【違法な表現行為×民事責任|判断基準|損害賠償・差止・削除・謝罪広告】
1 名誉毀損・侮辱・プライバシー侵害的な表現|違法性判断基準
『名誉棄損』は、刑法上の犯罪であると同時に、民法の『不法行為』になります。
民法の不法行為に該当する表現はいくつかバリエーションがあります。
基本的な判断基準をまとめます。
表現×不法行為|名誉毀損など|基準
あ 民事的な違法性
表現の『内容』『方法・態様』の両方が次の要件に該当する表現行為
→民事的な『違法性』が認められる
→不法行為に該当する
※民法709条、710条
い 要件|表現内容
次のいずれかに該当する
ア 特定の者の社会的評価を低下させるイ 名誉感情を害する
う 要件|表現の方法・態様
一定の方法、態様を逸脱している
え 一般的名称
名誉棄損・侮辱・プライバシー侵害
総称=『権利侵害』
2 違法な表現行為|被害者の請求権=損害賠償・差止・謝罪広告
名誉毀損などの違法な表現について生じる民法上の責任をまとめます。
表現×不法行為|名誉毀損など|責任の内容
あ 損害賠償責任
一般的に、被害者に生じた損害について賠償責任が生じる(後記)
『精神的苦痛』が損害の内容である
精神的な損害賠償は『慰謝料』と呼ばれる
い 差止請求・削除請求
事情により、差止請求が認められることもある(後記)
う 謝罪広告
裁判所が『名誉を回復する処分』を命じることができる
→『謝罪広告』が一般的である
※民法709条、710条、723条
3 違法な表現行為|差止請求・削除請求|基準は曖昧
違法な表現行為に対する責任のうち『差止』に関するものをまとめます。
表現×不法行為|差止請求・削除請求
あ 法的構成
『人格権としての名誉権』の侵害と言える
物権の場合と同様に排他性を有する権利である
→物権的妨害排除請求権と同様に扱う
→表現行為の差止請求・削除請求ができる
い 判断基準
画一的な基準はない
個々の裁判例によって基準が異なる
う 損害賠償の基準との違い
『損害賠償責任』の判断基準と同一ではない
『損害賠償は認められるが差止は認められない』こともある
※最高裁昭和61年6月11日;北方ジャーナル事件
※根本尚徳『差止請求権の理論』有斐閣p26
※宮原守男『名誉毀損・プライバシー』ぎょうせいp182〜
4 『名誉毀損』の違法性の否定|公共性・公益目的・真実性|刑法の流用
『社会的評価を下げる言動』について、すべて法的責任が認められるわけではありません。
一定の『許容限度』というゾーンがあります。
判例上、この違法性の限界については、通常、刑法の名誉棄損罪の規定が流用されます。
名誉棄損による慰謝料請求が否定される基準
次の3つのすべてが認められる
ア 公共性イ 目的の公益性(公益目的)ウ 真実性※刑法230条の2の流用
刑法の『違法性の否定(阻却)』については別記事で説明しています(リンクは末尾に表示)。
公益を理由とする『違法性の否定』については、プライバシー侵害の判断と同様です。
詳しくはこちら|プライバシー権のまとめ|判例の基準|定義の発展
5 名誉毀損・侮辱×刑事責任
以上は違法な表現行為に対する『民事的な責任』でした。
違法な表現行為が『刑事的責任』を生じることもあります。
これについては別記事で説明しています。
詳しくはこちら|違法な表現行為の刑事責任(名誉毀損罪・侮辱罪・信用毀損罪)
本記事は一般的な説明です。個別の事案にそのまま当てはまるとは限らず、一見似ている事案でも、事情が異なれば結論は異なります。個別的事情により、法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。本記事でご説明したものと同様の問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。


