1 ファーストサーバー事件|事例
2 ファーストサーバー事件|データ消失・実害
3 ファーストサーバー事件|事故原因の分析
4 ファーストサーバー事件|約款|全体・概要
5 約款|バックアップ義務×免責|引用
6 約款|システムの不具合×免責|概要
7 約款|システムの不具合×免責|引用
8 約款|賠償額の制限|引用
9 バックアップ機能付き契約|内容
10 『ビズ2』|パンフレットの記載
11 約款|契約内容の範囲|引用
12 バックアップ機能付き→免責規定が無効となる方向性
13 ファーストサーバー事件|賠償責任の方向性|まとめ
14 ファーストサーバー事件|賠償責任の方向性|補足説明

1 ファーストサーバー事件|事例

レンタルサーバーのデータが消失する事故の判例はいくつかあります。
本記事では,公表された判例以外のケースを紹介します。

<ファーストサーバー事件|事例>

あ レンタルサーバー|データ保管

A社はB社のレンタルサーバーを利用していた
ホームページのデータをサーバーに保管していた
A社はホームページ上で販売を行っていた

い データ消失事故

B社の作業中にミスが生じた
→保管されたデータが消失してしまった

2 ファーストサーバー事件|データ消失・実害

この事案において実際に生じた不都合をまとめます。

<ファーストサーバー事件|データ消失・実害>

A社は次のような被害を受けた
・契約済の取引がキャンセルとなった
・営業が一時的にできなくなった
・利用者に対する信頼を失った

これらについての法的責任は後述します。

3 ファーストサーバー事件|事故原因の分析

この事故の原因についてまとめます。

<ファーストサーバー事件|事故原因の分析>

あ 更新プログラムの不具合

ア ファイル削除コマンドの停止指示漏れ
イ 対象サーバー群の範囲指定漏れ

い 運用手順の不備

ア 対象サーバー以外の動作確認手順なし
イ 対象サーバー以外のデータ消失確認漏れ

う バックアップ仕様の不備

対象サーバー/バックアップ用サーバーに同時配布する仕様

積極的な作業におけるミスと言えます。
一般的な解釈論からは保管業者の過失は認められる可能性が高いです。
(別記事『レンタルサーバー・データ消失|基本』;リンクは末尾に表示)

4 ファーストサーバー事件|約款|全体・概要

この事案では『約款の有効性』が問題となりました。
有効性の判断については後述します。
まずは,約款のうち主な内容をまとめます。

<ファーストサーバー事件|約款|全体・概要>

あ バックアップ義務×免責(※1)
い システムの不具合×免責(※2)
う 賠償額の制限(※3)

5 約款|バックアップ義務×免責|引用

バックアップ義務・免責に関する約款の条項を引用します。

<約款|バックアップ義務×免責|引用(上記※1)>

第16条(データ等の保管およびバックアップ)
1 契約者は、本サービスが本質的に情報の喪失、改変、破壊等の危険が内在するインターネット通信網を介したサービスであることを理解した上で、サーバ上において利用、作成、保管記録等するファイル、データ、プログラム及び電子メールデータ等の全て(以下契約者保有データといいます。)を自らの責任において利用し、保管管理し、且つ、バックアップをするものとします。
2 当社は、システム保安上の理由等により、契約者保有データを一時的にバックアップする場合があります。ただし、当該バックアップは、契約者データの保全を目的とするものではなく、当社が契約者からの当該バックアップデータの提供要求に応じる場合であっても、当社は、当該データの完全性等を含め何らの保証をしません。
3 契約者が契約者保有データをバックアップしなかったことによって被った損害について、当社は損害賠償責任を含め何らの責任を負わないものとします。

