1 サーバー機器の経年劣化によるデータ消失事故
2 データ消失の原因
3 責任制限規定の適用の有無
4 重過失の有無の判断

1 サーバー機器の経年劣化によるデータ消失事故

サーバーのデータが消失する事故が生じることがあります。
法的責任が問題となったケースの1つを紹介します。
まずは事案をまとめます。

<サーバー機器の経年劣化によるデータ消失事故>

あ 当事者

A=サプリメントなどの販売業者
B=販売サイト(EC)の制作・運用管理業者
C=レンタルサーバー業者

い オンライン販売の遂行

AがBに販売サイトの制作・運用管理を委託した
BとCが共用サーバーのレンタル契約を締結した
Bがプログラム・データをサーバーに保存した
Aはサプリメントの販売をウェブサイト上で行っていた
顧客情報もサーバー上に保管していた

う データ消失事故

サーバーの機器が経年劣化により破損した
保管されていたプログラムとデータが消失した
保管業者の積極的な行為が介在していない
※東京地裁平成21年5月20日;ねこじゃらし事件

2 データ消失の原因

データ消失の原因についてまとめます。

<データ消失の原因(※1)>

あ サーバー機器|機種・購入経路

サーバー機器
→普及している有名メーカーの機種である
保管業者は正規代理店から購入した
耐用年数の範囲内である

い サーバー機器|メンテナンス

サーバの運用・管理は適切であった
ア 管理施設において入退室管理・空調管理を行っていた
イ サーバー機器の保守・管理を行っていた
※東京地裁平成21年5月20日;ねこじゃらし事件

3 責任制限規定の適用の有無

この事案では利用契約に,責任を制限する規定がありました。
規定は本来,契約の当事者だけに適用されるものです。
この点裁判所は,契約の当事者ではないAにも,結果的にこの規定を適用しています。

<責任制限規定の適用の有無>

あ 責任制限規定

約款に責任制限規定があった
内容=保管業者の『軽過失』による損害は賠償責任が生じない

い 契約関係にない者への適用

AはCと契約関係がない
『あ』の責任制限規定は第三者にも及ぶことが前提とされていた
Aは免責規定を知ってるはずである
→Aにも『あ』の責任制限規定を適用する
※東京地裁平成21年5月20日;ねこじゃらし事件

結局,保管業者に『重過失』があったかどうかで責任の有無が決まることになります。

4 重過失の有無の判断

保管業者の『重過失』があったかどうかの判断をまとめます。

<重過失の有無の判断>

あ サーバーの設置・管理

Cによるサーバーの設置・管理(前記※1)について
→格別の落ち度はない

い データ消失リスクの存在と対策の容易性

一般的にサーバーは障害によるデータ消失が生じるリスクがある
データ・プログラムは容易に複製・バックアップをすることができる
→ユーザーが復旧のための対策を講じることは容易である

う バックアップサービスとの比較

オプションとして有償のバックアップサービスが用意されていた
Bはバックアップサービスを契約(購入)していなかった

え 結論

Cには重過失はない
→賠償義務はない
※東京地裁平成21年5月20日;ねこじゃらし事件

結局『重過失』はない,と判断されました。
そのため,保管業者の責任は否定されました。