【CtoCカーシェアと法規制(共同使用・使用者・『業』の解釈と考察)】

1 CtoCのカーシェアと法規制(総論)
2 カーシェアと有償貸渡の規制
3 カーシェアと『共同使用』
4 カーシェアと『使用者』の適用除外
5 『業』の解釈と判定(概要)
6 自動車シェアリングと現行法の規制(考察)

1 CtoCのカーシェアと法規制(総論)

現在はシェアリングエコノミーが普及してきています。資本主義に大きな変化をもたらすという予想もあるくらいです。
詳しくはこちら|シェアリング・エコノミー|基本|定義・マーケット・法規制
その1つにカーシェア=自動車のシェアリングがあります。
個人の自家用車は,通常『乗ってない時間』が非常に大きいです。
この『アイドルタイム』を有効活用するものです。
個人の自動車について貸す人と借りる人をマッチングするというものです。
事業者が個々のユーザーに自動車を貸すというレンタカーと同じ意味での『シェアリング』とは違います。
詳しくはこちら|ワンウェイ(乗り捨て)方式レンタカー・カーシェアと車庫法
ここでは,CtoCのマッチングによる自動車の貸し借りを『カーシェア』と呼びます。
本記事では,カーシェアと法規制の関係を説明します。

2 カーシェアと有償貸渡の規制

カーシェアは『自家用自動車の有償貸渡』に該当する可能性があります。
該当するかどうかの判断に影響する事項を整理します。

<カーシェアと有償貸渡の規制>

あ 自家用自動車の有償貸渡の規制(概要)

自動車を業として有償で貸し出すこと
→許可が必要である
詳しくはこちら|自家用自動車の有償貸渡(レンタカー)の規制(基本)

い カーシェアとの関係(基本)

自動車を有料で貸すことについて
→繰り返す前提であれば『あ』に該当する可能性がある
『う』の事項がこの判断に影響する

う 規制適用の有無に影響する検討事項

ア 廃止された『共同使用』の許可制(後記※1イ 『使用者』が借りる場合の適用除外規定(後記※2ウ 『業』の解釈と判定(後記※3

最後の,判断に影響する3つの事項について,以下,順に検討します。

3 カーシェアと『共同使用』

実は過去に『自家用自動車の共同使用』が普及し,法規制が作られたことがありました。現在は廃止されています。
カーシェアと似ている印象があります。
しかし過去の規制の実態・内容をみると現在のカーシェアとは異なるということが分かります。
また『規制が廃止された』ことと『現在存在する規制の適用』は関連しない,ということもできます。

<カーシェアと『共同使用』(※1)

あ 単純な発想

カーシェアについて
『複数人で1台の自動車を使用する』ものである
『共同使用』に該当する
現在は『共同使用』の許可制は廃止されている
→法規制を受けない

い 詳細な『共同使用』の考察

過去に『共同使用』の許可が用いられた実例について
→複数人の占有や支配が混在する期間がある程度継続するものであった
詳しくはこちら|自家用自動車の共同使用許可の廃止(平成18年改正の経緯)
→現在のカーシェアは該当しない

う サービス規約と実態

現行サービスの会員規約として
『共同使用』の期間を『6か月以上』と規定するものがある
詳しくはこちら|シェアリング|リアルサービス|適法性の確保方法|利用規約・説明文
→しかしこの規定だけで
『複数人の占有や支配』の存在が認められるわけではない

え 『共同使用』の解釈と現在の規制との関係

『共同使用であれば他の規制を受けない』という規範はない
=『有償貸渡の禁止に該当しない』というわけではない
→純粋に『有償貸渡の禁止』に該当するか否かを判断する

4 カーシェアと『使用者』の適用除外

自家用自動車の有償貸渡の規制は『借受人』が『使用者』である場合は適用されません。
『使用者』は英語にするとユーザーであり,これを『自動車を借りて運転する人』と考えると,一律に規制は適用されないことになります。
『使用者』の意味は,平成18年の法改正の経緯にさかのぼるとみえてきます。

<カーシェアと『使用者』の適用除外(※2)

あ 単純な発想

カーシェアについて
『複数人で1台の自動車を使用する』ものである
『借受人』が『使用者』に該当する
→有償貸渡の適用除外である
※道路運送法80条1項ただし書

い 詳細な考察

『使用者』とは自動車リースにおける顧客が想定されていた
=自動車登録(車検証)上の『使用者』に相当する
通常は排他的な現実の占有をする者のことである
詳しくはこちら|自動車リースの規制廃止(『使用者』への有償貸渡の適用除外)
『使用者』とは,実質的な所有者といえる
※最高裁昭和46年1月26日
詳しくはこちら|特殊な事情と運行供用者責任の判断(所有権留保・レンタカー・盗難車)

『一時的に自動車を借りて運転する人』は『使用者』にはあたらないと思えます。

5 『業』の解釈と判定(概要)

最後に『業』の解釈と判定でカーシェアが『有償貸渡』の規制の適用の有無が決まります。
これは確実・明確に判定できるものではありません。

<『業』の解釈と判定(概要;※3)>

あ 条文規定

有償貸渡が『業として』でなければ規制は適用されない
※道路運送法80条1項

い 『業』の解釈論(概要)

明確に判定できる基準はない
反復・継続・社会性などの評価により判定する
詳しくはこちら|業法一般|『業』解釈論|基本|反復継続意思・事業規模・不特定多数

6 自動車シェアリングと現行法の規制(考察)

現在は実際に,カーシェアのマッチングサービスが普及しています。
詳しくはこちら|カーシェア(自動車の貸し借り)全般のメリットと普及
一方,法規制は古いままであり,適用の有無には不明確なところがあります。
『グレーゾーンはベンチャーの聖域』の代表例のような状況です。
詳しくはこちら|グレーゾーンはベンチャーの聖域|濃いグレー・薄いグレー|大企業バリアー
早急に適切な規制内容を検討・判断して法整備をすべきです。
ところで平成18年の法改正の前には『共同使用の許可制』がありました。
これを復活させる,という安直な発想は合理性がありません。
共同使用の規制があった理由は『運転の対価を得る=白タク』の出現のリスクです。
詳しくはこちら|自家用自動車の共同使用許可の廃止(平成18年改正の経緯)
現在のカーシェアのサービスでは,実際にこのようなことが生じているということは聞きません。
リスクがないなら規制することは不適切です。
保険の利用などの最小限のルールにとどめるべきです。
むしろ,規制の適用についての不明確な部分をなくすということの方が社会的に大きなメリットがあると思います。

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