1 担保の建物への占有妨害には売却のための保全処分で対処できる
2 抵当権の対象不動産の『増設』が付加一体物でなければ妨害になる
3 増設部分を『区分建物』として登記→職権抹消を要請できる

1 担保の建物への占有妨害には売却のための保全処分で対処できる

強制執行を妨害する一定の行為に対しては,保全処分という手続があります。
具体的には,競売を申し立てるとともに売却のための保全処分を申し立てる,ということです。

<価値減少行為の禁止命令>

あ 要件

競売手続開始後に目的不動産の価値を減少させるような行為があったとき

い 裁判所の処分

価格減少行為の禁止等を命じる処分

<価値減少行為の例>

あ 第三者が占有するなど,不動産の使用が妨げられている→該当する

典型的な価値減少行為である

い 賃借権の登記がなされた→該当しない

競売されれば抹消される無駄な登記であるため,価格減少行為にはあたらない

『賃借権の登記』は原則として『詐害性』なしです。
しかし,次のような理論で占有移転禁止等の保全処分が認められることもあります。

<賃借権の登記が価値減少行為に該当する理論>

賃借権の登記がされた

近々賃借人に引き渡す予定があるのではないか

価格減少行為

2 抵当権の対象不動産の『増設』が付加一体物でなければ妨害になる

<事例設定>

抵当建物の屋上に物置が設置された

(1)抵当権の及ぶ範囲;付加一体物

この場合,抵当権の妨害に該当するかの判断には,抵当権の及ぶ範囲が影響します。
抵当権の効力は,『抵当不動産に付加して一体となっている物』に及ぶとされています(民法370条)。
この『付加して一体となった物』(付加一体物といいます。)の内容については争いがあります。
少なくとも不動産に従として付合した物(付合物,民法242条)は付加一体物とされています。

(2)屋上の物置が付合物に該当するか

付合物の要件としては,必ずしも,建物と物置とが構造的に接合されている必要はありません。
建物と物置の接着の程度,物置の構造及び利用方法を考察し,物置が建物と一体となって利用され,取引されるべき状態であるならば付合していると判断してよいでしょう。
物置が付合物であるならば,建物の付加一体物として,建物に設定された抵当権の効力が物置にも及ぶことになります。

(3)物置の設置が妨害(価値減少行為)に該当するかどうかの判断

構造,利用上の一体性 抵当権の効力が及ぶか 価値減少行為に該当するか

3 増設部分を『区分建物』として登記→職権抹消を要請できる

<事例設定>

抵当建物の屋上に設置された物置が,建物として第三者の名義で登記されている
登記上,抵当建物とは別の新たな建物ということになっている
抵当権の登記がされていない状態となっている

物置が『新たな建物』として登記されるためには,原則として,独立した建物としての用途に供することができることが必要です。
建物の1部屋だけを建物として登記するには区分所有建物として登記することになります。
この事例では,抵当建物と物置とを一棟の建物とする表示登記をし,かつ,抵当建物と物置とを区分建物とする登記がされたはずです。
区分建物の場合,抵当建物に設定されていた抵当権は,別の区分建物には効力が及びません。
つまり,元々の建物の抵当権は物置には及ばない形になります。
結局,物置の登記事項証明書には,抵当権の登記が記載されていなかったのでしょう。
分譲マンションの101号室に抵当権を設定しても,その隣の102号室には抵当権の効力が及ばないのと同じです。
しかし,区分建物として登記するためには,物置が構造上区分された,独立して居住,店舗,事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるものであることが必要です(区分所有法1条)。
屋上に設置された物置が,そのような条件を満たしているとは到底思えません。
妨害のための不正な登記です。
登記官の職権による登記の抹消の対象と考えられます。
法務局に,職権抹消を求めると良いでしょう。