1 取締役,監査役は『任期』満了で終了する|選任・重任が必要
2 役員が人数不足になった→任務は継続する|権利義務者
3 役員不足|緊急時は『一時取締役(仮取締役)』を裁判所が選任できる
4 『職務執行停止の仮処分』→裁判所が『取締役職務代行者』を選任する

1 取締役,監査役は『任期』満了で終了する|選任・重任が必要

(1)役員の任期

通常,株式会社の役員として,取締役,監査役が選任することになっています。
なお,定款の規定によって,一部の役員を設置しない,という設定をすることもあります。
役員の任期をまとめておきます。

<役員の原則的な任期>

あ 原則

ア 取締役
選任後2年内に終了する事業年度のうち最終の定時株主総会の終結の時まで
イ 監査役
選任後4年内に終了する事業年度のうち最終の定時株主総会の終結の時まで

い 定款規定による延長|取締役・監査役共通

ア 前提
非公開会社,かつ,委員会設置会社ではない
イ 定款規定
次のような定款規定が可能
『選任後10年内に終了する事業年度のうち最終の定時株主総会の終結の時まで』
※会社法332条1項,2項,336条1項,2項

(2)役員の任期満了時に新たに選任or重任の決議が必要となる

役員の任期が満了する段階で,『後任』を選任することになります。
現実には,同一人を再度選任する,いわゆる『続投』が多いです。
登記上は『重任』と呼んでいます。
『重任』の場合,役員の人物としての変更はありませんが,変更登記は必要です。
詳しくはこちら|会社に関する商業登記|設立・役員変更

2 役員が人数不足になった→任務は継続する|権利義務者

(1)権利義務者の制度

形式的に『代表者の立場が終わった』場合でも,救済的に『代表者の立場が延長される』ことも多いのです。
『立場は終わった』のに『権利・義務が継続している』ということから『権利義務者』と呼んでいます。

<役員の権利義務者>

役員の員数不足の経緯 権利義務者になるかどうか
任期満了・辞任 なる
死亡・解任 ならない

※会社法346条

(2)権利義務者の適用→『退任』登記ができない

『権利義務者』が適用されている場合は『退任の登記』ができません。
登記上も『権利義務を持った者≒役員』を残しておく,という趣旨です。

(3)『権利義務者』が適用されない場合は別の救済措置を用いる

『死亡・解任』で役員が不足した場合は『権利義務者』という救済措置は適用されません。
この場合は,『代表者もその代わりもいない状態』となります。
『権利義務者もいない』場合について,さらに別の救済措置があります。

3 役員不足|緊急時は『一時取締役(仮取締役)』を裁判所が選任できる

『権利義務者』による救済が適用されない場合の救済措置を説明します。

<『一時取締役(仮取締役)』の制度>

あ 要件

ア 一般的に役員が『員数不足』となった場合
イ 選任の『必要性』がある

い 選任の手続

利害関係人が裁判所に申し立てる→裁判所が選任する

う 申立人(利害関係人)の範囲

取締役・株主・監査役・従業員・債権者など

え 『仮取締役』の権限

通常の取締役と同じ
※会社法346条2項

このように,個別的に利害関係人が裁判所に申し立てることによって仮取締役が選任されるのです。

4 『職務執行停止の仮処分』→裁判所が『取締役職務代行者』を選任する

特殊な『役員の不足』として『職務執行停止の仮処分』があります。
例えば代表取締役が違法行為を行っている場合には,『権限を奪う』必要があります。
通常であれば,取締役会や株主総会の解任決議によって『立場から下ろす』ことになります。
しかし,この場合,これらの決議成立までの間は『権限の乱用・悪用』ができてしまいます。
そこで緊急の事情がある場合は,裁判所が『仮処分』として役員の権限を暫定的に停止できます。
これを『職務執行停止の仮処分』と呼んでいます。
この場合,ターゲットの役員の権限を奪うことはできますが,『代表者がいない』というようなことが生じます。
そこで,裁判所は,『暫定的な代わり』として『取締役会職務代行者』を選任できます。
『暫定的』なので,権限も限定されています。

<『取締役職務代行者』の制度>

あ 要件

取締役の職務執行停止の仮処分命令が出された場合

い 選任の手続

裁判所が選任する

う 『職務代行者』の権限

ア 原則=会社の『常務』に属する事項
イ 例外=裁判所の許可を得れば『常務』以外の事項の実行が可能となる
※民事保全法56条,会社法352条1項