1 取引相手が暴力団関係者かどうかを知る必要性がある
2 取引相手が暴力団関係者かどうかの調査は警察への照会が合理的
3 暴力団情報の警察への照会は『暴排条項』の契約書調印が前提
4 実際には『情報の目的外利用』リスクのために警察が開示に応じないこともある
5 『弁護士から警察への照会+弁護士の証明書』方式がスムーズ

1 取引相手が暴力団関係者かどうかを知る必要性がある

全国の都道府県で暴力団排除条例が施行されています。
取引(契約)において,事業者は,相手(当事者)が暴力団等であるかどうかの属性確認の努力義務が課せられています。
そして,当事者が暴力団等であることが判明した場合,取引を中止する法的義務もあります。
別項目|暴排条例により事業者は一定の義務を負う

そこで,取引相手の属性の調査の必要があるということになります。
もちろん,条例では知らなかった場合には責任がないとされています。
しかし,実際には『知らなかったこと』の立証ができない,というリスクもあるわけです。

2 取引相手が暴力団関係者かどうかの調査は警察への照会が合理的

調査方法は,調査会社に依頼するということもできますが,費用がかかる割に確実性で劣る場合もあります。
この点,警察は暴力団の情報をデータベース(警察庁情報管理システム)として保有・管理しています。
平成23年12月に,警察は,『暴力団に関する情報開示』について,一定のルールを定め,運用しています(通達『暴力団排除等のための部外への情報提供について』)。

<警察が暴力団情報開示に応じる条件>

※いずれも

あ 必要性

条例等の義務履行のために,取引の関係者の属性(暴力団関係者該当性)を調査する必要がある

い 情報の悪用・目的外利用のおそれがない

開示請求者の属性・組織から,情報管理上の問題がないと認められる
※平成25年12月19日通達|警察庁刑事局組織犯罪対策部長|暴力団排除等のための部外への情報提供について

この開示の条件の内容について,次に説明します。

3 暴力団情報の警察への照会は『暴排条項』の契約書調印が前提

警察が暴力団情報の開示に応じる『必要性』とは,具体的には『暴排条項』です。
つまり,調印した契約書において『暴力団関係者であることが判明した場合解除できる』という条項が含まれている,ということです。
この場合は,事業者としては『取引相手が暴力団関係者かどうか』を知る必要性があることになるのです。
契約書調印の段階から,このような警察への照会を考慮して,条項を工夫しておくとベストです。
別項目|暴排条例により,一般的に契約書に暴排条項を入れる努力義務がある

4 実際には『情報の目的外利用』リスクのために警察が開示に応じないこともある

警察が暴力団情報の開示に応じるためのもう1つの条件は『情報の悪用・目的外利用のおそれがない』というものです。
『目的外利用をしない』という内容の誓約書を提出する,という方法もよく取られます。
しかし,実際には,開示請求者の属性によって警察の判断はぶれます。
要するに,開示を拒否したり,また,開示するとしても調査期間が長くなる,ということが多いのです。

5 『弁護士から警察への照会+弁護士の証明書』方式がスムーズ

警察への暴力団情報開示請求は,弁護士が行うという方法は,本人による開示請求とは大きく違ってきます。
具体的には『情報の目的外使用』のおそれがない,という判断が確実・スピーディーに行なわれる,ということです。
逆に,弁護士から警察に,『情報管理の適正を徹底』することを明確化してアピールします。

<『情報管理の適正』のアピール|具体例>

あ 『依頼者には詳細情報を開示しない』という内容の誓約書

もちろん依頼者への説明+依頼者の承諾,が前提です。

い 弁護士会照会

『弁護士会を通した照会』です。
この場合,解釈上『開示内容を弁護士から依頼者に開示すること』は制限されます。
別項目|ご依頼者へ;弁護士→依頼者の資料開示(報告義務)

以上のような工夫により,警察が開示にスムーズに応じることになります。
このような弁護士から依頼者への情報開示に制限がある場合でも,依頼者サイドで不都合になることはありません。
弁護士が作成した(弁護士名の)『調査報告書』を依頼者に渡す(納品する)のです。

<弁護士名義の調査報告書の特徴>

あ 依頼者に開示できる情報と結論だけを明記する
『対象者(取引相手)は暴力団関係者ではない』という内容です。
い 依頼者に開示できない情報は載せない

以上のように,通常,取引相手の属性調査は『弁護士が警察に照会する』という方法がスピード・費用において最適です。
もちろん,みずほ中央法律事務所では,契約書作成のサポートの一環として,警察への暴力団情報開示請求も行っています。

条文

[通達|暴力団排除等のための部外への情報提供について|警察庁丙組企分発第35号,丙組暴発第13号|平成25年12月19日| 警察庁刑事局組織犯罪対策部長]
第3 情報提供の基準 暴力団情報については、警察は厳格に管理する責任を負っていることから、情
報提供によって達成される公益の程度によって、情報提供の要件及び提供できる 範囲・内容が異なってくる。
そこで、以下の1、2及び3の観点から検討を行い、暴力団対策に資すると認 められる場合は、暴力団情報を当該情報を必要とする者に提供すること。
1 提供の必要性
(1) 条例上の義務履行の支援に資する場合その他法令の規定に基づく場合 事業者が、取引等の相手方が暴力団員、暴力団準構成員、元暴力団員、共 生者、暴力団員と社会的に非難されるべき関係を有する者等でないことを確 認するなど条例上の義務を履行するために必要と認められる場合には、その
義務の履行に必要な範囲で情報を提供するものとする。 その他法令の規定に基づく場合についても、当該法令の定める要件に従っ
て提供するものとする。
(略)
2 適正な情報管理 情報提供は、その相手方が、提供に係る情報の悪用や目的外利用を防止する
ための仕組みを確立している場合、提供に係る情報を他の目的に利用しない旨 の誓約書を提出している場合、その他情報を適正に管理することができると認 められる場合に行うものとする。
(略)
3 提供する暴力団情報の範囲 (1) 第3の1(1)の場合
条例上の義務を履行するために必要な範囲で情報を提供するものとする。 この場合において、まずは、情報提供の相手方に対し、契約の相手方等が条 例に規定された規制対象者等の属性のいずれかに該当する旨の情報を提供す れば足りるかを検討すること。
(略)
第4 提供する暴力団情報の内容に係る注意点
1 情報の正確性の確保について
暴力団情報を提供するに当たっては、その内容の正確性が厳に求められるこ とから、必ず警察本部の暴力団対策主管課等に設置された警察庁情報管理システムによる暴力団情報管理業務により暴力団情報の照会を行い、その結果及び 必要な補充調査の結果に基づいて回答すること。