開発許可には誰の名前が入るのか|「自己の居住の用に供すること」という条件

1 開発許可には誰の名前が入るのか|「自己の居住の用に供すること」という条件

市街化調整区域の建築物は「許可を受けた者」と結び付いている、という言い方をよく聞きます。では、その結び付きは具体的にどこに書かれているのか。許可に付された条件の欄に氏名が書いてあるのか、それとも別のところなのか。

本記事では、開発許可に付される条件がどういう形で書かれるのか、開発登録簿に何が登録されるのか、そして誰が許可を受けられるのかがどこで決まるのかを説明します。

市街化調整区域とは何か、開発許可がどういう場合に下りるのかは、別の記事で説明しています。

都市計画の区域区分,開発許可の基準

2 氏名が入るのは「許可を受けた者」という地位の側(まとめ)

開発許可と人の結び付き——条件・開発登録簿・審査基準

あ 許可に付す条件

(ア)許可には都市計画上必要な条件を附することができるが、条件は許可を受けた者に不当な義務を課すものであってはならない(イ)国の指針が挙げる条件は、工事施行中の防災措置、開発行為の適正な施行を確保するため必要な条件、廃止する場合に公共施設の機能を回復し災害を防止するため必要な条件、着手と完了の時期その他都市計画上必要な条件(ウ)実際に付された条件の例=「自己の居住の用に供することを条件として、開発行為の許可をした」=氏名ではなく用途の形で書かれる

い 開発登録簿

(ア)登録簿は、開発許可をしたときに当該許可に係る土地について調製される。登録事項は許可の年月日・予定建築物等の用途・公共施設の種類等・許可の内容・制限の内容・国土交通省令で定める事項で、氏名は挙がっていない(イ)登録簿は常に公衆の閲覧に供するように保管され、請求があれば写しが交付される(ウ)登録簿は調書と図面で組成され、調書の様式は国の指針が別記様式第9を一例として示している

う 誰が許可を受けられるか

(ア)許可は申請者に対してされる=そこで「許可を受けた者」が定まる(イ)許可を受け得る者の範囲は審査基準の側にある。分家住宅では、民法725条に定める親族の範囲に該当する者であって、原則として相続又は贈与により当該土地の所有権等を取得するいわゆる本家の世帯構成員であったもの(ウ)開発許可に基づく地位は、工事を施行する権原を取得した者が都道府県知事の承認を受けて承継する

3 条件に書かれるのは用途=氏名は条件の文言に入らない

開発許可には条件を付けることができます。都市計画法は、この法律の規定による許可、認可又は承認には都市計画上必要な条件を附することができるとし、その条件は許可等を受けた者に不当な義務を課すものであってはならないとしています。

では、どういう条件が付くのか。以下では、国の指針が挙げている条件と、実際の許可に付された条件の文言を順に見ます。

(1)都市計画法79条が許す条件=都市計画上必要で、不当な義務を課さないもの

国の指針は、開発許可に付すことが望ましい条件を具体的に挙げています。工事施行中の防災措置、開発行為の適正な施行を確保するため必要な条件、開発行為を廃止する場合に工事によって損なわれた公共施設の機能を回復し工事によって生ずる災害を防止するため必要な条件です。これに加えて、開発行為の着手の時期、完了の時期その他の都市計画上必要な条件を、必要に応じて付すとされています。

並んでいるのは工事と施設についての条件で、誰が使うかという条件は挙がっていません。

条文

許可等の条件

この法律の規定による許可、認可又は承認には、都市計画上必要な条件を附することができる。この場合において、その条件は、当該許可、認可又は承認を受けた者に不当な義務を課するものであつてはならない。

※都市計画法79条

書籍

付すことが望ましい条件=防災措置・適正な施行・災害防止・着手と完了の時期

法第29条の許可には、特に必要がないと認める場合を除き、法第79条の規定により、少なくとも、工事施行中の防災措置、開発行為の適正な施行を確保するため必要な条件並びに当該開発行為を廃止する場合に工事によって損なわれた公共施設の機能を回復し、及び工事によって生ずる災害を防止するため必要な条件を具体的に明記して付すことが望ましい。

