見人に訴訟行為をしようとする場合である

い 『訴訟行為』の解釈

訴えの提起が典型例である
支払督促・保全処分・破産申立も含まれる
訴訟係属後のあらゆる段階における訴訟行為を含む
第1審だけでなく上訴審における訴訟行為を含む
※賀集唄ほか編『基本法コンメンタール 民事訴訟法1 第3版補訂版』日本評論社2012年p104

う 『未成年者又は成年被後見人』の解釈

ア 基本的な解釈
広く法律上みずから訴訟行為をなし得ない者を含む
※賀集唄ほか編『基本法コンメンタール 民事訴訟法1 第3版補訂版』日本評論社2012年p104
イ 具体例
成年後見開始の審判を受けていないが意思能力を欠く常況にある者
※東京高裁昭和62年12月8日
※中野貞一郎ほか編『新民事訴訟法講義 第2版補訂2版』有斐閣2008年p114
相続人不明の相続財産
※大決昭和6年12月9日
代表者の存在しない法人
※最高裁昭和41年7月28日

3 法定代理人不在or代理権行使不能の選任要件

特別代理人の選任要件の1つに,法定代理人がいない・代理権を行うことができない,というものがあります。
このうち代理権を行うことができないとは,法律上,権利行使が禁じられていることをいいます。利益相反による制限が典型例です。

<法定代理人不在or代理権行使不能の選任要件>

あ 条文規定(選任要件の1つ)

法定代理人がいないor代理権を行うことができない

い 代理権行使不能の意味

ア 法律上の不能(肯定)
代理権を行うことができないとは
法律上行使しえない場合をいう
※民法826条,860条;利益相反行為
イ 事実上の不能(否定)
事実上行使しえない場合を含まない
※賀集唄ほか編『基本法コンメンタール 民事訴訟法1 第3版補訂版』日本評論社2012年p104

4 遅滞のための損害発生リスクの選任要件

特別代理人の選任要件の1つに,遅滞によって損害が発生するおそれがある,というものがあります。
逆にいえば,予定している手続が,特に急ぐものであれば,この要件に該当することになりやすいです。
仮差押や仮処分(民事保全)や,消滅時効完成が近い時期の提訴が典型例です。

<遅滞のための損害発生リスクの選任要件>

あ 条文規定

遅滞のため損害を受けるおそれがある

い 遅滞のための損害発生の解釈

正式の方法で法定代理人の選任をまっていたのでは
申立人が損害を受ける
例=利益相反行為に関する特別代理人
※民法826条

う 遅滞により損害が発生する典型例

ア 保全処分申請
イ 時効中断のために訴えを提起する

え 証拠保全への適用除外

証拠保全については
民事訴訟法35条の特別代理人の選任は適用されない
裁判所の裁量で特別代理人を選任することはある
※民事訴訟法236条
※賀集唄ほか編『基本法コンメンタール 民事訴訟法1 第3版補訂版』日本評論社2012年p104

本記事では,民事訴訟法の特別代理人の選任の要件の内容や解釈を説明しました。
実際には,個別的事情によって扱いが違うということもよくあります。
実際に特別代理人の利用をお考えの方は,本記事の内容だけで判断せず,法律相談をご利用くださることをお勧めします。