1 盗撮=迷惑防止条例違反|概要|各自治体でルールは同様
2 犯罪とされる『撮影等』の行為|東京都・神奈川県共通
3 犯罪とされる『撮影等』の行為|神奈川県のみ
4 『場所』に着目して処罰対象とする思考フロー|神奈川県
5 盗撮・撮影系の罰則|東京都
6 盗撮・撮影系の罰則|神奈川県
7 下着ではなく『全身』の『撮影』→有罪|最高裁判例

1 盗撮=迷惑防止条例違反|概要|各自治体でルールは同様

いわゆる『盗撮』は犯罪です。
通常は都道府県の『迷惑防止条例違反』です。
条例の名称や条文の規定は都道府県によって多少異なります。
本記事では,代表例として東京都・神奈川県の条例を説明します。
他の都道府県も実質的にはほぼ同様と言えます。

<全国の迷惑防止条例の盗撮の規定の違い>

迷惑防止条例の撮影に関する規定について
都道府県により規定の違いがある
法令立案に際しての認識・スタンスの差が現れている
処罰範囲・適用結果に違いはない
※合田悦三『いわゆる迷惑防止条例について/小林充先生・佐藤文哉先生古稀祝賀刑事裁判論集 上巻』判例タイムズ社p523

2 犯罪とされる『撮影等』の行為|東京都・神奈川県共通

東京都・神奈川県の条例における盗撮行為の定義をまとめます。
条文上は『撮影等』という言葉が使われています。

<犯罪とされる『撮影等』の行為|東京都・神奈川県共通>

次の『ア』〜『ウ』のすべてに該当する行為
ア 『人を著しく羞恥させる』or『人に不安を覚えさせる』
イ 対象が『通常衣類で隠されている』『下着または身体』
ウ 『撮影した』or『撮影目的でキャメラを差し向けた』or『撮影目的でキャメラを設置した』
※東京都迷惑防止条例5条1項2号
※神奈川県迷惑防止条例3条1項2号

『正当な理由がない』というものも東京都の条例にはあります。
上記の整理では記載を省略しています。
また,神奈川県の条例では『ウ』の部分で『撮影した』が記載されていません。
ただ,当然の前提として『キャメラを差し向けた』を超えています。
上記の整理でも『撮影した』は含まれる,という結論は同じです。

3 犯罪とされる『撮影等』の行為|神奈川県のみ

神奈川県の条例では『2』の定義とは別の定義もあります。
次の行為も『撮影等』として定義されています。

<犯罪とされる『撮影等』の行為|神奈川県のみ>

次の『ア』〜『エ』のすべてに該当する行為
ア 『人を著しく羞恥させる or 人に不安を覚えさせる』
『2』と同様
イ 対象が『人の容姿』
『脱いでいない場合』が含まれる趣旨である
ウ 『撮影した』or『撮影目的でキャメラを差し向けた』or『撮影目的でキャメラを設置した』
『2』と同様
エ 住居,浴場,更衣室,トイレ等,通常衣類を脱ぐ場所
これが『2』とは異なる(※1)
※神奈川県迷惑防止条例3条2項

この定義は『エ』が重要です。
『場所』を重視しているのです。
これについては次にまとめます。

4 『場所』に着目して処罰対象とする思考フロー|神奈川県

上記の条例の定義は次のような考え方がベースとなっています。

<『場所』に着目して処罰対象とする思考フロー>

浴場・更衣室・トイレ等は,『脱衣が想定される』
→権利侵害の危険性が類型的に高い
→より広く禁止を拡げる
→実際には脱いでいなくても禁止する(犯罪とする)

5 盗撮・撮影系の罰則|東京都

違法な『盗撮・撮影』についての東京都の罰則の内容をまとめておきます。

<盗撮・撮影系の罰則|東京都>

通常 常習
撮影した 懲役1年以下or罰金100万円以下 懲役2年以下or罰金100万円以下
(根拠条文) ↑8条2項 ↑8条7項
キャメラを差し向けた,設置した 懲役6か月以下or罰金50万円以下 懲役1年以下or罰金100万円以下
(根拠条文) ↑8条1項2号 ↑8条8項

6 盗撮・撮影系の罰則|神奈川県

盗撮についての神奈川県の罰則内容をまとめます。

<盗撮・撮影系の罰則|神奈川県>

通常 常習
撮影した 懲役1年以下or罰金100万円以下 懲役2年以下or罰金100万円以下
(根拠条文) ↑15条1項 ↑16条1項
キャメラを差し向けた,設置した 懲役1年以下or罰金100万円以下 懲役2年以下or罰金100万円以下
(根拠条文) ↑15条1項 ↑16条1項

7 下着ではなく『全身』の『撮影』→有罪|最高裁判例

遂に『下着ではなく衣類の上から』撮影したケースで有罪となる判例が登場しました。
もちろん,特殊事情はありますが,基準が曖昧です。
恣意的な運用=検挙・刑事裁判,ということが理論的・構造的に排除できないとも言えます。
これについては,別の記事にまとめてあります。
詳しくはこちら|下着ではなく衣類の上から『全身を撮影』→有罪にした最高裁判例