【預貯金仮差押×インパクト|実例|解放金の弱点×和解促進作用】

1 メインバンクの口座×仮差押→強いインパクト
2 預金仮差押のインパクト|典型的具体例
3 預金仮差押のインパクト→解放金で回避|事例A
4 預金仮差押のインパクト→全面降伏的和解|事例B

1 メインバンクの口座×仮差押→強いインパクト

仮差押の対象とする預貯金は『よく使われる』ものが選ばれます。
事業・会社の口座の場合は『メインバンクのメインの取引用口座』です。
この口座に仮差押が執行されると,裁判所から金融機関に通知が行きます。
そして,金融機関の担当者から預金者に連絡がなされます。
ここで事実上『自主的な解決の要請』が伝えられます。
預金者=債務者としては,仮差押が執行されたこと自体で信用が落ちます。
ましてやメインバンクとの関係なので,非常に重視する傾向があります。
そこで『すぐに債権者に返済する』などの自主的解決を急ぐことにつながりやすいです。
これについては別記事で説明しています。
詳しくはこちら|預貯金差押執行・効果|範囲・時間的前後関係|申立タイミング・作戦

2 預金仮差押のインパクト|典型的具体例

預金仮差押は本来の回収効果以外の波及的効果も重要です。
いわゆる『インパクト』が強いのです。
『インパクト』の具体例・具体的内容をまとめます。

<預金仮差押のインパクト|典型的具体例>

あ 前提事情

A社の事業の規模
1か月の売上=数億円
取引はすべてメインの預金口座を用いていた

い トラブル

B社が『工事請負代金』約1000万円をA社に請求した
A社は工事を別のC社に紹介しただけ,と認識していた
そこでA社・B社は交渉していた
A者は当然『請負代金』を支払っていなかった

う 預金仮差押の執行

B社はA社のメインの預金口座の仮差押を申し立てた
裁判所は仮差押命令を発令した
A社は銀行から連絡を受けて初めて仮差押を受けたことを知った

え 困惑・驚愕

この時点でメインの預金口座残額が約1500万円であった
→1000万円がロックされる
→動かせる金額は約500万円だけとなった
→取引先への支払・従業員の給与支払の一部が不能となる
→大混乱・信用不安が生じる
→会社の存続の危機に至る

預金をロックされたことの現実的な効果は結構大きいのです。

3 預金仮差押のインパクト→解放金で回避|事例A

預金仮差押を受けた方としてはダメージを回避する方法を取ります。
対応策の1つは解放金の制度を使うというものです。
詳しくはこちら|民事保全に対する対抗手段(保全異議・取消・抗告・起訴命令・解放金)
制度はあるのですが,盲点・弱点もあります。

<預金仮差押のインパクト→解放金で回避|事例A>

あ 解放金による危機の回避

スピーディーに危機を解消・回避するには
→『解放金』の提供が必要
解放金は1000万円で済む

い 資金調達の苦労|事例

計算上はA社が1000万円のキャッシュを用意することは可能であった
キャッシュはほぼすべてメインの預金口座に入っている
1000万円はロックされている
引き出せるのは残りの約500万円であった
A社代表者が数時間で必死になって残額約500万円をかき集めた
会社の壊滅的被害をようやく回避できた

う 本案訴訟でのA社優勢

B社はその後本案訴訟を提起した
この訴訟の中で主張・理論はA社が優勢であった
裁判所の勧告により次の内容の和解が成立した

え 最終和解内容

A社が200万円支払う
→解放金のうち800万円はA社に戻ることになった

4 預金仮差押のインパクト→全面降伏的和解|事例B

預金仮差押のインパクトが『その後の和解交渉』に大きく影響することも多いです。

<預金仮差押のインパクト→全面降伏的和解|事例B>

あ 危機状態における交渉

預金のロックがかかったタイミングでB社が次のような提案をした

い 和解案

A社が1000万円の債務を認めれば仮差押を取り下げる
実際の支払は仮差押のロック解除後で構わない

う A社・他の選択肢がない

A社はメイン口座以外から即座に解放金を調達することが難しい
=即座に仮差押を解消する方法が『和解受諾』以外にない
→B社の和解案を受諾した

要するに『窮状を脱するために不利な内容を受け入れる』というような状況です。
平常時・事前にこのようなことも想定しておくと良いのです。
資産の管理を1箇所に集中させない,などの素朴な対応が役立つのです。

<注意|用いた『事例』>

本記事で用いた事例は実例をアレンジしたものです。
実例のうち典型的な要素はもれなく含めてあります。

本記事では,預貯金に対する仮差押の現実的なインパクトと,それによって和解が促進されるという実情について説明しました。
実際には,個別的な事情によって,債権回収のための最適な手段は違ってきます。
実際に債権回収(保全手続)の問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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