【Auger(オーガー)×賭博罪|デリバティブの解釈論・場所的適用範囲】

1 Augur×賭博罪|問題の所在
2 デリバティブ取引×賭博罪|解釈論|概要
3 Augur×賭博罪|関与者全体
4 幇助犯|winny事件判例|概要
5 Augur×賭博罪|『胴元なし』の影響
6 オンライン×賭博罪|場所的適用範囲
7 Augur×賭博罪|場所的適用範囲|具体例
8 参考情報|研究者・専門家

1 Augur×賭博罪|問題の所在

Augurは新しいテクノロジー・プロトコルです。
今後,大きく発展することが予想・期待されています。
詳しくはこちら|Augur(オーガー)・基本|分散型未来予測プロトコル・仕組み
本記事では,Augurと賭博罪との抵触の問題について説明します。
まずは問題の所在をまとめておきます。

<Augur×賭博罪|問題の所在>

あ 賭博罪・抵触可能性

実質的な『賭け』である
賭博罪の構成要件
『偶然に支配された財物の得喪』に該当する可能性がある
詳しくはこちら|賭博罪|基本|具体的種目・賭博場開張図利罪

い 由来=ギャンブル

元々,保険はギャンブルの発想から生まれた
17世紀@イングランド・ロイズ酒場

Augurは,大雑把に言うと『賭け』です。
賭博罪との抵触が当然,問題となります。
そもそも『賭け』は社会の中にいろいろと存在します。
保険やデリバティブ取引が典型例です。
デリバティブ取引と賭博罪との抵触問題が参考になります。
次に説明します。

2 デリバティブ取引×賭博罪|解釈論|概要

Augurの仕組みは『デリバティブ取引』と似ているところがあります。
『賭け』として機能するところが同じなのです。
そこで,デリバティブ取引と賭博罪との抵触の解釈論をまとめます。

<デリバティブ取引×賭博罪|解釈論|概要>

あ 賭博罪の成否|概要

次の条件に適合している場合
→賭博罪不成立=適法となる傾向がある

い 適法要件

ア 金商法などの法規制がある取引イ 取引所による法の規定に沿った方法

う 注意

判例による判断が錯綜している
個別的な取引の目的・社会的な有用性などの影響もあり得る
確定的な基準はなく,正確な予想は困難である
詳しくはこちら|デリバティブ取引についての賭博罪の成否に関するいろいろな解釈

デリバティブ取引と賭博罪との抵触の問題は古くて新しいものです。
判例は多いのですが,統一的・画一的な判断はまだないと言えます。
大雑把に言えば『取引を規制する法律』があるものは適法になる,という傾向です。
日本の法規制で,Augurを直接対象とするものはまだありません。
そのため,賭博罪に該当すると判断される可能性は十分にあると言えます。
ただし,この問題は単純ではありません。
関係する立場によって違いがあります。
また『日本の刑法の適用範囲』の問題もあります。
順に説明します。

3 Augur×賭博罪|関与者全体

Augurに関与する者はいくつかの立場に分けられます。
それぞれについて,賭博罪との抵触の可能性が異なります。
関与する者の立場ごとに賭博罪との抵触可能性を整理します。

<Augur×賭博罪|関与者全体>

あ 参加者

賭博罪が成立する可能性

い ブックメイカー

賭博場開帳罪が成立する可能性

う レポーター

賭博罪の幇助犯が成立する可能性(後記)

え Augur開発者

賭博罪or賭博場開帳罪の幇助犯が成立する可能性(後記)

『幇助犯』とは『メインの犯行を手伝った』というものです。
これについては次に説明を続けます。

4 幇助犯|winny事件判例|概要

Augurのレポーター・開発者は賭博罪の『幇助犯』が成立する可能性があります(前記)。
この状態に近いものとして『winny事件』の判例があります。
賭博罪ではなく著作権法違反に関する判断です。
罪名は違いますが,共通する構造があります。
winny事件判例の概要をまとめます。

<幇助犯|winny事件判例|概要>

あ 事案概要

winnyという無料のソフトウェアが広く普及した
winnyにより楽曲のファイルをユーザー同士が共有することができた
著作権違反となる状態が大規模に生じた
winnyのプログラム製作者・配布者の刑事責任が問われた