6 約款|システムの不具合×免責|概要

システムの不具合・免責に関する約款の概要をまとめます。

<約款|システムの不具合×免責|概要(上記※2)>

あ 免責規定

システムの過負荷・不具合によるデータの破損・紛失について
→ファーストサーバー社は一切の責任を負わない
予見可能性の有無に関わらない

い 適用除外

次の場合には『免責規定』が適用されない
ア ファーストサーバ社に『重過失』がある場合
イ 契約者が消費者契約法上の『消費者』である場合

7 約款|システムの不具合×免責|引用

上記の概要の元となるオリジナル条項を引用します。

<約款|システムの不具合×免責|引用(上記※2)>

第35条(免責)
1~3(略)
4 当社は、システムの過負荷、システムの不具合によるデータの破損・紛失に関して一切の責任を負いません。
5(略)
6 当社は、本サービスに関連して生じた契約者および第三者の結果的損害、付随的損害、逸失利益等の間接損害について,それらの予見または予見可能性の有無にかかわらず一切の責任を負いません。
7(略)
8 本条第2項から第6項の規定は、当社に故意または重過失が存する場合または契約者が消費者契約法上の消費者に該当する場合には適用しません。

8 約款|賠償額の制限|引用

賠償額の制限に関する約款を引用します。

<約款|賠償額の制限|引用(上記※3)>

第36条(損害賠償額の制限)
本サービスの利用に関し当社が損害賠償義務を負う場合,契約者が当社に本サービスの対価として支払った総額を限度額として賠償責任を負うものとします。

9 バックアップ機能付き契約|内容

利用契約にはいくつかの種類がありました。
その中で『バックアップ機能』が付いているものがありました。
データの保護が強化されている,というサービスです。

<バックアップ機能付き契約|内容>

あ 具体的契約

『ビズ2』というサービス

い パンフレットにおける説明×契約内容

『外部サーバへのデータ保存』が強調されていた(※4)
パンフレット上の表記は『契約内容』を構成する(※5)

このサービス内容は約款の有効性判断に影響を与えます(後述)。

10 『ビズ2』|パンフレットの記載

バックアップ機能によるデータ保護の内容をまとめます。

<『ビズ2』|パンフレットの記載(上記※4)>

さらに人為的なデータ損失があった場合にそなえ、日に1回、外部サーバーにデータを保存していますので、お客様によるデータの誤消去があった場合にも、前日の状態に戻すことが可能です

11 約款|契約内容の範囲|引用

一般的に契約書以外の説明・表記が『契約内容』となることがあります。
ファーストサーバーの約款ではこのことが確認的に明記されていました。

<約款|契約内容の範囲|引用(上記※5)>

第1条(約款の適用)
(略)
4. 当社のウェブページ等において当社が公開するまたは個別に通知若しくは提供等する本サービスの機能説明、利用方法に関する説明、注意事項及び制限事項等(以下説明書等といいます。)は、本約款の一部を構成するものとし、本サービスの利用に適用されます。

12 バックアップ機能付き→免責規定が無効となる方向性

バックアップ機能付きのサービスは免責規定の有効性に影響します。
つまり,ユーザー自身がバックアップを行う必要性が低いのです。
その結果『データ消失についての保管業者の責任』が強くなります。
結局『責任免除規定』が『無効』になる可能性が高まるのです。
(別記事『レンタルサーバー|約款に関する事項|典型例・有効性』;リンクは末尾に表示)

13 ファーストサーバー事件|賠償責任の方向性|まとめ

ファーストサーバー事件における保管業者の責任をまとめます。

<ファーストサーバー事件|賠償責任の方向性|まとめ>

あ サーバー運営者=重過失
消費者 消費者以外
約款の有効性 免責規定が無効 上限規定が有効
賠償額 全額賠償 利用料金総額が上限
い サーバー運営者=軽過失
消費者 消費者以外
約款の有効性 上限規定が有効 免責規定が有効
賠償額 利用料金総額が上限 賠償されない

14 ファーストサーバー事件|賠償責任の方向性|補足説明

上記のまとめに関する補足説明をまとめます。

<ファーストサーバー事件|賠償責任の方向性|補足説明>

あ 個別的事情の反映

個別的事情により異なる判断となる可能性もある
特に『ビズ2』については責任が認められる可能性が高い

い 『消費者』

消費者契約法上の定義による

う 過失相殺

ユーザーの過失が認められる可能性もある
この場合,賠償額が減額される