1 住民票を閲覧できる人の範囲は限定された
2 住民基本台帳法違反の罰則
3 住民基本台帳法改正前の営業目的での住民票閲覧
4 販売促進のための見込顧客情報取得方法
5 戸籍事項証明書の交付請求ができる者
6 従前の戸籍情報の取得(概要)
7 弁護士等の職務上請求はスムーズにできる
8 固定資産税評価証明書の取得|利用権を持つ者・提訴で必要な場合

1 住民票を閲覧できる人の範囲は限定された

(1)住民基本台帳の閲覧,写し交付請求者の範囲のまとめ

一般に『住民票』と呼ばれているものは,正式には『住民基本台帳』と呼びます。
略して『住基台帳』とも呼びます。
最近,住民基本台帳をネットワーク化することが進められています。この略称『住基ネット』はよく知られていると思います。
住民基本台帳に,住所,氏名,生年月日などの情報が記録されているのです。
この情報の閲覧,写しの交付請求をできる者については,住民基本台帳法に詳しく規定されています。

<閲覧・写しの交付請求権者>

主体 閲覧 写しの交付請求 符号
国,地方公共団体 11条 12条の2
個人,法人 11条の2(※1)
本人等 ↑に含まれる 12条
本人等以外の者 12条の3(※2)

※表の説明
条文があるところ=認められる
☓=認められない
※1 公益等の目的限定(11条の2)
※2 自己の権利行使などの目的限定,弁護士等の職務上請求を含む(12条の3)

(2)住民基本台帳の閲覧,写し交付請求者のそれぞれの具体的対象者

上記の表に掲載した住民基本台帳法の条文ごとに内容を説明します。

<住民票の写し交付などができる者の規定>

あ 12条1項

住民票に記載されている者

い 12条の3第1項1号

自己の権利行使,義務履行のために住民票の記載事項を確認する必要がある者(※4)
貸金返還請求,明渡請求など,相手に対して何らかの請求権を持っていることが前提である

う 12条の3第2項,3項

特定事務受任者が業務遂行上必要な場合
職務上請求のことである(後記※3)

(3)ダイレクトメール送付目的での閲覧,写し交付請求はできない

前記の表の『符号』に沿って説明します。

<一般の企業がダイレクトメールを送るための閲覧や写し交付請求>

前記『ア』→国,地方公共団体ではないからNG
前記『イ』→公益目的ではないからNG
前記『ウ』→情報の『本人』ではないからNG
前記『エ』→『自己の権利行使』などの目的がないためNG

結論として,ダイレクトメール送付目的での住民基本台帳の情報取得は不可能,ということになります。

2 住民基本台帳法違反の罰則

<事例想定>

『目的』を偽って申告し,不正に住民基本台帳の情報を得た

このような不正行為は,罰則の対象とされています。

<不正な情報取得に対する罰則>

あ 住民基本台帳法46条

取得した情報を目的外に利用,第三者に提供した場合
不正手段により,情報を取得した場合

市区町村が,不正目的での利用を止める措置を勧告
↓応じない場合
当該措置を命令
↓応じない場合
法定刑=懲役6か月以下or罰金30万円以下

い 住民基本台帳法51条

不正な手段で情報を取得し,第三者に提供した場合

法定刑=罰金30万円以下(51条)

3 住民基本台帳法改正前の営業目的での住民票閲覧

住民基本台帳法は,平成18年に改正されています。
施行日は平成18年11月1日です。
この改正以前は,何人でも閲覧ができる,とされていました(改正前の11条1項;後掲)。
そして,正当な理由がある場合に限り拒絶される,という体裁でした(改正前の11条2項;後掲)。
結局,不正な目的が明らかな場合だけ,拒絶できる,ということだったのです。
実際に,ダイレクトメール等,営業目的での取得が,住民基本台帳の閲覧のうち多い割合を占めていました。
なお,昭和61年の改正で不正な目的で拒絶ルールが導入されています。
昭和61年の改正以後から,住民票の閲覧,写しの交付請求の際に目的の記載が要求されるようになった,ということです。

4 販売促進のための見込顧客情報取得方法

<一般的な見込顧客情報入手方法>

・顧客から直接取得する
・名簿業者から購入する

例えば,飲食店や通信販売で商品やサービスを購入する際に,お客様カードとして,氏名・住所等を記入することがありましょう。
その際,後日,商品案内を送るということを承諾しているというケースは多いです。
実際には,お客様カードの一部に,送付を望まない場合のチェックボックスが用意されている,などが典型例です。
詳しくはこちら|既存顧客や名刺の住所へDMの送付と個人情報保護法への抵触
また,過去の取引(購入)が一切ない場合でも,名簿業者から,企業が情報を購入する場合もあります。
さらに,平成18年の住民基本台帳法の改正前に,住民基本台帳から取得した情報を,その後も利用する,ということもあり得ます。