い 最高裁の設定した基準|概要

次の客観面+主観面により幇助犯が成立する
ア 客観面 『一般的可能性を超える具体的な』侵害利用状況がある
イ 主観面 『ア』のことを提供者が認識,認容している
※最高裁平成23年12月19日;winny事件判例

winny事件判例の内容については別に説明しています。
詳しくはこちら|幇助犯・教唆犯|犯罪の手助け・そそのかしだけでも犯罪になる

5 Augur×賭博罪|『胴元なし』の影響

Augurの特徴は『胴元が存在しない』ということです。
このことが賭博罪の判断にどのように影響するのでしょうか。
ここにまとめます。

<Augur×賭博罪|『胴元なし』の影響>

あ 開発者≠胴元

ア Augur本体 『Augur』は人間・法人ではない
→犯罪の主体にならない
あくまでプロトコルであり胴元ではない
イ Augur開発者 開発者は個々の『ブックメイク』を行っていない
『賭博場開帳』にも該当しないと思われる
『幇助犯』の可能性は別である(前記)

い 『胴元なし』×賭博罪

胴元は居なくても賭博は成立する
『賭博罪』(参加者)と『賭博場開帳罪』(胴元)はセットになることが多い
しかし『両方が必要』というわけではない
※最高裁昭和24年1月11日
詳しくはこちら|国内犯解釈論×賭博罪|オンライン・カジノ|海外サーバー

そもそも『胴元なし』で賭博罪が成立するケースは特に変わっていることではありません。
友人2人で明日の天気でも,プロサッカーの試合結果を賭けるというものが典型例です。
賭博罪は成立することは当然なのです。

6 オンライン×賭博罪|場所的適用範囲

Augurはインターネット上の通信を利用したプロトコルです。
つまり,投票はオンラインで行われます。
世界中から投票できるのです。
そうすると,賭博罪を含む刑法の適用範囲(エリア)が問題となります。
この問題についてまとめます。

<オンライン×賭博罪|場所的適用範囲>

あ オンライン×賭博罪|問題の所在

Augurによるブックメイキングの特徴
『場所』によって賭博罪の成否が影響を受ける

い 解釈論|オンラインカジノ|見解

犯罪行為の一部が日本国内で行われた,と考えられる
→偏在説によれば犯罪は成立する
賭博罪について偏在説を採用する判例はない
政府見解は曖昧である
政府見解の解釈自体に幅がある
詳しくはこちら|国内犯解釈論×賭博罪|オンライン・カジノ|海外サーバー

う 解釈論|オンラインカジノ|結論

確定的な予想はできない

実はオンラインカジノとして法的解釈論の画一的な見解がない状態です。
政府見解はありますが,解釈の幅が残っています。
この点,政府見解自体を『賭博罪成立』と読む見解もあるようです。
しかし,既存の法律の解釈の最終権限者は司法=裁判所です。
政府見解があっても解釈として再現可能性が万全の状態とは思えません。
とにかく現時点ではどちらの判断がされる可能性(リスク)もある,ということです。

7 Augur×賭博罪|場所的適用範囲|具体例

『賭博罪が適用される場所・エリア』の解釈は曖昧なところがあります(前記)。
Augurの仕組みについて,既存の解釈論から言えることを可能な限りまとめてみます。

<Augur×賭博罪|場所的適用範囲|具体例>

あ 具体例|日本でのブックメイキング

ブックメイキングが日本国内である場合
→ブックメイキングの役割は大きい
→刑法が適用される方向性が強いであろう

い 具体例|日本での投票

『ブックメイキング』自体は海外において行われた
日本でユーザーが投票に参加した場合
→個々の投票の役割は比較的小さい
→刑法が適用されない方向性であろう

8 参考情報|研究者・専門家

Augurは新しいテクノロジー・プロトコルです。
本記事の作成において研究者・専門家の見解・情報を参考にしました。
ここに記しておきます。

<参考情報|研究者・専門家>

あ 大石哲之氏|BLOGOS

Augur – 胴元のいらないギャンブルは可能か?
史上最大のギャンブル市場の可能性を秘めたAugurとは?
外部サイト|大石哲之氏|Augur – 胴元のいらないギャンブルは可能か?

い 木曽崇氏|ブログ

日本で数少ないカジノ専門家、木曽崇によるオピニオンブログ
カジノ合法化に関する100の質問
外部サイト|木曽崇氏|Augur-胴元のいらないギャンブルは勿論可能ですよ

本記事に関するお気付きの点がありましたらご指摘くださると幸いです。
資料・見解などをより多く把握し,より記事の精度を高めたいと思っています。

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