1 抵当建物への工作物設置・増築による執行妨害への対抗措置
2 価値減少行為の禁止命令
3 妨害行為と価値減少行為該当性
4 増設による価値減少の有無(付加一体物との関係)
5 区分建物登記がされた増設部分の職権抹消

1 抵当建物への工作物設置・増築による執行妨害への対抗措置

抵当権を設定した建物に,債務者や物件所有者などが工作物を設置する,あるいは増築をすることで執行を妨害するというケースがあります。抵当権者としてはいろいろな対抗措置があります。
本記事では,このような妨害行為への対抗措置について説明します。

2 価値減少行為の禁止命令

強制執行を妨害する一定の行為に対しては,保全処分という対応方法があります。具体的には,競売を申し立てるとともに売却のための保全処分を申し立てる,ということです。

<価値減少行為の禁止命令>

あ 要件

競売手続開始後に目的不動産の価値を減少させるような行為があったとき

い 裁判所の処分

価格減少行為の禁止等を命じる処分

3 妨害行為と価値減少行為該当性

価値減少行為の禁止命令は,文字どおり,価値減少行為を封じるものです。いわゆる占有屋がこれにあたります。登記上の妨害は価値減少行為にはあたりません。

<妨害行為と価値減少行為該当性>

あ 不当な占有

第三者が占有するなど,不動産の使用が妨げられている
→典型的な価値減少行為である

い 賃借権の登記

賃借権の登記がなされた
競売されれば抹消される無駄な登記である
→価格減少行為にはあたらない
ただし,占有移転禁止の仮処分の対象になることはある

4 増設による価値減少の有無(付加一体物との関係)

例えば,抵当建物の屋上に見知らぬ小屋が設置されていたケースを想定します。抵当権者としては嫌がらせだと感じることでしょう。
しかし,理論的にはそう単純ではありません。増設部分の具体的な状況によりますが,建物と物理的に一体となったといえればもちろん,物理的に一体とまではいえないけれど一体として利用する状況であるといえれば,抵当権の効力が及びます。つまり,増設部分も含めて売却できるので,買受人が所有することになるのです。嫌がらせは理論的にはうまくいかない傾向が強いです。

<増設による価値減少の有無(付加一体物との関係)>

あ 妨害の内容

抵当建物の屋上に物置が設置された

い 抵当権の効力が及ぶ場合(原則)

増設部分が抵当権を設定した不動産(抵当建物)の付加一体物にあたる場合
→増設部分にも抵当権の効力が及ぶ
→増設部分も含めて売却することになる
→増設部分によって価値が減少することにはならない

う 抵当権の効力が及ばない場合(例外)

増設部分が抵当権を設定した不動産(抵当建物)の付加一体物にあたらない場合
→増設部分には抵当権の効力が及ばない
→増設部分は買受人の所有とならない
→増設部分によって価値が減少することになる

え 抵当権の効力が及ぶかどうかの判定(概要)

最近では抵当権の効力は広く及ぶという見解が一般的になっている
詳しくはこちら|抵当権の及ぶ付加一体物(民法370条と87条2項の関係)

5 区分建物登記がされた増設部分の職権抹消

抵当建物の一部に増設された部分に新たな登記をするという妨害行為もあります。登記上,抵当権の設定がない建物となっているので,抵当権者としては驚くことでしょう。
しかし,そのような登記は本来できないはずのものです。法務局に職権抹消をしてもらう,というのが対応方法となります。

<区分建物登記がされた増設部分の職権抹消>

あ 妨害の内容

抵当建物の屋上に設置された物置が,建物として第三者の名義で登記されている
抵当建物とは別の建物として登記されている
登記上,抵当権の対象となっていない状態である

い 正確な登記の内容

抵当建物と物置とを一棟の建物とする表示登記をし,かつ,抵当建物と物置とを区分建物とする登記がされたはずである

う 区分建物の要件(概要)

区分建物として登記するためには,物置が構造上区分された,独立して居住,店舗,事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるものであることが必要である
※区分所有法1条
詳しくはこちら|区分所有権の客観的要件(区分建物の要件)

え 職権抹消

屋上に設置された物置は,区分建物の要件(う)を満たしていないはずである
登記官(法務局)による職権抹消の対象となる
法務局に職権抹消を求めれば,抹消されることになる

本記事では,抵当建物に増設や増築をする執行妨害行為への対抗措置について説明しました。
実際に抵当権の実行(債権回収)や執行妨害に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。