【衛生管理要領|法的位置付け・ソース|どの通知の別添で、何を拘束するか】
1 旅館業の衛生管理要領は、どの通知の別添か
旅館業の施設や衛生の取扱いについて、行政の運用上の基準を示している通達があります。正式な種類は「通知」で、そこに添えられた「旅館業における衛生等管理要領」がそれです。この記事では、この要領がどの文書なのか、そして事業者に対してどういう効き方をするのかを説明します。
この記事は以前、要領の親となる通知を平成15年2月14日健発0214004号としていました。その日付は現在の通知に列記されている一部改正の1回目にあたるもので、通知そのものは平成12年12月15日付です。その後も改正が重ねられ、直近は令和8年1月20日付です。改正の履歴は、別の記事で説明しています。
衛生管理要領|改正の履歴|平成28年改正の3点はいまどうなっているか
2 ソース——平成12年の通知の別添3として置かれている
現在の要領は、厚生省生活衛生局長から各都道府県知事・各政令市市長・各特別区区長に宛てて出された「公衆浴場における衛生等管理要領等について」という通知の別添3です。宛先が保健所を置く自治体であることからも分かるとおり、行政庁から行政庁へ向けた文書で、事業者に宛てたものではありません。別添3であること自体は、この記事が以前書いていたとおりで変わっていません。
通知の名あて人と発信者——行政庁から行政庁へ
公衆浴場における衛生等管理要領等について
平成 12 年 12 月 15 日 生衛発第 1,811 号
各都道府県知事・各政令市市長・各特別区区長宛
厚生省生活衛生局長通知
※『公衆浴場における衛生等管理要領等について』厚生労働省p1
別添3として置かれている——要領の目的
別添3 旅館業における衛生等管理要領
Ⅰ 総則
第1 目的
この要領は、旅館業における施設、設備、器具等の衛生的管理、寝具等の衛生的取扱い、従業者の健康管理等の措置により、旅館業に関する衛生の向上及び確保を図り、併せて善良の風俗を保持することを目的とする。
※『公衆浴場における衛生等管理要領等について』厚生労働省p23
3 適用されるのは旅館業の3つの営業——かつての4区分ではない
要領が適用されるのは旅館業とその営業者で、旅館業は旅館・ホテル営業、簡易宿所営業、下宿営業の3つからなります。この記事は以前「4つのカテゴリ共通の基準である」と書いていましたが、ホテル営業と旅館営業は平成30年に「旅館・ホテル営業」へ統合されており、いまは3つです。
適用の範囲——旅館業は3つの営業からなる
第2 適用の範囲及び用語の定義
1 この要領は、旅館業及びその営業者について適用する。
2 この要領において用いる用語は、次のとおり定義する。
(1) 「旅館業」とは、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業であって、旅館・ホテル営業、簡易宿所営業及び下宿営業をいう。
1) 「旅館・ホテル営業」とは、施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、簡易宿所営業及び下宿営業以外の営業をいう。
2) 「簡易宿所営業」とは、宿泊する場所 (客室)を、多数で共用する構造及び設備を有する施設を設けて行う営業をいう。
3) 「下宿営業」とは、施設を設け、1月以上の期間を単位とする宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業をいう。
※『公衆浴場における衛生等管理要領等について』厚生労働省p23
4 構造設備の基準は政令へ、衛生措置の基準は条例へ——法律はそう振り分けている
要領が扱っているのは、施設の構造設備の基準と、換気・採光・照明・防湿・清潔その他宿泊者の衛生に必要な措置の基準の2つです。法律はこの2つを別のところへ振り分けています。構造設備は政令が定め、衛生措置の基準は都道府県が条例で定めることになっています。さらに政令は、構造設備の基準のうち一部を条例へ投げ返しています。
この記事は以前、政令が条例へ委ねている箇所として施行令1条1項11号・2項10号・3項7号・4項5号を挙げていました。営業種別が4つだった当時の番号です。統合で項が1つ減り、いまは1条1項8号・2項7号・3項5号です。
法律・政令が、基準をどこへ振り分けているか
都道府県知事は、前項の許可の申請があつた場合において、その申請に係る施設の構造設備が政令で定める基準に適合しないと認めるとき、当該施設の設置場所が公衆衛生上不適当であると認めるとき、又は申請者が次の各号のいずれかに該当するときは、同項の許可を与えないことができる。
※旅館業法3条2項
営業者は、旅館業の施設について、換気、採光、照明、防湿及び清潔その他宿泊者の衛生に必要な措置を講じなければならない。
※旅館業法4条1項
前項の措置の基準については、都道府県が条例で、これを定める。
※旅館業法4条2項
その他都道府県(保健所を設置する市又は特別区にあつては、市又は特別区。以下この条において同じ。)が条例で定める構造設備の基準に適合すること。
※旅館業法施行令1条1項8号
5 要領そのものは事業者を拘束しない——条例の参考として働く
以上を踏まえると、要領そのものは事業者を拘束しません。厚生労働省には構造設備の基準も衛生措置の基準も自ら定める権限がなく、要領は法律から委任を受けた文書ではないからです。要領が実務で効いてくるのは、自治体が条例を作るときに参考にされ、その条例が事業者を拘束するという経路です。通達一般の法的性質は、別の記事で説明しています。
通達の意味・種類・法的性質(国民・企業・裁判所への法的拘束力)
条例が要領と食い違っている場合にどう考えるか、条例による上乗せが有効かどうかは、別の記事で説明しています。
簡易宿所営業×フロントの要否|衛生管理要領×条例・食い違い問題
6 条例が実際に何を定めているか
実際に多くの自治体が、要領をもとにした条例を定めています。条例が具体的に何を規定しているかと、立法権限の委任の全体像は、別の記事で説明しています。
本記事は一般的な説明です。個別の事案にそのまま当てはまるとは限らず、一見似ている事案でも、事情が異なれば結論は異なります。個別的事情により、法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。本記事でご説明したものと同様の問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。
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