※『開発許可制度運用指針』国土交通省令和7年3月19日p59

(2)条件の実例=「自己の居住の用に供することを条件として」

では実際の許可にはどう書かれていたのか。農地法上の原状回復命令をめぐる訴訟で、昭和50年に市長がした開発行為の許可の内容が認定されています。分家住宅を転用目的とする農地法5条の許可と並んで、自己の居住の用に供することを条件として、開発行為の許可がされたという形です。

条件の文言に氏名は出てきません。入っているのは用途です。自己の居住の用に供すること、という書き方をすることで、申請者本人が住むことが条件になります。

判例

許可に付された条件=「自己の居住の用に供すること」

越谷市長は、昭和50年5月14日、Fから、本件各土地と接続する本件土地部分について、法5条所定の許可の申請及び都市計画法所定の開発行為の許可の申請がされたことから、同年9月30日付けで、「分家住宅」を転用目的とする法5条所定の許可をするとともに、同年10月8日付けで、自己の居住の用に供することを条件として、開発行為の許可をしたこと

※さいたま地方裁判所 2017-04-19 LLI/DB 判例秘書登載

4 開発登録簿に登録されるのは土地についての事項=氏名は入らない

次に開発登録簿です。開発許可の内容は登録簿に登録され、誰でも閲覧できます。買う前に調べるならここを見ることになります。

ところが、登録簿は「当該許可に係る土地について」調製されるものとされており、登録する事項の列挙に氏名は入っていません。以下では、何が登録されるのかと、登録簿がどういう書類で組成されるのかを順に見ます。

(1)登録されるのは許可の年月日・予定建築物等の用途・許可の内容など

都市計画法は、開発許可をしたときに当該許可に係る土地について登録簿に登録する事項を列挙しています。許可の年月日、予定建築物等の用途、公共施設の種類・位置・区域、そのほかの許可の内容、建築物の敷地・構造・設備に関する制限の内容、そして国土交通省令で定める事項です。

登録簿は常に公衆の閲覧に供するように保管され、請求があれば写しが交付されます。開発許可を受けた者が誰かという事項は、この列挙には現れません。

条文

登録簿に登録する事項

都道府県知事は、開発許可をしたときは、当該許可に係る土地について、次に掲げる事項を登録簿に登録しなければならない。

※都市計画法47条1項

開発許可の年月日

※都市計画法47条1項1号

予定建築物等(用途地域等の区域内の建築物及び第一種特定工作物を除く。)の用途

※都市計画法47条1項2号

公共施設の種類、位置及び区域

※都市計画法47条1項3号

前三号に掲げるもののほか、開発許可の内容

※都市計画法47条1項4号

第四十一条第一項の規定による制限の内容

※都市計画法47条1項5号

前各号に定めるもののほか、国土交通省令で定める事項

※都市計画法47条1項6号

条文

登録簿の閲覧と写しの交付

都道府県知事は、登録簿を常に公衆の閲覧に供するように保管し、かつ、請求があつたときは、その写しを交付しなければならない。

※都市計画法47条5項

(2)登録簿は調書と図面で組成される=調書の様式は別記様式第9が一例

登録簿の中身は、国土交通省令が定めています。開発登録簿は調書及び図面をもって組成するとされ、図面は開発許可の申請の際に定めた土地利用計画図です。

そして調書の様式については、国の指針が一例として別記様式第9を挙げています。法律が列挙する登録事項と、実際に使われる調書の様式とは、同じものではありません。

条文

開発登録簿の調製

開発登録簿(以下「登録簿」という。)は、調書及び図面をもつて組成する。

※都市計画法施行規則36条1項

書籍

施行規則36条1項の調書の様式→一例として別記様式第9

(2)施行規則第36条第1項に規定する調書の様式については、一例として別記様式第9を参考とされたいこと。

※『開発許可制度運用指針』国土交通省令和7年3月19日p58

5 許可を受け得る者の範囲=民法725条の親族で本家の世帯構成員

条件にも登録事項にも氏名が出てこないのに、許可が特定の人と結び付くのはなぜか。鍵は、誰に許可をするかという審査の側にあります。

市街化調整区域の開発許可のうち、法律の各号に当たらないものは、都道府県知事が開発審査会の議を経て、周辺の市街化を促進するおそれがなく市街化区域内で行うことが困難又は著しく不適当と認める場合に許可されます。分家住宅はこの号の運用で扱われており、国の指針が許可を受け得る者の範囲を示しています。

