【株式会社の意思決定プロセス(取締役会決議・取締役の過半数の同意)】

1 株式会社の意思決定プロセス
2 会社としての意思決定の原則形態
3 取締役会の決議事項は会社法に規定されている
4 取締役会決議事項(特定の手続関係)
5 取締役会決議事項|一般的な検討・決定事項
6 取締役会の決議要件|過半数出席×過半数賛成
7 競業取引・利益相反取引についての会社の承認(概要)
8 会社としての業務執行権限(参考)

1 株式会社の意思決定プロセス

株式会社は事業活動を行いますが,その中で多くのことの意思決定が必要となります。
会社としての意思決定は,原則的に取締役会の決議または取締役の過半数で決めることになります。
本記事では,このような株式会社としての意思決定のプロセス(方法)の基本的な内容を説明します。

2 会社としての意思決定の原則形態

会社としての意思決定を行うプロセスのうちもっとも原則的なものは次のとおりです。

<会社としての意思決定の原則形態>

あ 取締役会

取締役会設置会社の場合
→取締役会が原則的な意思決定機関である
※会社法362条2項1号

い 取締役の過半数(の賛成)

取締役会設置会社の場合
→原則的に取締役の過半数で決する
※会社法348条2項

現在の会社法では『取締役会』の設置自体をしていないことも認めているのです。
本記事では以下,便宜的に取締役会設置会社を前提に説明します。

3 取締役会の決議事項は会社法に規定されている

(1)取締役会の決議事項は広範

取締役会で決定する事項は,『業務執行の決定』一般であり,非常に広範です(会社法362条2項1号)。
逆に言えば,株主総会の決議事項として定められているものなど,『除外』されているもの以外のすべて,ということになります。
また,実際には,取締役会で,一定の小規模な決定事項を特定の取締役や取締役以外の者に委ねるのが一般です。

(2)会社法上の『取締役会決議事項』は原則『専決事項』である

会社法上,『取締役会決議事項』として規定されているものが多くあります。
明記されている決議事項を『取締役に委任する』ということについては効力の解釈がやや曖昧です。

<会社法上の『取締役会決議事項を取締役に委任』の効力>

あ 法定されている決議事項

例;株式消却,株式分割,単元株式数の減少
取締役への委任はできない
※会社法191条,184条2項,204条1項
※江頭憲治郎『株式会社法』有斐閣p371

い 法定されていない決議事項

ア 会社法改正案担当者による解説 →委任できる
イ 登記先例 →委任できない
※平成18年3月31日民商782号通達

次に,法定されている取締役会決議事項を説明します。
数が多いので,『特定の手続』と『一般的な検討・決定事項』に分けて説明します。

4 取締役会決議事項(特定の手続関係)

<取締役会決議事項|特定の手続関係>

決議事項 条文(会社法)
会社の業務執行の決定 362条2項1号
取締役(代表取締役を含む)の職務執行の監督 362条2項2号
代表取締役の選定・解職 362条2項3号,3項
代表取締役以外に業務を執行する取締役の選定 363条1項2号
譲渡制限株式の譲渡の承認,指定買取人の指定 139条1項,140条5項
自己株式の取得価格等の決定 157条
子会社からの自己株式の取得の決定 163条
取得条項付株式の取得の決定 168条1項,169条2項
自己株式の消却 178条
株式分割 183条2項
株式無償割当てに関する事項の決定 186条
単元株式数についての定款変更 195条1項
所在不明株主の株式の競売もしくは売却または買取 197条
公開会社における新株発行とその内容の決定 201条,202条
譲渡制限株式の割当てを受ける者の決定 204条
一株に満たない端数の買取 234条5項
公開会社における新株予約権の発行とその内容の決定 240条,241条
譲渡制限株式を目的とする募集新株予約権または譲渡制限新株予約権の割当を受ける者の決定 243条
譲渡制限新株予約権の譲渡の承認 265条1項
取得条項付新株予約権の取得の決定 273条1項,274条2項
新株予約権の消却 276条
新株予約権無償割当に関する事項の決定 278条
株主総会の招集 298条4項
訴訟における代表者の選任 353条,364条
取締役による競業取引および利益相反取引の承認(※1) 356条,365条1項
取締役会を招集する取締役の決定 366条1項ただし書
特別取締役の設置 373条1項
計算書類の承認 436条3項
臨時計算書類の承認 441条3項
連結計算書類の承認 444条5項
一定の場合における資本金・準備金の減少 447条3項,448条3項
中間配当の決定 454条5項