5 戸籍事項証明書の交付請求ができる者

(1)原則的な交付請求者の範囲

原則的な形態,つまり,形式的な血縁関係によって取得が可能とされている範囲は戸籍法10条に規定されています。

<戸籍事項証明書の交付請求ができる者;基本>

・戸籍に記載されている者
・戸籍に記載されていた者(ただし,誤記によって記載されていたものを除く)
・上記の配偶者,直系尊属,直系卑属

つまり,自分の戸籍についての証明書は当然取得できるのに加え,配偶者・直系尊属・直系卑属までは取得できるということです。

(2)身内以外の交付請求者の範囲

次に,このような形式的な血縁関係はない場合でも,一定の必要性に応じて取得が認められるケースも戸籍法10条の2に規定されています。

<戸籍事項証明書の交付請求ができる者;身内以外>

・自己の権利を行使し,または自己の義務を履行するために戸籍の記載事項を確認する必要がある場合
・国や地方公共団体に提出する必要がある場合
・戸籍の記載事項を利用する正当な理由がある場合
・弁護士,司法書士等が業務遂行上必要な場合
『職務上請求』と呼ぶ(後記)。

(3)『戸籍事項証明書』というネーミング

なお,『戸籍』の原本は昔は『カミ』でした。
そこで,情報を取得する場合は,コピーをもらう,という形でした。
『戸籍謄本』と呼んでいました。
現在は,戸籍の内容はオンライン化されていて,サーバー(コンピュータ)に入っています。
情報を取得する場合は,情報がプリントアウトされ,そのカミが交付されます。
コピーなら『謄本』ですが,これはコピーではないので正確には『謄本』ではありません。
そこで,『戸籍事項証明書』と言います。
ただ,実質的には『戸籍謄本』と変わりはありません。
そこで,実務上,俗称的に『戸籍謄本』と古いネーミングで通ることも多いです。

6 従前の戸籍情報の取得(概要)

実際には,現在の戸籍には記載されていない事項もあります。転籍などによって移記されていない事項もあるのです。代表例は離婚歴です。
詳しくはこちら|戸籍の移動(新戸籍編製・転籍)によって移記される事項とされない事項
このように,現在の戸籍だけでは情報が不足している場合には,過去の戸籍の情報が記録されている除籍の閲覧や謄写請求によって,情報を取得します。

7 弁護士等の職務上請求はスムーズにできる

住民票写し,戸籍事項証明書の取得は,権利行使に必要な者もできることになっています。
しかし,実際には,一般の方が交付請求をすると,役所ではその必要性を慎重に判断します。
事情を聴取されるなど,ある程度時間がかかることが多いです。
この点,弁護士や司法書士などが職務上請求をする場合はスムーズです。
職務上請求書という,弁護士等の資格者だけが使用する用紙があるのです。
もちろん,必要性などについて一定の記載を行いますが,それ以上に質疑がなされることはほとんどありません。

<弁護士・司法書士などによる職務上請求>

あ 職務上請求の要件

『ア〜ウ』のすべてに該当する(場合,住民票の写しor住民票記載事項証明書が交付される)
ア 特定事務受任者が,受任している事件又は事務の依頼者が12条の3第1項各号(前記※4など)に該当する
イ 住民票の写しor住民票記載事項証明書が必要である
ウ 市町村長が申出(職務上請求)を相当と認める
※住民基本台帳法12条の3第2項

い 特定事務受任者の内容

ア 弁護士(弁護士法人)
イ 司法書士(司法書士法人)
ウ 土地家屋調査士(土地家屋調査士法人)
エ 税理士(税理士法人)
オ 社会保険労務士(社会保険労務士法人)
カ 弁理士(特許業務法人)
キ 海事代理士
ク 行政書士(行政書士法人)
※住民基本台帳法12条の3第3項

このような使い勝手の良さから,うっかり不正な使用方法をとってしまうおそれがあります。注意が必要です。
詳しくはこちら|戸籍・住民票の職務上請求書の不正な使用(弁護士の懲戒)

8 固定資産税評価証明書の取得|利用権を持つ者・提訴で必要な場合

不動産の固定資産税評価額を知る,というシーンがあります。
所有者でないと,無条件に取得できるわけではありません。
次のような場合に限って,評価証明書を取得できます。

<固定資産税評価証明書の取得>

ア 使用・収益を目的とする権利を有する者(対価支払あり限定)
イ 民事訴訟・他の裁判の申立に際して固定資産税評価額を使う者
※地方税法382条の3,地方税法施行令52条の15

本記事では,住民票や戸籍の情報の取得の方法について説明しました。
実際には住民票や戸籍の内容を正確に読み取ることが簡単にできないこともあります。
実際に住民票・戸籍の内容やその調査方法に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。