そこで挙がっているのは、民法725条に定める親族の範囲に該当する者であって、原則として相続又は贈与により当該土地の所有権等を取得するいわゆる本家の世帯構成員であったものです。つまり許可の対象になる人が、親族の範囲と本家との関係で定められています。

条文

開発審査会の議を経て認める開発行為

前各号に掲げるもののほか、都道府県知事が開発審査会の議を経て、開発区域の周辺における市街化を促進するおそれがなく、かつ、市街化区域内において行うことが困難又は著しく不適当と認める開発行為

※都市計画法34条14号

書籍

許可を受け得る者の範囲=民法725条の親族で、本家の世帯構成員であったもの

ハ 許可を受け得る者の範囲については、その趣旨に沿う者であれば二、三男に限らず合理的事情の存する世帯構成員一般として差し支えない。
この場合における「合理的事情の存する世帯構成員」とは、民法(明治29年法律第89号)第725条に定める親族の範囲に該当する者であって原則として相続又は贈与により当該土地の所有権等を取得するいわゆる本家の世帯構成員であったものであるので、いわゆる跡取りを含むほか、娘むこ予定者も世帯構成員であった娘と一体として認められる者と考えて差し支えない。

※『開発許可制度運用指針』国土交通省令和7年3月19日p36

6 許可は申請者に対してされる→地位の承継には知事の承認が必要

審査基準が人を定めているとすれば、許可そのものも人に対してされているはずです。実際、裁判例は開発許可を申請者に対してされたものとして認定し、法律は許可に基づく地位の承継に知事の承認を要求しています。

以下では、許可の相手方の側と、地位の承継の側を順に見ます。

(1)許可の相手方は申請者=「許可を受けた者」という地位の発生

競売の売却許可決定が問題になった事案で、裁判所は土地についての開発許可を、申請者に対して、分家住宅に当たるという理由でされたものとして認定しています。許可を受けた者が誰かは、この形で特定されます。

そして、その許可を受けた者以外の第三者が建てた建築物が都市計画法に違反するとされました。売買と競売の場面でそれがどう現れるのかは、別の記事で説明しています。

市街化調整区域の家は売れるのか|特定承継人の建替えが原則認められない理由

判例

開発許可→申請者に対し、分家住宅に当たるという理由でされている

本件土地については、昭和五〇年一〇月九日付けをもって、申請者乙山春夫に対し、都市計画法三四条一〇号ロ該当(農家の分家住宅)という理由により、同法二九条の開発行為の許可がされている

※東京高等裁判所 1996-07-19 判例タイムズ1103号143頁/金融・商事判例1010号14頁/判例時報1590号74頁/金融法務事情1486号106頁

(2)地位の承継=工事を施行する権原を取得した者が知事の承認を受ける

法律は、開発許可に基づく地位そのものを承継の対象にしています。開発許可を受けた者から開発区域内の土地の所有権その他その開発行為に関する工事を施行する権原を取得した者は、都道府県知事の承認を受けて、許可を受けた者が有していた地位を承継することができます。

対象は工事を施行する権原なので、効くのは工事中です。国の指針は、この承認に当たっても申請者の資力・信用に関する基準の適合性を審査することが望ましいとしており、承継の場面でも人を見ることが前提になっています。

条文

開発許可に基づく地位の承継

開発許可を受けた者から当該開発区域内の土地の所有権その他当該開発行為に関する工事を施行する権原を取得した者は、都道府県知事の承認を受けて、当該開発許可を受けた者が有していた当該開発許可に基づく地位を承継することができる。

※都市計画法45条

書籍

地位の承継の承認→申請者の資力・信用に関する基準の適合性も審査

自己業務用の開発行為で1ha以上のものについては、申請者の資力・信用に関する基準が適用されるが、法第45条に基づく開発許可に基づく地位の承継の承認に当たっても、同基準の適合性の審査を行うことが望ましい。