※1 競業取引or利益相反取引
この内容については後述する

5 取締役会決議事項|一般的な検討・決定事項

<取締役会決議事項|一般的な検討・決定事項>

決議事項 条文(会社法)
一般的な『重要な業務執行』(以下の事項以外) 362条4項
重要な財産の処分及び譲受 362条4項1号
多額の借財 362条4項2号
支配人その他の重要な使用人の選任・解任 362条4項3号
支店その他の重要な組織の設置,変更,廃止 362条4項4号
募集社債発行の決定 362条4項5号
業務の適正を確保するための体制の整備 362条4項6号
取締役の任務懈怠責任の免除の承認 362条4項7号

(2)『重要』の判断は個別的に行う

上記取締役会決議事項は,『重要』という用語で規定されたものがあります。
いずれも,個別的な会社の状況を元に『重要』に該当するかどうかを判断します。

<『重要な業務執行』の判断>

あ 判断の概要

個別的・具体的な会社の事情・状況によって判断する

い 『重要な業務執行』に該当する典型例

次のような重要な経営課題についての方針決定・変更
ア 年間事業計画イ 年間予算ウ 主力製品・サービスの開発・販売

<『重要な財産(の処分)』の判断>

あ 判断の概要

個別的・具体的な会社の事情・状況によって判断する

い 判断の要素となる重要な事情の例

次のような事情を総合的に考慮・判断する
ア 対象財産の価格イ 対象財産が会社の総資産に占める割合ウ 対象財産の保有目的 ※最高裁平成6年1月20日

いずれも結局は『重要』かどうかの判断が曖昧なことも多いです。
不明確な場合は,念の為に取締役会の決議を経ておくと事後的な紛争を避けられるのでお勧めします。

6 取締役会の決議要件|過半数出席×過半数賛成

取締役会で,どのような場合に『決定』できるか=決議要件,は,会社法に規定があります。

<取締役会の決議要件>

あ 定足数

過半数の取締役が出席

い 表決数

過半数の賛成

う 決議要件の加重

定款で『決議要件』を加重することは可能
※会社法369条1項

え 決議に参加できない取締役

議事に『特別の利害関係』を有する取締役は決議に参加できない
※会社法369条2項

なお,取締役会を設置していない会社は次のような意思決定方法となります(前記『1』)。

<取締役会設置会社の意思決定>

取締役の過半数
※会社法348条2項

7 競業取引・利益相反取引についての会社の承認(概要)

取締役は,会社と協業に当たる事業に関与することや,会社との間で利益が相反する取引を行うことが制限されています。

<取締役が制限される事業・取引への関与(概要)>

あ 制限される行為

ア 競業取引 取締役が自己または第三者のために会社の事業の部類に属する取引をすること
要するに,『ライバル社』の役員となる,事業主となる,というものです。
イ 利益相反取引 取締役が自己または第三者のために会社と取引をすること

い 制限を解除する方法

『あ』の行為について,会社の承認を得る
会社の承認=取締役会の承認or株主総会の承認

う 取締役による賠償責任

『あ』の行為によって会社に損害が生じた場合
取締役は賠償責任を負うことがある
詳しくはこちら|取締役の競業取引・利益相反取引の制限(会社の承認・全体像)

8 会社としての業務執行権限(参考)

以上は,会社としての意思決定についての説明でした。
一方,会社としての業務執行権限意思決定権限とは別です。業務執行権限代表取締役が持っています。
代表取締役が定められていない場合は取締役となります(会社法349条1項)。

<意思決定と業務執行の権限の整理>

あ 業務についての意思決定権限

取締役会(原則)

い 業務執行権限

代表取締役(or取締役)

このように,権限が分かれていることから,意思決定を欠いた状態で,代表取締役が取引を行ってしまう,ということが生じることもあります。また,代表取締役の選任決議が無効であったため,本来代表権がない者が取引を行ってしまった,というケースも生じています。
このような場合には,原則として取引は無効(会社に効果が帰属しない)となります。ただし,第三者を保護するために例外的に有効として扱うことも実際には多いです。

<適正な代表権限がない取引の効果>

あ 原則

無効(効果不帰属)

い 例外;表見法理等

事情によって,次のような救済措置があります。
ア 『表見代表取締役』の規定 ※会社法354条
イ 一般的な『表見法理』の理論 ※民法109条〜112条,商法9条

う 表見法理等で救済される典型例

取引の相手方が『有効な代表取締役選任決議を欠いていた』ことを知らなかった
※最高裁昭和56年4月24日

本記事では,株式会社の意思決定のプロセスについて説明しました。
実際には,派閥争いがあるような状況で,取締役会の決議や取締役の同意の有無や有効性について認識の対立が生じるケースが多いです。細かい事情によって結論(判断)が違ってきます。
実際に株式会社の意思決定に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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