※『開発許可制度運用指針』国土交通省令和7年3月19日p58

7 「属人性」は法令の条文に無く、運用の側で使われる呼び名(筆者見解)

ここまで見てきた結び付きは、実務では「属人性」と呼ばれています。市街化調整区域の建築物に属人性がある、分家住宅は属人性のある建築物である、という言い方です。

もっとも、筆者は、この呼び方が法令の条文から出てきたものではないと見ています。都市計画法にも施行規則にも、そして国の運用指針にも、属人という語は出てきません。自治体の手引や照会への回答といった運用の側で使われている呼び名だと見ています。

したがって、属人性という語それ自体から結論を引き出すことはできません。結論を決めるのは、許可に付された条件の文言、審査基準が定める許可を受け得る者の範囲、そして用途の変更に当たるかどうかの判断です。属人性という呼び名は、この3つをまとめて指すものと理解しておくのが実際に近いと考えています。

8 おわりに

本記事では、開発許可のどこに人が入るのかを説明しました。許可に付される条件は「自己の居住の用に供すること」のように用途の形で書かれ、氏名は現れません。開発登録簿も当該許可に係る土地について調製されるもので、法律が列挙する登録事項に氏名は入っていません。人が入るのは「許可を受けた者」という地位の側で、誰がそれになれるのかは審査基準が親族の範囲と本家との関係で定めており、その地位の承継には都道府県知事の承認が要ります。

その地位に結び付いた建築物を、許可を受けた者以外の人が使うとどうなるのかは、別の記事で説明しています。

市街化調整区域の家は相続なら住める、買うと許可が要る|一般承継と特定承継

本記事は一般的な説明です。個別の事案にそのまま当てはまるとは限らず、一見似ている事案でも、事情が異なれば結論は異なります。個別的事情により、法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。本記事でご説明したものと同様の問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

本記事の引用は、書籍・判例などの原文から範囲を選んで載せたものです。改行の位置は読みやすさのために当方で整えており、原文の改行と同じとは限りません。また、記号や外字の扱いにより、文字の一部が原文と異なって表示されることがあります。

本記事の表示では、読点を「、」に統一しています(引用の原文が全角の「,」や半角の「,」である場合を含みます。ただし「1,000」のような桁区切りはそのまま表示しています)。

共有不動産の紛争解決の実務第3版

使用方法・共有物分割・所在等不明対応から登記・税務まで

共有不動産の紛争解決の実務 第3版 弁護士・司法書士 三平聡史 使用方法・共有物分割・所在等不明対応から登記・税務まで 第3版では、共有規定の大改正に対応することはもちろん、その改正議論の中で展開され深化した解釈論により明らかになった実務への影響を余すところなく追録して大幅改訂増補!共有物分割、共有持分買取権行使、共有持分放棄、共有持分譲渡などの手続を上手に使い分ける指針を示した定番書!

共有不動産をめぐる法的紛争の解決に関する実務指針を
《事例》や《記載例》に即して解説する実践的手引書!

  • 第3版では、共有規定の大改正に対応することはもちろん、その改正議論の中で展開され深化した解釈論により明らかになった実務への影響を余すところなく追録して大幅改訂増補!
  • 共有物分割、共有持分買取権行使、共有持分放棄、共有持分譲渡などの手続を上手に使い分ける指針を示した定番書!
  • 相続や離婚の際にあわせて問題となりうる「共有者の1人による居住」「収益物件の経費・賃料収入」「使っていない共有不動産の管理」の相談対応や、「空き家」「所有者不明土地」「相続未登記」問題の解決のヒントに!
  • 他の共有者等に対する通知書・合意書、共有物分割の類型ごとの訴状、紛争当事者の関係図を多数収録しており、実務に至便!
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINE
市街化調整区域の家は相続なら住める、買うと許可が要る|一般承継と特定承継
市街化調整区域の家は売れるのか|特定承継人の建替えが原則認められない理由

無料相談予約 受付中

0120-96-1040

受付時間 平日9:00 - 20:00